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発熱性や蓄電性を持つコンクリート、実現目指して會澤高圧コンクリートとMITが連携
山﨑 颯汰
日経クロステック/日経アーキテクチュア
道路や住宅など幅広く使われているコンクリートに
「発熱性」や
「蓄電性」を
持たせることが可能になるかもしれない。
米マサチューセッツ工科大学(MIT)が
研究してきた
電子伝導性炭素セメント材料「ec3(electron-conducting carbon-cement material)」の
社会実装に向けて、
會澤高圧コンクリート(北海道苫小牧市)は
MITとともに
共同研究に取り組む「ec3コンソーシアム」を設立した。
會澤高圧コンクリートは研究開発におよそ800万ドルをあてる。
2024年4月11日に発表した。
コンソーシアムの設立合意のサインをする様子。左がMITのフランツ・ヨーゼフ・ウルム教授、右が會澤高圧コンクリートの會澤祥弘社長(写真:會澤高圧コンクリート)
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ec3とは、
MITの
フランツ・ヨーゼフ・ウルム教授らが
研究を進めているセメント系素材。
炭素の微粒子である「カーボンブラック」を
コンクリートに添加することで、
コンクリート系素材に発熱性や蓄電性を持たせることができるという。
コンクリートは硬化してゆく過程で、
水和反応に寄与しない水が蒸発し、
内部に無数の小さな穴を形成する。
その穴の中に電導性のカーボンブラックが入り込んで
ワイヤのような細かな構造をつくる。
電解質溶液に浸すことで、カーボンブラックの上に電子が集まり蓄積する。
開発するコンクリートは、
大容量の電力を貯蔵できる「スーパーキャパシター」の一種だ。
絶縁体を挟んだ2つの電極に電荷をためる仕組みで、
セメントが絶縁体、
カーボンブラックが
電極の役割を果たす。
コンクリートに添加するカーボンブラック(写真:會澤高圧コンクリート)
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この技術の最大のメリットは、
劣化しにくい点にある。
従来の電池やバッテリーと比べて
長期的な利用が可能だ。
リチウムイオン電池などの一般的な電池は化学反応によって電気を貯蔵するため、
長期間の利用で性能が低下する。
一方、スーパーキャパシターは
化学反応を伴わず、
電極間を電荷が移動するだけなので、劣化しにくい。
環境にやさしいという利点もある。
一般的な電池と比較して長期的な利用が可能になることで、
廃棄物になりにくい。
加えて、
脱炭素にも貢献する。
會澤高圧コンクリートの理事を務める中村聖二主任研究員は
「炭素は地球温暖化の原因の1つとされる二酸化炭素を構成する物質だ。
カーボンブラックを添加し、
コンクリート内に炭素を固定化することで、
空気中の二酸化炭素の量を減らすことにもつながる」
と語る