オフィスは入居率100%
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駅東口の要となる「渋谷アクシュ」開業、ヒカリエ連結のオフィスは入居率100%
小山 航
日経クロステック/日経アーキテクチュア
渋谷二丁目17地区市街地再開発組合と
その参加組合員である東急は2024年7月8日、
大型複合施設「渋谷アクシュ」(SHIBUYA AXSH)を開業した。
オフィスや飲食店、
ギャラリーなどで構成する。
オフィス中心だった渋谷駅東口エリアで、
にぎわいを生み出す。
同時に歩行者ネットワークの要として、
東口の新しいアイコンとなることを目指す。総事業費は約275億円。
開業に先立ち、
同年7月4日にメディア向けの内覧会が開かれた。
再開発が進む渋谷駅周辺に立つ真新しい高層ビル群の中でも、
結節点をイメージしたという「X(クロス)」をかたどった外装デザインが目を引く。
東急によると立地の良さなどが評価され、
開業前にオフィス入居率100%を達成。渋谷駅前のオフィス需要の高さがうかがえる。
青山通り(国道246号)から見た「渋谷アクシュ」の外観(中央のビル)。「X」をかたどった外装デザインが特徴。2024年7月4日時点(写真:日経クロステック)
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渋谷アクシュの位置(出所:渋谷二丁目17地区市街地再開発組合、東急)
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建物は地下3階・地上23階建てで、高さは約120m。延べ面積は約4万4543m2。地上1~4階は商業フロアで、飲食店やアートギャラリー、健診センターなどが入居する。5~23階はオフィスフロアで、基準階面積は約1325m2。
事業者である渋谷二丁目17地区市街地再開発組合は東急の他、塩野義製薬、南塚産業(東京・渋谷)、NANZUKA(東京・渋谷)、東宝、太陽生命保険から成る。設計は東急設計コンサルタント・三菱地所設計・パシフィックコンサルタンツによる渋谷二丁目17地区設計JV、施工は竹中工務店がそれぞれ手掛けた。
プロジェクトの事業コンセプトは「TSUNAGI-BA(つなぎば)」とした。渋谷駅東口エリアと近接する青山方面をつなぎ、人や文化の交流を促して新しい価値を生み出す場とする。青山(A)と渋谷(SH)の街をつなぐ(X)建物として、「アクシュ(AXSH)」と名付けた。
赤い線で示したのが渋谷アクシュ(低層部を描写)を結節点とする渋谷駅東口エリアの新しい動線イメージ(出所:渋谷二丁目17地区市街地再開発組合、東急の資料に日経クロステックが加筆)
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ビルが立つのは、渋谷駅東口側から延びる宮益坂と青山通り(国道246号)に挟まれた傾斜地だ。駅に直結している大型複合施設「渋谷ヒカリエ」(12年開業)のすぐ裏手にあり、回遊性を高めるため地上2階レベルを歩行者デッキでつなげた。青山通りを挟んで向かいに立つオフィスビル「渋谷クロスタワー」とも、既存の歩道橋を介してつながっている。
渋谷ヒカリエから渋谷アクシュを見る。地上に下りなくても、2階の歩行者デッキで互いを行き来できる(写真:日経クロステック)
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渋谷クロスタワーとは既存の歩道橋で接続(写真:日経クロステック)
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ビルの地上1~2階には、吹き抜けのアトリウムがある。ここは縦方向の動線になり、坂道が多い渋谷で青山方面へのアクセス性を高めている。アトリウムは鉄道の始発・終電時間を考慮し、午前5時から翌午前1時まで通行可能とする。
渋谷駅側から館内に入ると、地上2階まで続くアトリウムを通って青山方面に抜けられる(写真:日経クロステック)
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縦横の動線上に、来街者が滞留できる2つの広場を設けた。渋谷駅側の広場「SHIBUスポット」には、大型ビジョンを設置。将来的にはイベントの利用を想定している。青山側の広場「AOスポット」にはパブリックアートを展示。来街者を飽きさせないよう、半年に1回程度のペースで作品を入れ替える。
渋谷駅側の広場「SHIBUスポット」。左上の歩行者デッキで渋谷アクシュと渋谷ヒカリエをつなぐ。右上が大型ビジョンで、内覧会当日は開業までのカウントダウンを表示していた(写真:日経クロステック)
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青山側の広場「AOスポット」。中心にパブリックアートを設置した。再開発組合に参加するNANZUKAがキュレーションを担当し、定期的に作品を入れ替える(写真:日経クロステック)
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渋谷アクシュから青山方向を見る。写真右を通るのが青山通り。広場から通りまでスムーズにつながる(写真:日経クロステック)
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オフィス需要が高い渋谷駅前でも東口エリアは周辺との回遊性は弱く、来街者が滞留できる空間も少なかった。東急都市開発本部渋谷開発事業部プロジェクト推進第二グループの田邊秀治担当部長は、「今後は歩行者ネットワークが駅の全方向に延びてつながるので、街の分断が解消される。渋谷アクシュの開業を東口エリアの『まちびらき』と捉えている」と語る。
渋谷アクシュを含めた渋谷駅周辺の回遊性向上イメージ(出所:渋谷駅前エリアマネジメント)