新1万円札で注目高まる渋沢栄一の旧邸宅を移築、清水建設が文化財指定に尽力
星野 拓美
日経クロステック/日経アーキテクチュア
2024年7月3日に発行が始まる新1万円札の顔、渋沢栄一(1840~1931年)。栄一と子、孫、ひ孫が4代にわたって暮らした「旧渋沢家住宅」を清水建設が東京都江東区にある自社施設の敷地内に移築し、24年3月5日に建物内部を報道陣に初公開した。
築145年を超える旧邸宅は木造2階建てで、延べ面積は1204m2。清水建設の2代目当主である清水喜助(1815~81年)が設計・施工を手掛けた。
木造2階建ての「旧渋沢家住宅」。清水建設が報道陣に内部を公開した日はあいにくの雨だった(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]
旧邸宅はこれまで何度も移築を繰り返してきた歴史がある。1878年の新築時は東京・永代に立っていたが、その後は東京・三田に移築された。増築・改築を経て、1991年には青森県六戸町に移され、保存されてきた。
2019年に清水建設が建物を取得し、旧邸宅の部材を1品ごと解体・移送。東京・潮見に建設した同社のオープンイノベーション拠点「温故創新の森 NOVARE(ノヴァーレ)」に移築し、23年に“帰京”した。ノヴァーレは清水建設が約500億円を投じた研究開発や人材育成の一大拠点であり、旧邸宅はそのシンボルになっている。
旧邸宅は24年1月に、江東区の有形文化財(建造物)に指定された。文化財指定を受けるポイントの1つになったのが、建設当初から使われているオリジナル部材の使用率を高めたことだ。使用率の具体的な数字は精査中だが、江東区文化財保護審議会の確認を受けて評価された。
清水建設社寺建築・住宅部の金高正典上席エンジニアは、「木材の腐朽などでオリジナル部材が傷んでいる場合でも、部材を丸ごと取り換えるのではなく傷んだ部分だけ交換し、残りの部分を継ぎはぎして使う。こうしてオリジナル部材の使用率を高めた」と話す。
新しい部材を使用する場合にも、「オリジナル部材を取り換える根拠を文化財保護審議会に説明した。オリジナル部材と同じ樹種の木材を使うことでオリジナリティーを補完するようにした」と金高上席エンジニアは明かす。
清水建設2代目当主の清水喜助が設計・施工を担当した表座敷2階の客間。ヒノキづくりで、釘は使わず、木を組み合わせて接合する伝統的な工法で仕上げている。写真左の床柱は、清水喜助が手彫りしたもの(写真:清水建設)
[画像のクリックで拡大表示]
当面は社内研修やノヴァーレの来館者向け見学施設として利用する。同社コーポレート・コミュニケーション部長の宮田幹士氏は、「一度に多くの人に見てもらうのは難しいので人数を限定したかたちでの公開になると思うが、できるだけ早く一般公開できるようにしたい」と話す
新1万円札で注目高まる渋沢栄一の旧邸宅を移築、清水建設が文化財指定に尽力 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)
=====================================
清水建設が都内のイノベーション拠点を公開、500億円投じた巨大施設群の内部
清水建設は2023年9月4日、東京都江東区に新設したオープンイノベーション拠点「温故創新の森 NOVARE(ノヴァーレ)」を報道陣に公開した。
投資額は約500億円。
19~23年度の中期経営計画で示し...
2023/09/08