難民キャンプ空爆、50人以上犠牲か ハマス戦闘で死者「1万人超」
ガザ北部ジャバリア難民キャンプの空爆跡で、生存者を捜す人たち=2023年10月31日、ロイター
イスラエル軍は10月31日、パレスチナ自治区ガザ地区北部にあるジャバリア難民キャンプで軍事作戦を行い、イスラム組織ハマスの幹部を含む「テロリスト約50人」を殺害したと発表した。ガザ地区では空爆や地上戦が激しさを増しており、これまでの戦闘による死者数は、双方合わせて1万人を超えた。
当局の発表では、これまでの死者数はイスラエル側が約1400人、ガザ側が8796人に上る。ガザでは空爆で倒壊した建物の下に多くの人が閉じ込められているとみられている。 中東の衛星テレビ「アルジャジーラ」によると、ジャバリアでは空爆によるとみられる大きなクレーターができ、複数の建物が倒壊した。さらに1日にもキャンプに追加の空爆があった。 イスラエル軍のハガリ広報官は、ハマスがジャバリア西部で地下トンネルや訓練施設などを造っており、大量の武器も保管されていたと説明。地上軍と空軍がこれを破壊したという。また、大規模な地下トンネルがあったことから、標的の建物を攻撃した際に周囲の建物も崩壊したと指摘した。 ロイター通信は付近の病院関係者の話として、ジャバリアでは少なくとも50人が死亡し、約150人が負傷したと伝えた。一方、ハマスは「400人以上が死傷した」と主張。現地にハマス幹部はいなかったとして、民間人に対する「虐殺」だと非難した。ハマスはこの攻撃でイスラエルから連行されていた人質7人が死亡したと明らかにした。うち3人は外国籍だという。 またロイターは1日、ガザ地区の南部にあるラファ検問所から、同日中に最大500人の外国人がエジプト側に退避する見通しになったと伝えた。エジプト当局が公表した退避者のリストには日本人とみられる名前が少なくとも5人分ある。 ガザ北部ではイスラエル軍が部隊を増強している模様だ。米CNNテレビによると、ガザ周辺に待機していた多数の戦車が10月31日、新たにガザ地区北東部に入った。ハマスは同日、ガザ市の北部と南部で市内に侵入を試みたイスラエル軍と交戦になり、複数の戦線で相手に損害を出したと主張した。イスラエル軍によると、地上戦ではすでに複数のイスラエル兵が死亡しており、激しい戦闘が続いている。 ◇周辺国との交戦激化 ガザ地区での死者が拡大する中、イスラエルの周辺国でも緊張が高まっている。イランが支援するイエメンのイスラム教シーア派武装組織フーシ派は31日、イスラエルを標的に多数の無人機と弾道ミサイルを発射したと発表した。イスラエル軍によると、南部エイラートを狙っていたとみられ、紅海で迎撃したという。今回の戦闘が始まって以降、フーシ派が同様の攻撃を行うのは3度目で、「イスラエルの侵略」が続く限り攻撃を続けると主張した。 イスラエル北部では隣国レバノン南部を拠点とするシーア派組織ヒズボラとの交戦が激化しているほか、イラクやシリアでも米軍を狙った攻撃が相次いでいる。またロイターによるとブリンケン米国務長官が3日、イスラエルを訪問する。政権幹部とガザ情勢などについて協議するとみられる。
【カイロ金子淳