Kアリーナ横浜を結ぶ歩道橋の設計ミス、橋台張り出し部の照査記録なし

坂本 曜平
 

日経クロステック/日経コンストラクション

 

 横浜市の音楽施設「Kアリーナ横浜」と横浜駅方面をつなぐ歩道橋

 

に設計ミスがあった問題で、

 

橋台の張り出し部の鉄筋が必要量の半分程度しかないことが分かった。

 

設計したJR東日本コンサルタンツの照査体制に

 

不備があったことも判明した。

 

同社が日経クロステックの取材に応じ、ミスの原因を明らかにした。

 

 

設計ミスが判明した高島水際線デッキ。Kアリーナ側のA2橋台の張り出し部分が強度不足だった(写真:日経クロステック)

設計ミスが判明した高島水際線デッキ。Kアリーナ側のA2橋台の張り出し部分が強度不足だった(写真:日経クロステック)

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 設計ミスがあったのは、市が整備した「(仮称)高島水際線デッキ」。

 

供用前の24年5月17日、

市は同橋の施工者からKアリーナ側の橋台(A2橋台)に

 

長さ約1.2m、幅約3mmのひび割れが生じていると報告を受けた。

 

 

 

 

 A2橋台は、片側を橋軸直角方向に張り出した形状だ。張り出した側と、その反対側の2点で支承を介して上部構造を支持している。ひび割れは張り出し部分の根元で見つかった。

 

 

A2橋台に生じたひび割れ(写真:日経クロステック)

A2橋台に生じたひび割れ(写真:日経クロステック)

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 JR東日本コンサルタンツが構造計算などを実施した結果、

A2橋台は必要な鉄筋量を満たしていないことが24年5月30日に判明。

市は6月1日に控えていた供用開始を急きょ延期した。

 

 

 曲線桁の偏向荷重に対応するため、

設計の途中で橋台を張り出すように形状を変更した。

張り出し部は断面積が小さくなるため、

橋台全体に加えて、

張り出し部にかかる荷重などを検討して、

必要な鉄筋量を計算する必要がある。

 

しかし、JR東日本コンサルタンツは張り出し部の照査を怠っていた。

 

 

高島水際線デッキの上部構造は曲線桁だ。偏向荷重に対応するために、A2橋台は頂部を一部張り出すことになった(写真:日経クロステック)

高島水際線デッキの上部構造は曲線桁だ。偏向荷重に対応するために、A2橋台は頂部を一部張り出すことになった(写真:日経クロステック)

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 その結果、A2橋台では

(1)鉄筋が端部まで延びていない

 

(2)D29鉄筋を配置すべき箇所の一部が直径の小さいD19鉄筋になっている

 

(3)スターラップ(あばら筋)が配置されていない

――といった不備が生じている。

 

その結果、A2橋台は強度不足になり、

 

張り出し部の根元にひび割れが発生したと考えられる。

 

 

 

A2橋台で生じた不備のイメージ(出所:取材を基に日経クロステックが作成)

A2橋台で生じた不備のイメージ(出所:取材を基に日経クロステックが作成)

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 ミス判明を受けて市はJR東日本コンサルタンツに対し、

他の橋台や橋桁の安全性を再確認するように求めた。

同社によると、

A2橋台以外では設計ミスや強度不足といった不備は見つかっていない

 

 

 

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