鹿島が進める山岳トンネルの自動化、ダムに続き技術開発に区切り
筒井 爽人日経クロステック/日経コンストラクション
鹿島は2024年7月31日、山岳トンネル施工の自動化技術「A4CSEL for Tunnel(クワッドアクセル・フォー・トンネル)」が完成したと発表。岐阜県飛騨市の神岡試験坑道で進めていた各工種の実証実験に区切りがつき、要素技術の他の現場への適用が近づく。24年7月上旬、開発の最前線である試験坑道に入った。前方から見たロックボルト打設機(写真:大村 拓也)
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自動でロックボルトを打設するデモ(動画:大村 拓也)
せん孔、モルタル注入、ロックボルト挿入のコマ送り動画(動画:大村 拓也)
コンクリート吹き付け機のデモ(動画:大村 拓也)
実トンネルである神岡試験坑道で、鹿島が2021年からクワッドアクセル・フォー・トンネルの要素技術の実用化に向けた検証を進めてきた。24年6月から立て続けに3件の自動化技術を発表するなど、他の現場への適用が近づく。
取材当日、鹿島はロックボルト打設のデモを公開した。古河ロックドリル製の2ブームのロックボルト打設機を改良した機械で施工。位置合わせやせん孔、モルタル注入、ロックボルト挿入といった一連の作業を、作業箇所付近に人を入れずに完了させた。
2ブームのロックボルト打設機が壁面にボルトを挿入するデモの様子(写真:大村 拓也)
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切り羽付近の断面は幅10.6m、高さ7.5m。1次コンクリートを吹き付けた状態の壁面に自動でロックボルトを打設した。ロックボルト打設機の各ブームには、せん孔とボルトの挿入を担う2つの「ドリフター」と、モルタルを注入する1本の「パイプ」を備えたロックボルトの打設装置が取り付く。それら3つのセクションを回転させて同じ位置に目掛けて順番に施工する。
オペレーターが操縦席でボタンを押すと、2本のブームが決められたせん孔位置へ自動で動く。位置が決まると水しぶきを上げながらせん孔が始まる。せん孔が終わると打設装置が回転してパイプを孔内に挿入。モルタルを吐出しながら引き抜く。再度装置が回転し、ロックボルトを打設すれば完了だ。ロックボルトは1本が長さ3mで重さ10.5kg。挿入の途中にもう1本をつなぎ合わせることも自動化しており、計6mに延長できる。
ブームに取り付けた打設装置にはせん孔、モルタル注入、ロックボルト挿入の機能がある(写真:大村 拓也)
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ロックボルト打設機の操縦席。施工時にはオペレーターが乗り込む(写真:大村 拓也)
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神岡試験坑道で自動化技術を検証したのは、山岳トンネルの施工に必要な6工種について。(1)せん孔(削孔)(2)装薬(3)ずり出し(4)アタリ取り(5)コンクリート吹き付け(6)ロックボルト打設――だ。一くくりに山岳トンネルの掘削と言っても、各工種の作業は大きく異なる。それぞれ個別に自動化技術の開発を進めてきた。
「A4CSEL for Tunnel(クワッドアクセル・フォー・トンネル)」の概要。6工種で技術開発と検証を重ねてきた(出所:鹿島
鹿島が進める山岳トンネルの自動化、ダムに続き技術開発に区切り | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)