リアル過ぎる「耐水害住宅」の実大実験、濁流直撃でも床上浸水せず
池谷 和浩
ライター
堤防決壊の直後、勢いよく水流が押し寄せた。試験体は一条工務店が開発した「耐水害住宅」(写真:池谷 和浩)
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真っ黒な濁流が住宅正面に押し寄せ、玄関ドアや掃き出し窓へ一気に水が迫った――。国土交通省北海道開発局、土木研究所寒地土木研究所、建築研究所の3者が実施主体となり、日本住宅・木材技術センターと住宅会社の一条工務店(東京・江東)が参画して行われた実大実験の模様だ。予算の一部は林野庁が補助した。
実験が行われたのは、北海道開発局が所管する実験施設「十勝川千代田実験水路」(北海道幕別町)。北海道中東部を流れる十勝川の河川区域内に位置し、主に土木技術の検証に用いられてきた施設だ。
今回の実験は、土木の領域と建築の領域の実証実験を同時に行ったもの。上流側では、堤防を模した試験体の天端を越流させ、 最終的に破堤させる「決壊実験」を実施。その下流約70mに戸建て住宅を模した試験体を配置して、浸水深1m超の河川氾濫を再現した。
実大の木造住宅を、本物の洪水のような環境に置くという、極めて珍しい試みだ。堤防の決壊実験としても国内最大級の規模となったこの実験。 建築側の実施主体である建研では、水が押し寄せた状況の解析に用いる建物の「流体力抵抗性能」の計測、建物の各部に作用する応力の検証などを狙いとした。
上流側から見た実験現場。実験水路に総2階建ての木造住宅を建設した。住宅の手前が堤防試験体だ(写真:池谷 和浩)
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建築側の試験体は、実験に参画した一条工務店が建設した「耐水害住宅」だ。同社としても、2020年に実用化したこの技術を実証する格好の舞台となった。
土木側の実験が始まったのは24年6月27日午前10時ごろ。越水開始から3時間以上、堤防試験体が耐えたことが確認された。この後、実験水路の水量は一気に増やされた。堤防を壊すためだ。
午後2時過ぎ、堤防が決壊。見学者がどよめく中、建築側の試験体へ土混じりの黒い水が押し寄せた。この実験における水流の速さは、毎秒1~2mという想定だ。建研の交流研究員で、一条工務店特建設計部部長の平野茂氏は実験後、「計測の速報値はほぼ想定範囲内だった」と説明した。
実験水路と試験体の位置関係、建築側の試験体の概要(出所:建築研究所
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