施工中に傾いた橋脚基礎を全て撤去、原因は改良した地盤の変形か

青野 昌行

 

日経クロステック/日経コンストラクション

 

愛知県東海市で施工中だった橋脚の基礎が突然傾いた事故で、事前に砕石への置き換えで改良した地盤に変形が生じていたことが日経クロステックの取材で分かった。周辺の地盤が想定よりも軟弱だったため、改良部がはらみ出したと見られる。傾いた基礎を全て撤去した後に実施した試掘調査などで判明した。

ケーソンが傾斜した橋脚基礎の建設現場。中央に見える青い塔は、底部への人の出入りなどに使う仮設構造物「ペアロック」(写真:国土交通省愛知国道事務所)

ケーソンが傾斜した橋脚基礎の建設現場。中央に見える青い塔は、底部への人の出入りなどに使う仮設構造物「ペアロック」(写真:国土交通省愛知国道事務所)

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 事故があったのは、国土交通省と愛知県が整備を進めている西知多道路の建設現場だ。伊勢湾岸自動車道などと接続する東海ジャンクション(JCT)の接続路で起こった。

東海JCTに建設する接続路と橋脚の位置。Eランプ橋のPE7橋脚で事故があった。図の右側に西知多道路が延びる(出所:国土交通省愛知国道事務所)

東海JCTに建設する接続路と橋脚の位置。Eランプ橋のPE7橋脚で事故があった。図の右側に西知多道路が延びる(出所:国土交通省愛知国道事務所)

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 発注者の国交省愛知国道事務所によると2023年9月28日、施工者の青木あすなろ建設がニューマチックケーソン工法で基礎を構築中に、施工基面から約28cm沈下掘削したところで、南東方向に約9度傾いた。

■施工状況のイメージ

■施工状況のイメージ

作業室で底面を掘削しながらケーソンの躯体を沈下させ、上にコンクリートを打設して杭長を延ばす予定だった(出所:国土交通省愛知国道事務所の資料を基に日経クロステックが作成)

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傾斜したケーソンを上から見る。コンクリートは1リフト目まで打設していた。2023年9月28日撮影(写真:国土交通省愛知国道事務所)

傾斜したケーソンを上から見る。コンクリートは1リフト目まで打設していた。2023年9月28日撮影(写真:国土交通省愛知国道事務所)

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 ケーソンは直径6.5mの円筒形。中心部には、底部にある作業室への人の出入りや掘削土砂の搬出に使う搭状の仮設構造物「ペアロック」が立っていた。高さが13mあり、ケーソン本体と一緒に傾いた。転倒の恐れがあったため、事故の翌朝までにペアロックを緊急撤去した。

事故があった23年9月28日の夜間に実施したペアロック撤去の様子(写真:国土交通省愛知国道事務所)

事故があった23年9月28日の夜間に実施したペアロック撤去の様子(写真:国土交通省愛知国道事務所)

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 完成すれば杭長24mとなるコンクリート製のケーソンは、高さ3.5mの1リフト目を打設した状態だった。原因究明に向けた地盤調査などを実施するには、打設済みのケーソンが支障となる。そこで、ケーソンの上部に出ている鉄筋を切断した後、本体を80カ所削孔し、静的破砕材を注入。ひび割れを発生させた上で、ブレーカーで破砕して撤去した。

ケーソン解体時の様子。23年10月30日撮影(写真:国土交通省愛知国道事務所)

ケーソン解体時の様子。23年10月30日撮影(写真:国土交通省愛知国道事務所)

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 現場ではケーソンの構築に先立って、沈下掘削する箇所を砕石置換によって地盤改良していた。ケーソンの中心から半径2.29mと半径3.55mそれぞれの円に挟まれたリング状の部分が改良範囲だ。この範囲内の地盤を深さ3.1mまで砕石に置き換えた。

■調査ボーリングなどの実施箇所

■調査ボーリングなどの実施箇所

上記の調査箇所の他、改良体の外周と内周それぞれ6カ所で、変形状態を確認するためボーリングを実施した(出所:国土交通省愛知国道事務所の資料を基に日経クロステックが作成)

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 施工前にケーソン中心の1カ所でボーリング、4カ所で一軸圧縮試験を実施したものの、地盤の状態を十分に把握できていなかった可能性がある。

 事故後の調査では、簡易動的コーン貫入試験やボーリング、地下水観測などを実施。砕石置換による改良体の変形状態を確認するため、改良体の外周と内周それぞれ6カ所でボーリングして、コアを採取した。

砕石置換で改良した箇所の変形状態を確認するためのボーリング(写真:国土交通省愛知国道事務所)

砕石置換で改良した箇所の変形状態を確認するためのボーリング(写真:国土交通省愛知国道事務所

 

 

施工中に傾いた橋脚基礎を全て撤去、原因は改良した地盤の変形か | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)

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2023/10/12