売上高1兆円が間近の大塚商会、従業員を増やさずに高成長を続けられる秘密

玄 忠雄

 

日経クロステック/日経コンピュータ

 

 

 

 大塚商会の業績が好調だ。2023年12月期の連結売上高は前の期比13.5%増の9773億7000万円と2桁成長を達成。2024年12月期の業績予想では連結売上高は1兆260億円で、1兆円の大台を突破する見込みだ。過去20年間では売上高は2.6倍に、営業利益は3.7倍に増加した。

大塚商会の業績推移

大塚商会の業績推移

(出所:大塚商会の有価証券報告書に基づき日経クロステック作成)

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 ここ数年間は業績が伸び悩んでいた。Windows 7のサポート終了に伴うパソコン特需があった2019年12月期には、それまでの最高となる連結売上高8865億3600万円を記録した。しかし翌年の2020年12月期は、前年の反動と新型コロナウイルスの感染拡大があり、連結売上高は502億円減少。続く2021年12月期と2022年12月期も、2019年12月期の業績を上回れなかった。

 2023年12月期は、前年に比べて連結売上高を1163億円も増やして過去最高を更新した。今期、2024年12月期も好調を維持し、同社にとって初となる連結売上高1兆円を達成する見込みである。

 大塚商会が驚異的なのは、20年以上にわたって従業員をさほど増やさず、事業モデルも変えず、大きな企業買収もせずに、高成長を実現していることだ。

従業員を増やさず、労働生産性は20年間で2.1倍

 SI(システムインテグレーション)の世界では異例のことだが、大塚商会は連結売上高が20年間で2.6倍も増えているのに対して、連結従業員数は同じ期間に23.6%しか増えていない。

 20年前、2004年12月期の連結従業員数が7625人だったのに対して、2023年12月期の連結従業員数は9421人である。この20年間に従業員1人当たりの売上高は2.1倍となり、2023年12月期は1億374万円に達した。

 

 

 

 

大塚商会の連結従業員数と従業員1人当たり売上高の推移

大塚商会の連結従業員数と従業員1人当たり売上高の推移

(出所:大塚商会の有価証券報告書に基づき日経クロステック作成)

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 人月商売が幅を利かせるSIの世界では、売上高の成長は従業員数の増加に比例するものだ。しかし大塚商会にSIの世界の常識は当てはまらない。

今も昔も中堅・中小企業が主体

 大塚商会のメインターゲットは今も昔も変わらず、SIの世界ではもうからないとされる中堅・中小企業だ。全国に営業拠点を展開し、営業担当者が客先を訪問して商談を開拓するスタイルは1961年の創業期から続き、今も同社の売り上げを支えている。

 2022年12月期の数値だが、同社と取引があった29万2000社のうち、年商10億円未満の企業が79.3%を占める。年商10億円以上100億円未満の企業は16.6%、年商100億円以上の企業は4.1%だった。

 売上高構成比を見ると、年商100億円以上の顧客向けの売上高が全体の51.6%を占める。しかし同時に、年商10億円未満の顧客向けの売り上げ貢献も高いという。小口の顧客による売り上げ貢献が高い点で、大塚裕司社長は自社の事業モデルを「当社は究極のロングテールビジネスだ」と表現する。

 取り扱う製品ジャンルも大きくは変わらない。主力商品は創業期から取り扱うコピー機や複合機のほか、パソコンやオンプレミス向けサーバー、業務ソフトウエア、ネットワーク機器やセキュリティー製品などである。

 従業員も増やさず、事業モデルも変えずに、大塚商会はなぜ高成長を実現できたのか。そこには大きく3つの秘密がある

 

 

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