ギネス認定「世界一の金魚すくい」廃止…運営メンバー高齢化や猛暑で「役割終わったかも」

読売新聞オンライン

ギネス世界記録に認定された「金魚すくい」(2002年8月、神奈川県藤沢市で)

 

 

 水槽の長さなどでギネス世界記録に認定された神奈川県藤沢市の恒例イベント「世界一大きな金魚すくい」が廃止となった。運営する団体メンバーの高齢化や近年の猛暑などが影響したという。コロナ禍前は、県内外から大勢の人が参加する夏の風物詩だっただけに、惜しむ声が相次いでいる。(日下翔己) 

 

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担い手不足

 イベントは、JR藤沢駅北口の商店街「藤沢銀座土曜会」の店主らでつくる協同組合が1999年に始めた。2002年に水槽の長さ100・8メートルなどでギネス世界記録を更新。19年には、3万匹の金魚を2分間で何匹すくえるかを競う「選手権大会」が開かれ、県内外から4万人以上が参加した。

 一方で、組合員の高齢化がイベントの継続に影を落とした。メンバーは70~80歳代が多く、長い水槽を設置するのは重労働。当日は、会場案内や金魚袋への酸素注入、後片付けなどにも追われる。

 行事の担い手も少なくなった。そもそも、商店街で店を構えながら組合に入らない店主は少なくない。かつてはイベント当日に地元企業が手伝いに参加してくれたが、休日を返上してのボランティアは理解を得られなくなっているという。昨年8月には、中心的役割を担ってきた日比政彦前理事長が亡くなった。

熱中症の危険

 近年の夏の暑さも追い打ちをかけた。

 真夏のイベントは、炎天下の屋外で開かれる。大勢の参加者は水槽の前で長時間にわたって座り続け、熱中症の危険がある。猛暑に見舞われた19年には「誰も倒れなくて良かった」と安堵(あんど)する声もあったという。

 20年に「熱中症警戒アラート」、今年4月には「熱中症特別警戒アラート」の運用が開始。発令された場合、イベント主催者は中止の判断を迫られる可能性もあり、組合員の一人は「どのみち行事の継続は困難だっただろう」と語る。

コロナで中止

 廃止を決定づけたのが新型コロナの感染拡大だった。組合事務局によると、コロナ禍前の理事会では「何となく来年も」という雰囲気があったが、中止が続くにつれて「もう無理だろう」というムードになった。21年までの理事会でイベントの廃止が決まり、水槽や道具も処分されたという。

 昨年5月に新型コロナが5類に移行すると、各地から開催の問い合わせが相次いだ。廃止を知らせると、「再開したら行こうと楽しみにしていたのに」「コロナ禍でできなかった“世界一の金魚すくい”を子供にさせてあげたかった」などと惜しむ声が聞かれたという。同会理事の田中正明さん(81)は「さみしいし、残念なことだが、世の中が変化してきている。時代の流れで役割が終わったのかもしれない」と話している

 

 

ギネス認定「世界一の金魚すくい」廃止…運営メンバー高齢化や猛暑で「役割終わったかも」(読売新聞オンライン)