




山本理顕氏が未払い訴訟で勝訴、「発注者と建築家は対等だ」
Part1 報酬トラブルの実態(1)
池谷 和浩「発注者は豹変(ひょうへん)する」。
ため息交じりにそう語るのは、
2024年3月にプリツカー建築賞の受賞が決まったばかりで、
時の建築家となった山本理顕氏だ。
業務報酬を巡る裁判が23年に終結し、
日経アーキテクチュアに現在の心境を明かした。
山本 理顕氏(やまもと りけん)
山本理顕設計工場代表
1945年生まれ。
71年、東京芸術大学大学院修了後、
東京大学生産技術研究所原広司研究室研究生。
73年、山本理顕設計工場を設立(写真:池谷 和浩)
山本理顕氏が代表を務める山本理顕設計工場(横浜市)
が発注者を相手取り、
業務報酬の支払いを求めた訴訟の判決が、
2023年10月19日に下された。
請求額は5400万円。
横浜地方裁判所は同社の請求全額を是認し、
発注者の反訴を棄却。
その後、判決は確定した。
全面勝訴の内容だが、山本氏の表情は暗い。
山本氏は
名古屋造形大学(名古屋市)
が計画した新校舎の設計・監理
を、
同大学を運営する学校法人から特命受注。
その縁で18年から同大学の学長も引き受けた。
だが校舎の完成前に、
別件で学校法人の理事会と意見が対立。
理事会は学長職の停職
という懲戒処分を山本氏に通告した。
業務報酬を巡るトラブルはそれと並行するようにして起こった〔図1、写真1〕。
〔図1〕プロジェクトと無関係なトラブルが発端
山本氏と名古屋造形大学を巡るトラブルの概要。今も関係は修復されていない。プリツカー賞の発表は学校法人との和解の後だったが、受賞後に学校側が許可した視察では、校舎内が人払いされていて、誰もいなかったと山本氏は打ち明ける(資料:判決文などに基づき日経アーキテクチュアが作成)
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〔写真1〕山本氏側が「全面勝訴」
報酬を巡る裁判の判決の写し。裁判所は山本氏側の請求をそのまま認め、反訴した学校法人側の請求をすべて棄却した
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「引き渡し検査で、相手方が『あちこちが要望とは違う、設計瑕疵(かし)だ』と言い出した。それまで聞いたこともない要望もあった。報酬の残額は支払えないし、むしろ瑕疵修補相当のお金を返せと主張するのだから、もう裁判をするしかなかった」(山本氏