猛暑による作業不能で東京の工期10日増、24年の暑さ続けば5年後18日増に

夏目 貴之

 

日経クロステック/日経コンストラクション

 

 

 

猛暑による作業不能で東京の工期10日増、24年の暑さ続けば5年後18日増に | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)

 

 

国土交通省が熱中症対策として導入した猛暑による作業不能日数の工期への組み入れについて、2024年と同等の暑さが来年以降も続いた場合、5年後には東京都内の工期増が年間18日に及ぶ可能性があると日経クロステックの試算で分かった。24年度の1.8倍に達する。千葉県や神奈川県では、猛暑による作業不能日数が5年後に年間30日を超えるリスクがある地域があった。

 24年7月の国内の月平均気温は、気象庁が統計を開始した1898年以降で7月として最も高かった。同月に東京都文京区の観測所「東京」で暑さ指数(WBGT)が31以上となったのは土日祝日を含んだ合計で115時間に及び、2023年7月の79時間の約1.5倍だった。24年8月も猛暑が続き、19日までの時点でWBGTが31以上となったのは68時間を記録。23年の同期間との比較で1.08倍と同程度だった。

 

 

 

棒グラフ(左軸)は、東京都文京区の観測所「東京」で、休日を除く午前8時から午後5時までにWBGTが31以上を記録した月別の時間数。24年の斜線部は、8月と9月の猛暑時間数が23年と同じになると仮定した場合を示す。折れ線(右軸)は猛暑による作業不能日数を国土交通省の算定式に沿って求めた値(出所:環境省の資料を基に日経クロステックが作成)

棒グラフ(左軸)は、東京都文京区の観測所「東京」で、休日を除く午前8時から午後5時までにWBGTが31以上を記録した月別の時間数。24年の斜線部は、8月と9月の猛暑時間数が23年と同じになると仮定した場合を示す。折れ線(右軸)は猛暑による作業不能日数を国土交通省の算定式に沿って求めた値(出所:環境省の資料を基に日経クロステックが作成)

[画像のクリックで拡大表示]

 

 

 

 

 WBGTは熱中症の発生リスクを示す指標で、気温に湿度や日射などを加味して算出する。31以上は「危険」とされ、外出を避けて涼しい室内に移動するのが望ましい。

 国交省が発注する土木工事では23年度から、WBGTが31以上の「猛暑日」の日数を作業不能日として工期に組み込んでいる。具体的には、現場の最寄りの観測所で土日祝日を除いた午前8時から午後5時までの間にWBGTが31以上となった時間を集計。それを1日8時間として日数に換算した上で5年間の平均値を求めて、次の1年間の猛暑日日数として設定する。雨や雪などによって作業ができない日数と合わせて作業不能日の数とする。

 日経クロステックが24年度の猛暑日数(19~23年度の平均値)を国交省の算定式に沿って求めたところ、47都道府県の県庁所在地にある観測所で猛暑日数が最も多かったのはさいたま市と那覇市の12日。その次が東京(文京区)の10日だった。それ以外の観測所で猛暑日数が15日以上だったのは、沖縄本島以外の離島の観測所を除くと海老名(神奈川県)や佐倉(千葉県)など20地点だった。

 

 

 

47都道府県の県庁所在地にある観測所について、国土交通省の算定式で求める24年度の猛暑日数(19~23年度の平均値)が多い順番に並べた。ただし「東京」の観測所は文京区。県庁所在地内に複数の観測所がある場合、県庁所在地名を冠した観測所の値を示した(出所:環境省の資料を基に日経クロステックが作成)

47都道府県の県庁所在地にある観測所について、国土交通省の算定式で求める24年度の猛暑日数(19~23年度の平均値)が多い順番に並べた。ただし「東京」の観測所は文京区。県庁所在地内に複数の観測所がある場合、県庁所在地名を冠した観測所の値を示した(出所:環境省の資料を基に日経クロステックが作成)

[画像のクリックで拡大表示]

 

 

 

 

国土交通省の算定式で求める24年度の猛暑日数(19~23年度の平均値)が15日を超えた観測所。沖縄本島以外の離島の観測所を除く(出所:環境省の資料を基に日経クロステックが作成)

国土交通省の算定式で求める24年度の猛暑日数(19~23年度の平均値)が15日を超えた観測所。沖縄本島以外の離島の観測所を除く(出所:環境省の資料を基に日経クロステックが作成)

[画像のクリックで拡大表示]

 

 

 

 

 一方、過去に遡って東京の猛暑日数を国交省の算定式で求めると、19年度(14~18年度の平均値)は5日だった。その後、毎年1日ずつ増えている。24年の8月と9月にWBGTが31以上の時間数が23年と同じになると仮定した場合、25年度の猛暑日数(20~24年度の平均値)は2日増えて12日になる計算だ。その上で24年と同等の暑さが今後も続いた場合、29年度(24~28年度の平均値)には猛暑による作業不能日数が18日に達する恐れがある