きめ細やか」で「公明正大」、だけど負の影響も
遺失物の“楽園”ニッポン──仏紙記者が「落とし物」から日本を見たら
ル・モンド(フランス)
Text by Philippe Pons
「日本では財布を落としても戻ってくるらしい……」。世界中でまことしやかに噂される、落とし物が返ってくる国、ニッポン──だがこの国は現状に飽き足らず、紛失物管理システムのさらなる拡充を図っている。仏「ル・モンド」紙の記者が「落とし物」から「日本」、そして「日本人」を考察する
財布、スマホ、傘……これらをどこかで失くしたとしても、日本であれば手元に戻ってくる可能性が高い。この国ではこれまで、紛失物の捜索は各県ごとにおこなわれてきた。しかし現在、紛失物の管理システムをさらに向上させるため、警察庁は全国を対象としたデータベースを開発中である。この新しいシステムがあれば、紛失物の情報は全国レベルでまとめられ、すでに発見されている場合、数分でその場所を特定することができる。
たとえば、北海道に住んでいる人が沖縄への旅行後に財布を失くしたことに気づいたとしても、もう見つかっているかどうか、どのように受け取ることができるかをすぐに調べられるのだ。2023年3月から10府県で試用を始め、5年以内には全国での運用を目指す。
価値のあるなしにかかわらず、毎年、東京では400万件、日本全国では3000万件近くの拾得物が警察に届けられている。それは身分証からクレジットカード、運転免許証、スマートフォン、ハンドバッグ、財布、ときにはかなりの額の現金が入った封筒まで含まれる。そして、そのうちの4分の3が持ち主の手元に戻っているという。
2003年に米ミシガン大学でおこなわれた研究では、ニューヨークと東京とで、持ち主の手元に返った財布の数が比較された。結果は、ニューヨークでは10%、東京では80%だった。警視庁遺失物センターによれば、スマートフォンや携帯電話の83%、財布の65%が──多くはその日のうちに──見つかっている
きめ細やか、そして公明正大
文京区にある警視庁遺失物センターの棚には、ありとあらゆる物品がずらりと並び、シュールレアリストがいかにも喜びそうな光景が広がっている。すべての品に、規定に従ったラベルが貼られ、一部は布袋に入れられている。手元に戻ってくることを大いに待ち望まれていそうなものから、そうでもなさそうなものまで──テディベア、靴、楽器などなど──なにもかもが保管されており、発見された場所と種類によって分類されている
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