氷山の一角? 舗装からヒ素検出

青野 昌行

 

日経クロステック/日経コンストラクション

 

 

名古屋市内の堤防道路で、撤去した舗装の一部から環境基準の3倍を超えるヒ素などが検出された。施工時に有害物質の含有をチェックする明確な規則はなく、造成当初から含まれていた可能性が高い。「汚染資材」が使われた土木構造物は、全国各地に潜んでいる恐れがある。

 「通常は建設廃棄物の受け入れに当たって、重金属などが含まれているか検査を求めることはない」

 ある廃棄物処理会社の営業担当者はこう話す。検査を求めるのは、工場跡地であるなど疑わしい事情がある場合だけだという。

 この堤防道路には、有害物質の含有が疑われる特別な事情はなかった。当初、受け入れを予定していた廃棄物処理会社が、たまたま環境基準への適合を条件にしていたため、検査を実施した。

 問題が判明したのは、名古屋市西区にある庄内川堤防道路だ。国土交通省庄内川河川事務所が延長約300mにわたり最大約1.3mかさ上げする工事を進めている(資料12)。工事に伴って既設の道路舗装を撤去した際、アスファルトの表層の下にある砕石などの路盤に有害物質が含まれていると分かった。

資料1■ 庄内川堤防道路で舗装の路盤材を撤去している様子(写真:国土交通省庄内川河川事務所)

資料1■ 庄内川堤防道路で舗装の路盤材を撤去している様子(写真:国土交通省庄内川河川事務所)

[画像のクリックで拡大表示]

資料2■ 庄内川の堤防かさ上げ工事の範囲(出所:国土交通省庄内川河川事務所)

資料2■ 庄内川の堤防かさ上げ工事の範囲(出所:国土交通省庄内川河川事務所)

[画像のクリックで拡大表示]

 2023年11月と12月に検査したところ、ヒ素の溶出量が、土壌汚染対策法(土対法)の基準値である1リットル当たり0.01mgに対し、最大で0.032mgを示した。さらにフッ素も、基準値0.8mgに対して、最大で1.5mg検出した(資料3)。川への流出は確認されていない。

資料3■ アスファルトを撤去してむき出しとなった路盤材から試料を採取した(写真:国土交通省庄内川河川事務所)

資料3■ アスファルトを撤去してむき出しとなった路盤材から試料を採取した(写真:国土交通省庄内川河川事務所)

[画像のクリックで拡大表示]

 この堤防が1973年に愛知県から国へ移管された当時、既に道路は舗装されていた。傷んだ舗装は通常、アスファルトの表層だけを更新する。移管以降、路盤材を含めて舗装を打ち換えたかどうかは分からず、路盤の施工時期は不明だ。

 有害物質が舗装の施工時や完成後に混入したとは考えにくいため、当初の路盤材が汚染されていた可能性が高い。庄内川河川事務所では「当時の施工者や路盤材の販売会社は分からない」(林昌広副所長)という。

 検出されたヒ素やフッ素は、自然由来である可能性が高い。人為的な混入ならば、もっと高い溶出量を示すはずだからだ。材料の岩石などに含まれていたと考えられる。

 路盤の下の盛り土や、隣接する堤防の路盤などにも有害物質が含まれている恐れがあるため、同事務所は名古屋市の環境部局などと協議して調査を進める。かさ上げの現場やその付近を、一定間隔でボーリング調査する考えだ。撤去した路盤材は土対法に基づく「汚染土壌」として、同法に対応した処理施設に持ち込む

 

氷山の一角? 舗装からヒ素検出 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)