スポーツドリンクを多飲した中学生が倒れて搬送…ドカンと血糖値を上げる「液体の糖質」の怖さを糖尿病専門医が解説
「とくに病気はないのに体がだる重い」
「午後になるとどっと疲れが」
「睡眠時間を確保しているのに眠気がひどい」…。
原因がよくわからないながら、
こうした心身ともに冴えない症状を訴える人が増えていると
糖尿病をはじめとする生活習慣病・肥満治療のためのクリニックを
一方で多忙な名医ほど「食事」を活用して疲労回復しているそうで――。今回、先生の著書『疲れない体をつくる最高の食事術』から一部引用・再編集してお届けします。
【書影】医学的データと臨床経験から導きだしたミラクルフードとは!『疲れない体をつくる最高の食事術』
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◆一番いけないのは「液体の糖質」
疲れ知らずで健康な体を保ちたいと考えたときに、絶対に摂るべきではない食材の代表が「液体の糖質」です。 具体的には、液体に大量の糖質が溶け込んでいる清涼飲料水、缶コーヒー(無糖タイプを除く)、エナジードリンクなどです。
「*種類の野菜が摂れる」という売り文句の野菜ジュースや、
果汁100%の果物ジュースも同様で、
非常に多くの糖質を含んでいます。
私自身、こうしたものは一切、口にしません。
私の水分補給は、
もっぱらミネラルウォーターで行っています。
ではなぜ、そこまで液体の糖質を避けるのか。
◆血糖値スパイク 同じ糖質でも、米飯やパンのような固形物なら、
噛んで、
胃で消化して
……という時間がかかるため、
血糖値の上昇も比較的緩やかです。
ところが、液体だと消化の手間がいらないため、
すぐにドカンと血糖値を上げてしまいます。
この急激な血糖値上昇現象を、
専門的には「血糖値スパイク」と表現します。
血糖値スパイクが起きると、
上がりすぎた血糖値を下げるために、
膵臓からたくさんのインスリンが分泌されます。
そして、そのインスリンの作用で、
今度は血糖値が下がりすぎ、
疲労感や吐き気などの症状を引き起こすわけです。
血糖値スパイクを頻繁に起こしていると、
そのたびにインスリンを大量に分泌する必要があり、
次第に膵臓が疲弊していきます。
やがて、疲れきった膵臓の働きが悪くなって、
インスリンを出すタイミングが遅れます。
すると、血糖値を下げることが難しくなり、
糖尿病を発症します。
つまり、液体の糖質は、慢性疲労の原因になるだけでなく
、糖尿病に罹りやすい危険な食材なのです。
糖尿病に罹れば、その合併症で腎臓がやられ、
さらに疲れやすい体になります
気をつけてほしいのは、
健康に良さそうな野菜ジュースや
スポーツドリンクにも
糖質がたくさん含まれていることです。
実際に、学校の部活動でスポーツドリンクを多飲していた中学生が、
いきなり高血糖で昏倒(こんとう)し、
救急車で搬送された事例も報告されています。
こうしたケースを「ペットボトル症候群」と呼びますが、
若くして重症の糖尿病を発症しているわけで、
実に深刻な問題です。
たとえば、コカ・コーラはペットボトル500mLの場合、
56.5グラムの糖質を含んでいます。
これは、角砂糖14個分に相当します。
とくに炭酸が入っている飲み物は、
清涼感にごまかされ甘さに気づきにくくなります。
しかし、ためしに蓋を開けたまま放置し、
炭酸が抜けた状態で飲んでみると、
砂糖水のような甘さに驚くはずです。
つまり、清涼飲料水は、自分が想像しているよりも遙(はる)かに多くの砂糖を摂ってしまう飲み物なのです。
◆水は飲めば飲むほど腎臓に良い
缶コーヒーも、ほどよい苦みがあるがゆえに、
甘すぎることがわからなくなります。
こうしたものを日常的に口にしていると、
簡単に糖質中毒に陥ります。
仕事を途中で抜け出し、
限られた喫煙所で一心不乱にタバコを吸っている人たちは、
ニコチン中毒(依存症)に陥っています。
同様に、あるタイミングで缶コーヒーなどを飲むのが決まりになっている人もまた、
糖質中毒である可能性が高いのです。
まずは、液体の糖質を「厳禁」とし、
ペットボトルの飲料でも、ミ
ネラルウォーターや糖質の入っていないお茶類を選ぶ癖をつけてください。
なお、清涼飲料水のシュワシュワした刺激が好きな人は、
ハイボールなどをつくるときに使う「炭酸水」を飲んでもいいでしょう。
なんの味付けもしていない炭酸水なら、
余計な糖質を摂ってしまう懸念はありません。
水は飲めば飲むほど腎臓に良いということが研究で分かっています。
できれば一日2リットル以上の水分を摂るように心掛けましょう。
※本稿は、
『疲れない体をつくる最高の食事術』(小学館)の
一部を再編集したものです。
牧田善二
スポーツドリンクを多飲した中学生が倒れて搬送…ドカンと血糖値を上げる「液体の糖質」の怖さを糖尿病専門医が解説(婦人公論.jp)