大成建設が佐藤秀を完全子会社化、安藤忠雄氏の代表作も施工した異色のゼネコン

星野 拓美
 

日経クロステック/日経アーキテクチュア

大成建設が中堅・中小ゼネコンを対象としたM&A(合併・買収)を着々と進めている。

 2023年11月30日、主に首都圏で建築の設計・施工を手掛ける佐藤秀(東京・新宿)の全株式を取得し、完全子会社化した。取得額は非公表だ。佐藤秀が強みを持つ富裕層向けのマンションや戸建て住宅、社寺などの伝統建築は、大成建設が「当社の劣後分野の1つ」(同社広報室)と位置付ける領域だ。佐藤秀を取り込むことで、グループの国内建築事業の強化を図る。

 大成建設は24年3月期第4四半期に、佐藤秀の完全子会社化による影響を損益計算書(PL)に反映する。完全子会社化に伴う業績寄与の見通しについて、大成建設は具体的な数字を明らかにしなかったものの、「大きな影響はない想定だ」とする。

大成建設が完全子会社化した佐藤秀の本社(写真:日経クロステック)

大成建設が完全子会社化した佐藤秀の本社(写真:日経クロステック)

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 佐藤秀は、「日光プリンスホテル」(1976年竣工)などの設計を手掛けたことで知られる佐藤秀三(1897~1978年)が1929年に創業した異色のゼネコンだ。同社の資本金は1億円、2023年4月1日時点の従業員数は184人で、22年度は約148億円を売り上げた。社寺建築に定評があり、国の重要文化財である成田山新勝寺額堂の耐震補強工事(千葉県成田市、2016年竣工)などを手掛けた。

 著名な建築設計事務所が設計したプロジェクトの施工も多く担当している。安藤忠雄建築研究所(大阪市)が設計したコンクリート打ち放しの住宅「城戸崎邸」(東京都世田谷区、1986年竣工)や、隈研吾建築都市設計事務所(東京・港)が設計した木組みの外観が特徴の商業施設「サニーヒルズ南青山」(東京都港区、2013年竣工)などの施工を担当してきた。

安藤忠雄建築研究所が設計した「城戸崎邸」。安藤氏はこの住宅で1988年に吉田五十八賞を受賞した(写真:安川 千秋)

安藤忠雄建築研究所が設計した「城戸崎邸」。安藤氏はこの住宅で1988年に吉田五十八賞を受賞した(写真:安川 千秋)

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隈研吾建築都市設計事務所が設計した「サニーヒルズ南青山」。「地獄組み」と呼ばれる伝統の木組みを外観に現した(写真:安川 千秋)

隈研吾建築都市設計事務所が設計した「サニーヒルズ南青山」。「地獄組み」と呼ばれる伝統の木組みを外観に現した(写真:安川 千秋