山火事と暴風雨で全て失ったギリシャの村 「全てゼロからやり直し」

ロイター

焼失した聖ヨハネ教会から自分の村を見渡すバシリス・ツィアミタスさん(46)。ギリシャ・セスクロで2023年10月撮影

 

 

 

 

<ゼロから再出発>

(左から)アンドレアス・ツィアミタスちゃん(4)、クリスティーナさん、ミハリスちゃん、バシリスさん。クリスティーナさんの両親のアパートで夕食をとろうとしている。セスクロで2023年10月撮影

 

 

 

 

 

7月に発生した山火事は、少なくとも2日間、手のつけようもなく燃え続けた。 ツィアミタスさんによれば、村民はどうにか避難できたものの、強風にあおられた炎は農地や果樹を焼き尽くし、村のアーモンドとオリーブ油の生産量の約70%が失われたという。 「あの日は気象条件が最悪だった。風も強く、湿気もまったくなかったので、火の回りが早かった。何をしようにも時間の余裕がなかった」とツィアミタスさんは振り返る。

 

 

 

焼け焦げたアーモンドの実を見つめるツィアミタスさん。セスクロで2023年9月29日撮影

 

 

 

 

過去30年以上でギリシャとしては最も長期にわたる熱波に見舞われた後、9月初めには暴風雨「ダニエル」がテッサリア地域を襲った。16人が犠牲となり、同地域はまるで内海のように水浸しとなった。家屋や農場は破壊され、農作物は広範囲で壊滅した。 ツィアミタスさんは、自身が経営するビーチサイドのバーは浸水被害を受けたが、セスクロの村民の大半は、周辺地域の住民ほど深刻な影響を受けなかったと話す。だが、ほっとしたのも束の間だった。

 

 

 

焼け焦げたアーモンドの実を見つめるツィアミタスさん。セスクロで2023年9月撮影

 

 

 

 

 

数週間後、「ダニエル」よりは弱いものの、予想外の進路を取った暴風雨「エリアス」が最後の一撃を与えた。 激しい水の流れが玄関のドアを押し破ったため、末の息子を抱き上げて、義理の両親が住む階上に急いで逃げなければならなかった、とツィアミタスさんは語る。 その後、水が引くにつれて、セスクロをはじめとする村々の惨状が明らかになった。 「教訓を得なければならない」と、ツィアミタスさんは焼け焦げたアーモンドの切り株を見ながら言う。「こういう根は抜かないと。植え直す必要がある。何度でも、全てをゼロからやり直さなければ」 [セスクロ ギリシャ 2023年11月21日 ロイター] (Louisa Gouliamaki記者、 翻訳:エァクレーレン) ※この記事はYahoo!ニュースとの連携によって、ロイターのワイダーイメージ英語記事を日本語化した連載特集記事になります

初めに炎が、続いて水がやってきた。 セスクロはギリシャ中央部にある小さな村だ。バシリス・ツィアミタスさん(46)は2023年の夏、両極端ともいえる異常気象を経験した。ギリシャは気候変動による影響の中心地になってしまった。 9月には暴風雨「エリアス」により自宅が浸水、経営するビーチサイドのバーは土台が傾き、車も押し流された。その数週間前のギリシャ史上最悪規模の暴風雨「ダニエル」、そして一家のアーモンド畑を焼き尽くした7月の山火事では被害を免れていたものも、全て失われてしまった。

 

 

 

 

 

暴風雨「エリアス」による洪水の後、ツィアミタスさんの自宅前に散乱するがれき。セスクロで2023年9月撮影

 

 

 

 

2階建ての自宅の外に立つツィアミタスさんは、「どう乗り越えていけばいいのか、神のみぞ知る、だ」と言う。玄関のドアは蝶番から外れてしまい、洪水で水没した木の板と並べて壁に立てかけられている。 ツィアミタスさんはロイターの取材に、「次に何が襲ってこようと、これ以上悪くなりようがない」と語った。

 

 

 

浸水した自宅から救出した家財の汚れを落としながら、妻クリスティーナ・グカレリさん(33)と言葉を交わすツィアミタスさん。セスクロで2023年9月撮影

 

 

 

 

近年、激しい暴風雨や洪水の頻度が高まる一方で、気温上昇によって夏はさらに暑く乾燥するようになり、山火事がいつ起きても不思議のない状況が生まれている。 ギリシャ本土中央部のテッサリア地域一帯の村々では、道路が泥で覆われ、洪水で被害を受けた家具類が乾燥のために戸外に積み重ねられている。こうした異常気象の影響を緩和するためにギリシャが気候変動への対応策をとる必要があることを、嫌でも思い起こさせる光景だ。

 

 

 

 

暴風雨「エリアス」に襲われたツィアミタスさんの家では、子どもたちのおもちゃや本が泥まみれになった。セスクロで2023年9月撮影

 

 

 

 

セスクロは、港湾都市ボロスに近い人口約800人の村で、欧州最古の先史時代の集落跡が残る。これまで何世紀にもわたり自然災害から生き延びてきた。

 

 

「黄金海岸」とも呼ばれるクリッシ・アクティで、自身が経営するビーチサイド・バーの被害を確認するツィアミタスさん。セスクロ近郊で2023年9月撮影

 

 

 

だがツィアミタスさんによれば、村の最長老たちでさえ今年のような惨状を経験したことはないという。 地域コミュニティーのリーダーでもあるツィアミタスさんは、「村がこれほどの試練にさらされるのは初めてだ」と語る。「村の広場にいつも座っているような95歳や90歳になる高齢者でさえ、これほどの事態を経験したことはない」

 

 

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