トンネル覆工の厚さ不足問題、掘削以外の全工事をやり直し
坂本 曜平
日経クロステック/日経コンストラクション
和歌山県内のトンネル工事で覆工コンクリートの大幅な厚さ不足が判明した問題で、調査を進めていた県の技術検討委員会(委員長:大西有三・京都大学名誉教授)は2023年12月20日、外周の地山を支えるアーチ形の支保工約700カ所ほぼ全てが正確に設置されていなかったと発表した。県は今後、約2年かけて掘削以外の全ての工事をやり直す。
2023年12月12日から実施している覆工コンクリートの撤去作業の様子(写真:和歌山県)
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施工不良があったのは、県道長井古座線の一部として整備する全長約711mの八郎山トンネル(仮称)だ。浅川組・堀組JVが20年9月~22年9月の工期でNATMによって施工した。
22年12月に照明設置工事の施工者が覆工コンクリートを削孔したところ、厚さ不足が発覚。トンネル全長の約7割で不足していた。設計値の30cmに対し、わずか3cmの箇所もあった。
施工不良の発覚を受けて県は調査を実施。その結果、覆工コンクリートの厚さ不足にとどまらず、掘削線形や支保工の設置位置のずれ、吹き付けコンクリート厚の管理不良などが次々と明らかになった。
その後、県は3次元測量や地中レーダー探査などで詳細調査を実施した。20mごとに測点を設けて支保工幅(スプリングラインにおける支保工前面の内空幅)と天端の位置を測定。その結果、54地点中49地点で設計値を満たしていないことが判明した。幅は最大で369mm設計値より狭く、天端はトンネル断面で見て左右に207mm、上下に144mmずれていた。
支保工幅の調査概要(出所:和歌山県)
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県道路建設課の森本春樹主任は、「調査を進めるごとに次々と問題が明らかになってきた。施工が粗雑で、工事をやり直す以外にどうしようもない状態だ」と肩を落とす
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