北米出身の2人が英語で購入仲介サービス

 

日本なら米国の家賃3ヵ月分で家が買える! 

 

外国人の「空き家ドリーム」の現場

 
「アキヤマート」の創業者2人が空き家を購入した日本有数の温泉地として知られる大分県別府市
Photo: Chiara Salvadori / Getty Images
 
 
 
 

 

ファスト・カンパニー(米国)

 

Text by Adele Peters

 

日本では悩みの種となっている空き家だが、

価格が格安ということもあり、

過去にでも紹介したように、

 

自国の住宅価格に手が届かない外国人を魅了し続けている。

こうした需要を見込んで、

日本に留学経験のある北米出身の2人が

英語の購入仲介サービスを立ち上げた。

だが、その過程では「本当にもどかしかった」という経験もあった

と米メディアに語っている。

 

 

インスタで空き家の写真を見続けて


東京の南東に位置する日本の海岸沿いの地域では、

海の見える小さな家を3万7000ドル(約580万円)で買える。

 

京都では、

歴史ある寺院から徒歩圏内の家を8万ドル(約1250万円)で買える。

 

北九州市の近くでは、

森と広大な庭に囲まれた1868年に建てられた伝統的な家を5500ドル(約86万円)で買える。



これらの物件はすべて空き家だ。

日本全国にはこうした物件が何百軒もあり、その大半は地方にある。

 

「アキヤマート」と呼ばれるサイトでは、

自身の住む地域の物件が高価すぎて手が届かず、

代替策を探っている米国人などの外国人に向けて

空き家を英語で紹介している。

 



このサイトを立ち上げた

 

タケ・クロサワと

 

ジョーイ・ストッカマンズは、

 

大学時代に交換留学生として来日した際に出会った。

それから10年、

それぞれ米サンフランシスコのベイエリアと

ニューヨークのテック業界で数年働いたが、

2人とも米国の生活費の高さに幻滅。

いい仕事に就いているにもかかわらず、

一戸建てを買う余裕がないのだ。

クロサワが働いていたシリコンバレーでは、

一般的な一戸建ては100万ドル(約1億6000万円)以上する。


 

一方、2人はインスタグラムで

魅力的で安価な空き家の写真を見続けていた。

そして2人ともレイオフされた際に、

日本で家を買うという話を始めた。

「2人とも今後の人生をもっと日本で過ごす理由がほしかったんです。

安い物件を目にして、

これらの二つの点を組み合わせるのが理にかなっていると思いました」

とストッカマンズは振り返る。
 

最低賃金でも一人暮らしができる


日本には900万戸近い空き家があると推定されている。

 

2033年までには国内の住宅の約3分の1に当たる

約2300万戸が空き家になる可能性もある。

 

これは、日本の人口が減っているのも一因だが、

大半の人々が仕事を求めて東京に引っ越したいと思っていることが理由だ。

このため、地方の家を相続しても、欲しがらない人もいるかもしれない。

 



「田舎という意味での地方だけではありません。

人口15万人や

30万人の中規模都市にも、

こうした物件はあります。

 

こうした衛星都市には若者向けの仕事がありません。

みんな仕事がある東京に住みたがるんです」と

ストッカマンズは説明。

 

コロナ禍ではリモートワークで働く人も多かったが、その後は再び出社勤務が求められるようになったという

 

 

 

 

 

 

日本の空き家を紹介するインスタグラムのアカウント
 

東京の物価は、

米国の都市と比べるとかなり手頃で、

最低賃金しか稼いでいない人でも

一人暮らしができる。

 

 

一方、米国の9割以上の都市では、

ワンベッドルームのアパートも最低賃金で働く労働者には手が届かない。

 

 

東京は、

充分な数の住宅が建設されれば

その価格は手頃なものになるという事実の完璧な事例だ。

 

なぜなら、

東京などの日本の大都市では

住宅の供給が豊富なため、

その他の地域にある空き家への需要はほとんどないのだ。



クロサワとストッカマンズは、

一年の一部を日本で過ごし、

米民泊仲介大手Airbnb(エアビーアンドビー)で物件を貸し出そうと考えた。

 

そこで自力で空き家を探し始めたものの、

日本の不動産業のウェブサイトは利用しにくいと気づいたという。

 

クロサワは、

ユーザーインターフェイスが

「ジロー(Zillow)」や「

レドフィン(Redfin)」といった

米不動産検索サイトとはまったく違い

「本当にもどかしかったです」と語る。



そこで、ソフトウェア・エンジニアのストッカマンズが

物件情報をフィルタリングし、

 

英語で物件の詳細を読むことができるツールを試作した。

 

「彼がプロトタイプを作ってくれて、

実際にそのツールを使って私たちは家を見つけたんです。

1月に公開したところ、

同じような物件を探している人たちから大きな需要があると気づきました」と、

 

クロサワは話す。

 

 



物件を見つけるのは最初のステップに過ぎない。

このためアキヤマートは現在、

英語で対応できる日本の不動産業者と協力し、

購入希望者のその他の手続きを進めるのを手助けしている。

 

ただ、住宅価格が非常に安いため

仲介手数料も安い、

というのが課題の一つ。

 

アキヤマートに

不動産業者を探してもらう

手助けが必要な購入希望者は2000ドル(約31万円)を支払うが、

その大半は地元の不動産業者の収入となる。

 



2024年7月上旬、アキヤマートは物件を購入する手助けをした。価格はわずか6000ドル(約94万円)で、これはサンフランシスコのワンルームのアパートの家賃3ヵ月分に相当する。
 

 

 

アキヤマートに掲載されている物件の価格は

幅広く、

数十万ドルから数百万ドルのものもある。

 

 

しかし、その多くは10万ドル(約1600万円)以下という手頃な価格だ。

 

一番安い物件でも、

断熱施行や

耐震補強など

現代に合わせた改修が必要な場合もあるものの、

状態は比較的良好なものが多いという。
 

 

 

「外国人でも歓迎してもらえる」


クロサワは婚約者と

温泉地として知られる大分県別府市を訪れ、

その後ストッカマンズとそこに最初の物件を購入した。

 

価格は4万2000ドル(約660万円)だった。

Airbnbで貸し出すことにしていたため、

さらに3万ドル(約470万円)をかけて

高級感が漂うような改修をした。

だが、この物件は基本的に手を加えなくても住むことができた、と2人は言う

 

 

 

 

 




大分県別府市の物件を見せる「アキヤマート」の動画。

最近、東京にもう1軒住宅を購入した。

 

現在、2人とも

一年の一部の期間を日本で過ごす。

 

クロサワは現在、

カリフォルニアにモバイルハウス(註・移動可能な住宅)を所有しており、

 

 

ストッカマンズは

日本に滞在していない期間はカナダにいる家族の元で過ごす。

 

 

クロサワはサイドプロジェクトで、

ストッカマンズはフルタイムで、アキヤマートの仕事に取り組んでいる。

当然ながら購入した空き家をバケーション中の滞在先として利用するのは永住するよりも簡単だ。

 

日本では最近、

「デジタルノマド」ビザ制度が始まり、

 

半年間連続して滞在できるようになった。

 

さらに、自営業者が

より長期間の就労ビザを

取得するための手続きをすることも可能だ。

 

 


 

地元の文化を尊重し、

日本語を話そうと努力するなら移住者は歓迎されるだろうと2人は言う。


ストッカマンズはこう話している。

「私たちがこの地域に引っ越してきた際は、空き家をきれいにしてくれる若者というかすかな希望のようなものでした」「歓迎されたと思います。私たちが外国人であっても、喜んでもらえるんです

 

 

 

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