住宅設計者がみかんの木のバイオ炭を混ぜた建材開発、「水を浄化する家」完成
有岡 三恵
ライター
バイオ炭を住宅建材として利用した2階建ての新築戸建て住宅「佐鳴湖(さなるこ)公園の住宅」が、2024年1月末に浜松市で完成した。この建材は、バイオ炭を配合した内外装用のブロックだ。設計を手掛けたASEI建築設計事務所(東京・港)がストーンワークス(鹿児島県大崎町)と共同開発した。
ASEI建築設計事務所が設計した住宅「佐鳴湖(さなるこ)公園の住宅」。みかんの木でつくったバイオ炭を配合して開発したブロックを内外装材に使用している(写真:鈴木 亜生)
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みかんの木でつくったバイオ炭(柑炭)入りの建材用ブロックの表面(写真:有岡 三恵)
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バイオ炭とは、生物資源を原料とした環境改善効果がある炭化物である。ASEI建築設計事務所の鈴木亜生代表は、浜松市で農業廃棄物になっているみかんの木に着目。みかんの木を炭にした「柑炭(かんたん)」を内外装用のブロックに配合するアイデアを発案した。
柑炭を配合した建材用ブロックを開発したASEI建築設計事務所の鈴木亜生氏。炭のフィルター効果を生かした外装材による水の浄化と、内装材としての吸放湿性や空気清浄効果を期待する(写真:有岡 三恵)
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柑炭を象眼したバイオ炭入りのブロックで雨水を浄化する(写真:有岡 三恵)
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鈴木氏が設計した浜松市の住宅は、構造が鉄骨造。延べ面積が約340m2ある大きな家だ。
この住宅に、柑炭を配合したブロックを開発してまで使った理由は2つある。1つは、敷地が隣接する佐鳴湖の水質改善。もう1つは、地元のみかん農家から出る農業廃棄物の有効利用である。鈴木氏は「どちらも地域の環境課題を解決するため」と説明する。
佐鳴湖は浜松市郊外に位置する。2000年代前半には、環境省による全国湖沼汚濁度順位でワースト1になっていたことがある。24年現在は汚濁度が改善しているが、湖畔の宅地開発が活発になっている。住宅地から湖に流れ出る地下水の質が汚濁度に影響を与えると、鈴木氏は考えた。
現在の佐鳴湖と住宅が立つ敷地の周辺(写真:鈴木 亜生)
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鈴木氏は、住宅に降り注ぐ雨水をろ過するフィルターの役割を果たす外装材を構想した。「水の浄化に貢献できる住宅のロールモデルを目指した」(鈴木氏)
具体案としてひらめいたのが、
みかんの木を使った柑炭
をろ過フィルターとして使うことだ。
柑炭は他にも、
断熱性や
吸放湿性、
空気清浄効果
を期待できる。
「素材として非常に優れている」(鈴木氏)という