珠洲市飯田港の防波堤が津波で破壊、津波浸水の一因か
佐藤 斗夢
日経クロステック/日経コンストラクション
能登半島地震で震度6強を記録した石川県珠洲市の飯田港。地震による強い揺れや津波により、防波堤や岸壁が破損するなどの甚大な被害を受けた。2024年1月5日に現地で撮影した写真をメインに、被害状況をお伝えする。
飯田港の東側防波堤の被害状況。ケーソンが倒壊・水没している。2024年1月5日撮影(写真:日経クロステック)
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飯田港の被害状況。ひび割れなどが多く見られる。2024年1月5日撮影(写真:日経クロステック)
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飯田港は、背後地に市内唯一のショッピングセンターが整備されるなど商業・漁業の中心地にある。一部報道によると発災当時、市の一部の地域で津波の高さが最大約4mに達していた可能性がある。
飯田港では津波の影響で複数の船舶が転覆していた。2024年1月5日撮影(写真:日経クロステック)
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飯田港で津波の影響を受けて岸壁に乗り上げた船舶。2024年1月5日撮影(写真:日経クロステック)
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港内では特に、東側の防波堤での被害が目立つ。中央部ではケーソンの一部で倒壊や水没などが発生。先端部では消波ブロックが消失した。こうした被害が生じた部分の整備は、1980~87年度に終えていた。一方で、2016年度に整備を終えた箇所では被害がほとんど見られなかった。
飯田港の航空写真。赤丸で囲んだのが東側防波堤の消失箇所。赤丸は日経クロステックが加筆(写真:海上保安庁第九管区海上保安本部)
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飯田港の東側防波堤における被害状況の航空写真(写真:パスコ、国際航業)
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石川県港湾課の担当者は、「津波が防波堤を乗り越えたことか、あるいは津波によって防波堤が押されたことで、損壊したと見られる」と話す。
飯田港の東側防波堤の側面写真。赤丸で囲んだのが水没した箇所。2024年1月5日撮影(出所:日経クロステック
岸壁の被害で大型船舶の着岸困難
先の石川県港湾課の担当者によると、防波堤が損壊した箇所から港内に津波が押し寄せた可能性があるという。港の背後にあるショッピングセンターには、津波で流された車が複数見られた。
飯田港の背後にあるショッピングセンター。津波で流された車が衝突していた。2024年1月5日撮影(写真:日経クロステック)
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飯田港の避難タワーの下には、津波で押し流された車が見える。2024年1月5日撮影(写真:日経クロステック)
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飯田港の背後地には、一部で水が残っていた。2024年1月5日撮影(写真:日経クロステック)
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飯田港付近の家屋での津波被害。港に加え、近くを流れる若山川を遡上した津波が原因だと見られる。2024年1月5日撮影(写真:日経クロステック)
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飯田港では東側防波堤の他に、地震による強い揺れの影響で、岸壁などに陥没やひび割れが生じていた。そのため、1月8日時点で大型船舶が着岸できない状況が続いている。
飯田港では岸壁の変状により、排水設備が壊れて周囲が浸水していた。2024年1月5日撮影(写真:日経クロステック)
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飯田港では複数箇所で陥没が発生していた。2024年1月5日撮影(写真:日経クロステック)
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飯田港では上部コンクリートがめくれる被害が発生していた。2024年1月5日撮影(写真:日経クロステック)
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国は飯田港を含む一部の港湾の管理を代行しており、支援物資を積載した船舶が着岸できるように、まずは岸壁の復旧を優先する方針だ。24年1月8日、復旧工事に着手した。
地震による強い揺れで岸壁が壊れ、大型船舶の着岸が困難になるなど支援活動にも影響を与える被害が生じてしまった。その一方で、一部が消失した東側堤防のうち、16年度に整備を終えた比較的新しい箇所ではほとんど被害が見られなかった。地震・津波に対する今後の港湾施設の整備手法を議論する際、参考になりそうだ
珠洲市飯田港の防波堤が津波で破壊、津波浸水の一因か(2ページ目) | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)