実はリチウムイオン電池で世界トップの大日本印刷。アメリカで生産強化、100億円規模の投資計画。背景に米インフレ抑制法
三ツ村 崇志
Business Insider Japan|ビジネス インサイダー ジャパン
リチウムイオン電池用バッテリーパウチ(電動車用)のサンプル。© BUSINESS INSIDER JAPAN 提供
印刷大手の大日本印刷(以下、DNP)は11月29日、アメリカ・ノースカロライナ州にリチウムイオン電池をパッケージ化するために必要な「バッテリーパウチ」を生産する工場用地を新たに取得したことを発表した。
DNPは今後、バッテリーパウチの材料であるロール状のフィルムを適切なサイズにカットする「スリット加工ライン」の導入に100億円規模の投資を計画しており、2026年度の稼働を目指すとしている。
リチウムイオン電池で「世界トップ」のDNP
印刷会社として知られているDNPだが、その事業領域は写真や出版物といったいわゆる「印刷物的」なものだけでなく、生活用品の包装材、ディスプレイや半導体などにまつわる電子部品など、多岐にわたる。
中でも、「リチウムイオン電池」の外装材料である「バッテリーパウチ」は、DNPが世界トップシェアを占め、「バッテリーパウチに関しては、当社の注力事業の一つ」(DNP広報)として、2025年度までに売り上げ1000億円を目指している。
DNPのプレスリリースによると、DNPは国内ですでに、福岡県・戸畑工場と埼玉県・鶴瀬工場内にバッテリーパウチの生産工場を展開。海外でもDNPデンマークで、バッテリーパウチのジャンボロールのスリット加工用の工場を新設するなど、供給体制の構築を進めている状況だった。
2022年8月16日、アメリカでインフレ抑制法が成立した。写真は署名後にスピーチするバイデン大統領。この法案の影響で、リチウムイオン電池のサプライチェーンにも変化が起きている。撮影:2022年8月16日© BUSINESS INSIDER JAPAN 提供
世界では脱炭素の施策の一環としてEVの導入が既定路線として進んでいる。加えて、自動車の生産台数の増加に伴い、リチウムイオン電池の需要は継続的に増加。そこに追い打ちをかけるかのように、2022年8月にはアメリカでインフレ抑制法が成立した。
インフレ抑制法によるEVの「導入補助」が始まったことで、アメリカではさらにEV市場が拡大している。今回の工場用地の取得は、こうしたアメリカでのEV用リチウムイオン電池の需要増に対応するための準備の側面が強いという