Dublin Carnage
Gearóid Murphy
アイルランド・ダブリンで刃物襲撃、子ども3人含む複数が負傷 直後に暴動も発生© BBCニュース 提供
アイルランドの首都ダブリンで23日、刃物による襲撃事件があり、子ども3人を含む複数人が負傷した。この日、ダブリン市内では暴動も発生し、放火や略奪が多発した。当局は、「極右のイデオロギーにあおられた」少人数グループが、刃物事件に便乗したと非難している。
「テロ関連ではない」襲撃事件
襲撃事件は23日午後1時30分すぎ、市中心部パーネル・スクエア・イーストにある小学校の近くで起きた。5歳の女の子と30代の女性が重傷を負い、女の子は病院で緊急治療を受けている。このほか、6歳の女の子と5歳の男の子も負傷した。
警察によると、40代の男性が重要参考人となっており、この男性も重傷を負った。警察は、現時点では他の人物は探しておらず、明確な見通しのもとで捜査を続けていると付け加えた。
捜査の初期段階ではあるものの、襲撃事件は「テロ関連ではなく」、「単発の事件」のようだとの見解を示した。
情報筋によると、事件の実行犯は20年前からアイルランドに住む市民だという。
襲撃を目撃したシヴォーン・キアニーさんは、現場は「混乱していた」と話した。「何も考えずに道を渡って助けに行った。子供2人と女性は、出てきた学校にそのまま運び込まれていた」のだという。
また、刃物を持った男は地面に倒れ、複数の通行人に攻撃されていたため、「私とアメリカ人の女性で男を囲んで、警察を待った」とキアニーさんは述べた。別の青年が男を押さえつけ、刃物を奪ったのだとも話した。
アイルランドのマイケル・D・ヒギンズ大統領は、この事件の影響を受けた子供たちや家族に思いを寄せていると述べた。
その上で、「このぞっとするような事件は警察の管轄で、社会的包摂の原則を攻撃しようとするグループによって利用されたり悪用されたりすることは、法の支配と民主主義を信じるすべての人々によって非難されるに値する」と付け加えた。
事件に便乗？ 夕方から暴動
この日の午後6時ごろから始まった暴動について、アイルランド警察のドリュー・ハリス総監は、「極右のイデオロギーにあおられた、狂ったフーリガン集団」が暴力におよんだと非難。警察が現場の保全に当たっているとした。
警察は、暴動の起こった街中は「大半が落ち着いた」としている。また、重傷者も報告されていないという。
パトリック・マクメナミン警部は、「無差別の暴力行為」が起きたと非難。暴動の後も400人以上の警官がパトロールに当たっていると述べた。
逮捕者の人数は明らかになっていないが、ヘレン・マケンティー司法相は国営放送RTEに出演し、かなりの人数を拘束したと述べた。
放火と略奪
暴動は、刃物襲撃事件の現場近くで起きた。抗議者が集まるのに伴い、警察の治安部隊も現場に派遣された。
自動車やトラム、バスなどが放火されたほか、オコネル通りの店舗で略奪が起きたり、ショーウィンドウが壊されたりした。
警察によると、この抗議デモをあおったのは極右集団で、街頭で怒りをあおったり、反移民スローガンを唱えていた。
市街地にあるトリニティー・コレッジ・ダブリンは警察の要請を受け、キャンパスに通じる全ての門を閉鎖した。
また、市街地からリフィー川を挟んで南側にある、ダブリン城の近くでも暴動が発生。警察が防護盾を使って暴徒を押し戻した。
BBCのクリス・ペイジ特派員は、一部の暴徒は警察官に花火やれんがを投げつけていたと現場の様子を報じた。また、警察車両が少なくとも1台、放火されていたという。
マケンティー司法相は、暴徒らは「比較的小さな集団」で、社会の大きな派閥を代表しているわけではなく、唯一の目的は「大混乱を引き起こすこと」だと述べた。
「これは移民の問題も、今晩入院している幼い子供たちの問題でもない」
「彼らは犯罪者であり、凶悪犯であり、街の中心部にやってきて、自分たちの利益と利益のために罪のない子供たちへの攻撃を利用した」。
レオ・ヴァラッカー首相は、警官を増派したと発表。襲撃事件に衝撃を受けたとして、事実関係が明らかになりつつある最中だと述べた。
アイルランド警察のハリス総監は、「襲撃事件について、ソーシャルメディアに流れている誤った情報や噂に耳を貸さず、責任を持って行動してほしい」と人々に呼びかけた。
その上で、「何が起きたかは分かっているが、その動機はまったく不明だ」と述べた