最低価格の設定ミスで落札取り消し、8年間エクセルの関数間違えたまま

坂本 曜平

 

日経クロステック/日経コンストラクション

 

京都府笠置町は2023年11月に実施した公共工事2件の指名競争入札で最低制限価格の設定を誤ったため、契約前の落札決定を取り消した。正しく設定していれば、別の参加者が落札するはずだった。24年1月11日に発表した。

最低制限価格の誤りのイメージ(出所:笠置町への取材を基に日経クロステックが作成)

最低制限価格の誤りのイメージ(出所:笠置町への取材を基に日経クロステックが作成)

[画像のクリックで拡大表示]

 問題が判明したのは、23年11月13日に開札した塚本橋橋梁維持修繕工事と、根台1号線交通安全対策工事の2件の入札。予定価格は前者が1990万2000円(税抜き、以下同じ)、後者が690万9000円だった。

 橋梁維持修繕工事の入札では、参加した6者のうち5者が最低制限価格未満で失格になった。開札後、入札に参加した会社から「最低制限価格がおかしいのではないか」と問い合わせがあり、町建設産業課が確認したところ、誤りが判明した。最低制限価格の算出に用いる表計算ソフト「エクセル」の関数が間違っていた。

 町は中央公共工事契約制度運用連絡協議会が作成した算定式(中央公契連モデル)に基づいて最低制限価格を設定している。算出時には、共通仮設費と現場管理費それぞれに10分の9を乗じて1円未満を四捨五入した額を用いる。しかし、町は1000円未満を切り捨てた額を用いていた。

最低制限価格の算定時に笠置町が誤っていた内容(出所:笠置町の資料を基に日経クロステックが作成)

最低制限価格の算定時に笠置町が誤っていた内容(出所:笠置町の資料を基に日経クロステックが作成)

[画像のクリックで拡大表示]

 さらに、橋梁維持修繕工事の入札については共通仮設費の一部に10分の9を乗じていなかった。町は、直接工事費に共通仮設費率と10分の9を乗じた額に、積み上げ仮設費に10分の9を乗じた額を加算した合計額を「共通仮設費×10分の9」としている。しかし、橋梁維持修繕工事では積み上げ仮設費に10分の9を乗じ忘れていた。

 その結果、正しく算出していた場合の最低制限価格と比べて、橋梁維持修繕工事では約10万円過大に、交通安全対策工事では約2000円過小になっていた。

 町建設産業課の福島学課長によると、担当者が算出して上長が確認する体制だったが、間違いを見落としていた。町に問い合わせた会社は、事前公表の予定価格を基に独自で最低制限価格を算出していたようだ。「問い合わせがなければ気づかなかった」と福島課長は言う

 

最低価格の設定ミスで落札取り消し、8年間エクセルの関数間違えたまま | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)