NODE KANAZAWA(家元新社屋、金沢市)

緑の路地が貫く新社屋

高く伸びる木々を眺めて働く、街に開いたオフィス 発注:家元 設計:EARTHEN 施工:家元

川又 英紀
 

日経クロステック

金沢市の住宅会社である家元(いえもと)の新社屋は、2つの通り道が建物を貫く。外周を土壁で覆って閉じながら、緑豊かな通り道は地域に開放した。

家元の新社屋「NODE KANAZAWA」。建物を貫通する路地のような通り道を設け、背の高い木を植えた。NODEは結節点の意味で、人や仕事、街の交流を促す狙いがある(写真:吉田 誠)

家元の新社屋「NODE KANAZAWA」。建物を貫通する路地のような通り道を設け、背の高い木を植えた。NODEは結節点の意味で、人や仕事、街の交流を促す狙いがある(写真:吉田 誠)

[画像のクリックで拡大表示]

 

 

 

 2階建ての新社屋「NODE KANAZAWA」の最大の特徴は、木造の建物を北棟と南棟に分け、間に屋根のない路地のような通り道を設けたことだ〔写真1〕。

 

幅2~3mの通り道に面する壁は、ほとんどがガラス張り。オフィスで働く従業員や店舗の利用者らは、室内から緑を間近に眺められる。建物の中央付近でクロスする2つの通り道は、誰でも通れる。地域の交流に貢献した〔写真2〕。

 

〔写真1〕通り道側にフルハイトのガラスサッシ

 

 

 

〔写真1〕通り道側にフルハイトのガラスサッシ

通り道に面する建物外壁の大部分に、フルハイトのガラスサッシを採用した。オフィスや店舗、ギャラリーから緑がよく見える(写真:吉田 誠)

[画像のクリックで拡大表示]

 

〔写真2〕問屋街に交流の道をつくる

 

 

 

〔写真2〕問屋街に交流の道をつくる

敷地は四方を道路に囲まれた台形に近い形で、離れ小島のような場所。住所は「問屋町」で、敷地の北東は工場や倉庫、物流施設などが集まる問屋街だ。そこに新たな人の流れをつくる(写真:吉田 誠、上空写真のみ阿野 太一)

[画像のクリックで拡大表示]

 

 

 

 設計を手掛けたEARTHEN(金沢市)主宰の奈良祐希氏は、「2つの通り道に対して内向きに開く」と、コンセプトを説明する。社屋ではあるが、オフィスは南棟に集約。北棟1階は土間空間にして、街の人たちが利用できる店舗やギャラリーなどに充てた。同2階は会議室で、自社で使っていないときは外部に貸し出す。

 

 「部屋を貸せば、オフィスに従業員がいなくても収益を生み出せるし、人が集まりやすい」と、家元の羽田和政会長兼社長は狙いを話す。

 

 

 オフィスの中核は、南棟の2階である。そのフロアは木造住宅を得意とする家元の見せ場になっている。

オフィスの一部と、隣接する半屋外のバルコニーを、キャンチレバーで跳ね出した東側に配置した。「国内の木造建築で、約4.5mのキャンチレバーを構造体の一部に採用した建物は珍しい」(奈良氏)

 

 北棟と南棟を結ぶ3つのブリッジも単なる渡り廊下ではなく、構造の一部だ。ブリッジを含めて1つの建物と見なし、構造設計している。

 

 

 さらに、構造設計を手掛けたオーノJAPAN(東京都渋谷区)代表の大野博史氏は、ダイナミックな木造トラスを採用。木材や接合部を屋内に露出させた〔写真3〕。

 

 

商談などに訪れる顧客や取引先の目に必ず入る。

 

 

 

〔写真3〕木造トラスを露出させたオフィス

 

〔写真3〕木造トラスを露出させたオフィス

南棟2階にあるオフィス。室内には木造トラスの斜材が露出しているが、その下のスペースも活用できるように配置した(写真:吉田 誠)

[画像のクリックで拡大表示]

北棟1階にはテナントとして地元のパフェ店が入居。建て主の想像を超える人気ぶりで連日大盛況だ(写真:吉田 誠)

北棟1階にはテナントとして地元のパフェ店が入居。建て主の想像を超える人気ぶりで連日大盛況だ(写真:吉田 誠)

[画像のクリックで拡大表示]

 

 

 従業員もトラス斜材の下を行き来し、ブリッジを渡る。

 

立体的に緑が見えるオフィスは従業員に好評だ。羽田氏は「新社屋を見て入社したいと言ってくれる人まで現れた」と、驚きを隠せない。人材採用が難しくなっている住宅業界で、新社屋が働き手まで引き寄せた。

 

 

 建物を分割して通り道を設けたのは、耐火要件をクリアするためでもある。2階建ての両棟の総延べ面積を500m2以下に抑え、耐火要件がかからない「その他建築物」とした

 

緑の路地が貫く新社屋 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)