イスラエル軍中佐「子どもや女性は撃ってない」…ガザ北部「死の街」従軍ルポ

読売新聞オンライン

8日、パレスチナ自治区ガザ北部の公園で付近の警戒にあたるイスラエル兵=福島利之撮影

 

 

 

 

 【パレスチナ自治区ガザ北部=福島利之】

 

 

イスラエルとイスラム主義組織ハマスの戦闘が続くパレスチナ自治区ガザ北部に8日、イスラエル軍に従軍して入った。北部は10月7日に始まった戦闘の緒戦で激戦地となった。見渡す限り建物は破壊され、街から人の気配が消えた「死の街」となっていた。

 

 

 

  【動画】建物破壊され「死の街」、本紙記者がガザ北部を従軍ルポ

 

 

 

 

 

 

(写真:読売新聞)

 

 

 

 

 戦闘開始後、日本の報道機関がガザに入ったのは初めてだ。取材では、取材場所や作戦内容の詳細を報じないなどの条件が課された

 

 

 

 

 

 

 

8日、パレスチナ自治区ガザ北部で銃を構え警戒にあたるイスラエル兵=福島利之撮影

 8日午後3時30分頃、イスラエル南部のガザ境界の軍基地から軍用車両に乗り込んだ。しばらく走った後、鉄製の柵に設けられた門を通過しガザに入った。

 「ここからは危険地帯だ」

 イスラエル領内では冗談を飛ばしていた兵士の表情はガザに入ると途端に引き締まった。

 車両は右手に地中海の海岸を見ながら、でこぼこ道を南下した。ショベルカーが土塁を築いているのが見えた。

 車両に据え付けられた銃台では、兵士が銃の引き金に指を当てたまま、鋭い目つきで辺りを見回していた。ドカーンという爆音が断続的に鳴り響く。体全体に砲撃の振動が伝わった。

 爆撃で鉄筋がむき出しになった建物群が見えてきた。粉々になったコンクリートが山のように積み上がっていた。破壊された住居の跡だった。

無傷の建物なく、校舎は土台崩れ

 イスラエル軍が8日、パレスチナ自治区ガザ北部で従軍取材の記者を案内した海岸沿いの一帯は、戦闘が始まるまでは「海の家」やカフェが並び、若者に人気のスポットだった。富裕層の別荘も立っていたが、見る影もない。

 2階建ての民家の壁には、銃弾の痕が蜂の巣のように残り、黒焦げだった。建物という建物は崩れ、無傷の家は見つけられなかった。

 イスラエル軍が記者らに見せたジャバリヤ郊外の集落にあった学校の校舎は、土台から崩れていた。礼拝の時間を知らせるモスク(イスラム教礼拝所)の尖塔は折れていた。

 遊園地の遊具も破壊されていた。子どもの姿はなく、上空からは無人機の「ブーン」という無機質な音が聞こえてきた

 

 

 

この集落にはイスラエル軍の歩兵や工兵、大砲部隊から成る部隊が展開している。部隊の指揮官モアズ中佐は「我々は、幼稚園や学校、モスクでハマスが隠した武器を発見した。だが、我々のモラルは高く、子どもや女性は撃っていない」と強調した。

 イスラエル軍は別の集落で、3階建ての民家の前に掘られた「地下トンネル」も披露した。垂直に掘られた深さ約10メートルのトンネルには、はしごで下りられるという。アディ曹長は「ハマスはここから出撃し、ここに隠れた。トンネルがある限り我々は民家を攻撃せざるを得ない」と訴えた。

 

 

 

 

 日没後、電気が遮断されているガザは、真っ暗になった。軍の車両が帰路に就くと、イスラエルの街がまぶしく光っていた。漆黒と光。この非対称性こそが、今回の戦闘の本質でもある。

 

 

 

 従軍取材には、ドイツの通信社、イタリアの新聞社など記者計4人が参加した。原稿と写真は軍の検閲を受けた。指摘はなかった

 

 

 

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