麻布台ヒルズは街全体が「美術館」、迷子にならずチームラボやオラファー展を巡る

川又 英紀
 

日経クロステック

2023年11月24日に開業した、森ビルの「麻布台ヒルズ」が備える様々な機能や特徴を過去4回の特集記事で紹介してきた。今回は趣向を変え、麻布台ヒルズをアートや建築デザインを体験しに行く人の目線で見ていく。麻布台ヒルズはミュージアムやギャラリー、パブリックアートなど、文化施設に約9300m2もの面積を割いた。街全体で1つの巨大な「美術館」のようになっている。

 話を進める前に、麻布台ヒルズの施設配置をおさらいしておく。初めて訪れる人はほぼ間違いなく、迷子になるからだ。約8.1haある広大な敷地はT字に近い複雑な形をしており、ゾーンが開業時点では「ガーデンプラザ」「タワープラザ」「レジデンスA」の3つに分かれる。特に迷いやすいのがガーデンプラザで、A~Dの4つの低層棟で構成されており、自分が今どこにいるのか把握しにくい。

 最寄り駅は東京メトロ日比谷線の神谷町駅、または南北線の六本木一丁目駅になる。東側の神谷町駅(桜田通り)から西側の六本木一丁目駅(麻布通り)までをつなぐ道路として新設された、その名も「桜麻(さくらあさ)通り」はカーブしながら坂が続く。桜麻通りは麻布台ヒルズの敷地を貫通しているので、3つのゾーンを地上で行き来する場合は一度、桜麻通りに出ることになるなど動線が分かりにくい。

麻布台ヒルズの配置図。最寄り駅は東京メトロ日比谷線の神谷町駅と南北線の六本木一丁目駅(出所:森ビル)

麻布台ヒルズの配置図。最寄り駅は東京メトロ日比谷線の神谷町駅と南北線の六本木一丁目駅(出所:森ビル)

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 そこで初めての来街者、中でもアート巡りが目的の人は施設群をつなぐ地下フロアを通ることをお勧めする。地下の中心動線「セントラルウォーク」を意識して歩くと、主要な施設を回りやすい。雨にもぬれず、冬場は寒さをしのげる。

 取り上げるアート施設の多くは、麻布台ヒルズの地下を東西に結ぶセントラルウォークに沿って配置されている。主な飲食店や店舗もセントラルウォーク沿いにあるものが多い。ただし、ここでは触れないので過去の記事を参照してほしい。

麻布台ヒルズの3つのゾーンを地下でつなぐ中心動線「セントラルウォーク」(出所:森ビル、麻布台ヒルズフロアマップ)

麻布台ヒルズの3つのゾーンを地下でつなぐ中心動線「セントラルウォーク」(出所:森ビル、麻布台ヒルズフロアマップ)

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 23~24年の年末年始に麻布台ヒルズを訪れる人が最初に向かいたいのは、森ビルが運営する「麻布台ヒルズギャラリー」だろう。開館記念の「オラファー・エリアソン展:相互に繋がりあう瞬間が協和する周期」が24年3月31日まで開催されている。六本木ヒルズにある森美術館が企画・キュレーションを担当しており、森美術館の「地下別館」のような展示空間ともいえそうだ。展示面積は約700m2と、決して広くはない。

 オラファー・エリアソン氏は環境問題や気象変動をテーマにした作品を数多く発表しているアーティストだ。日本での知名度も高く、人気がある。開館記念はエリアソン氏の最新作を国内で鑑賞できる貴重な機会となる。中でも天井高が約5mある真っ暗な空間に展示された全長20m以上ある光と水を用いた作品は、アートファン必見だ。通常チケットの価格(税込み)は、一般1800円。

「麻布台ヒルズギャラリー」で、開館記念の「オラファー・エリアソン展」が開催中(写真:日経クロステック)

「麻布台ヒルズギャラリー」で、開館記念の「オラファー・エリアソン展」が開催中(写真:日経クロステック)

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振り子の動力で紙と鉛筆が動き、軌跡を描く作品。チケット代とは別料金で体験可能で、特製の判子を押して用紙を持ち帰れる(写真:日経クロステック)

振り子の動力で紙と鉛筆が動き、軌跡を描く作品。チケット代とは別料金で体験可能で、特製の判子を押して用紙を持ち帰れる(写真:日経クロステック)

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光と水を使った大きなインスタレーション作品(写真:日経クロステック)

光と水を使った大きなインスタレーション作品(写真:日経クロステック)

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天井かららせん状に水滴が垂れ、点滅するストロボの光の中で鑑賞すると不思議な水の軌跡が浮かび上がる(写真:日経クロステック)

天井かららせん状に水滴が垂れ、点滅するストロボの光の中で鑑賞すると不思議な水の軌跡が浮かび上がる(写真:日経クロステック)

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太陽光や風がつくりだす模様など気象をテーマにした作品が並ぶ(写真:日経クロステック)

太陽光や風がつくりだす模様など気象をテーマにした作品が並ぶ(写真:日経クロステック)

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日本一の高さがあるメインタワー「森JPタワー」のオフィスロビーには、展覧会の作品と同じ素材を用いたエリアソン氏のパブリックアートがある。併せて鑑賞したい(写真:日経クロステック)

日本一の高さがあるメインタワー「森JPタワー」のオフィスロビーには、展覧会の作品と同じ素材を用いたエリアソン氏のパブリックアートがある。併せて鑑賞したい(写真:日経クロステック)

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 麻布台ヒルズギャラリーはガーデンプラザAのMB階(地上1階と地下1階の中間)にある。MBと言われてもいきなり迷いそうだが、セントラルウォークから向かうとスムーズだ。途中には麻布台ヒルズギャラリーに付帯するギャラリーカフェとミュージアムショップ(ギャラリースペース)がある。

 カフェではオラファー・エリアソン展と連携した「THE KITCHEN」を開催中。作品を見た後に立ち寄るのもいい。独ベルリンにあるエリアソン氏のアトリエ内キッチンとコラボレーションしたメニューが会期中に限り提供される。

オラファー・エリアソン展とコラボレーションしたカフェ「THE KITCHEN」は、セントラルウォークの出発点になっている「駅前広場」に面する位置にある(写真:日経クロステック)

オラファー・エリアソン展とコラボレーションしたカフェ「THE KITCHEN」は、セントラルウォークの出発点になっている「駅前広場」に面する位置にある(写真:日経クロステック)

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麻布台ヒルズギャラリースペースにミュージアムショップがある(写真:日経クロステック)

麻布台ヒルズギャラリースペースにミュージアムショップがある(写真:日経クロステック)

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 冒頭で最寄り駅は神谷町駅または六本木一丁目駅と記したが、電車で訪れる人は当面、神谷町駅を使うのが便利だ。同駅の東京タワー方面改札を出ると、麻布台ヒルズの開業に合わせて整備された地下通路に出て、約1000m2ある広い「駅前広場」にすぐ出られる。

 地下の駅前広場がセントラルウォークの東端になる。麻布台ヒルズギャラリーやカフェは、神谷町駅を背にして駅前広場の右方向にある。

 麻布台ヒルズギャラリースペースのそばには、テナントとして他のギャラリーも入居している。その1つがThe Chain Museum(ザ・チェーン・ミュージアム、東京・渋谷)が運営するアートスペース「Gallery & Restaurant 舞台裏」だ。このギャラリーの特徴は作品の展示スペースを表(オモテ)、隣の飲食スペースを裏(ウラ)と捉え、表と裏が仕切りなくつながる小さな空間で食事をしながら作品を鑑賞できることだ。

ギャラリーと飲食店が合体した「Gallery & Restaurant 舞台裏」。表に展示された作品を見ながら、裏で食事ができるコンセプトを店名の舞台裏に込めた(写真:日経クロステック)

ギャラリーと飲食店が合体した「Gallery & Restaurant 舞台裏」。表に展示された作品を見ながら、裏で食事ができるコンセプトを店名の舞台裏に込めた(写真:日経クロステック)

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 表と裏を表現した店舗設計は、新素材研究所(東京・港)出身で現在は建築設計事務所Studio Hashimura(東京・目黒)を主宰する橋村雄一氏と、デザイン会社nendo(東京・港)などに在籍した後に設計事務所nao architects officeを設立した内田奈緒氏が手掛けた。

 隣には漫画のギャラリー「集英社マンガアートヘリテージ トーキョーギャラリー」が出店。ファン垂ぜんの人気漫画「ONE PIECE(ワンピース)」のマンガアートが見られる。

「集英社マンガアートヘリテージ トーキョーギャラリー」では、人気漫画のマンガアートを購入できる(写真:日経クロステック)

「集英社マンガアートヘリテージ トーキョーギャラリー」では、人気漫画のマンガアートを購入できる(写真:日経クロステック)

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 駅前広場に着いたら、建築好きの人は最初に見ておいてほしい場所がある。広場左手にあるガラスで囲まれた屋外空間だ。中には、麻布台ヒルズの低層部とランドスケープをデザインした英国のへザウィック・スタジオ(Heatherwick Studio)が描く、曲線だらけの建物外装フレームの起点がある。日本初となるへザウィック建築のスタート地点だ。

 ジェットコースターのレールのように曲がりくねった格子状のフレームは、表面に小さな玉石を露出させた独特の石質仕上げになっている。ぐにゃぐにゃでざらざらな外装フレームの起点は見逃しがちなのでチェックしておこう。

ヘザウィック・スタジオが建築デザインした、曲線だらけの外装フレームの起点。地下の駅前広場から見られる。地上から見下ろすことも可能(写真:日経クロステック)

ヘザウィック・スタジオが建築デザインした、曲線だらけの外装フレームの起点。地下の駅前広場から見られる。地上から見下ろすことも可能(写真:日経クロステック

 

 

 

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