支保工に強度不足の疑い浮上、大林組JVの鉄骨崩落事故で厚労省も注意喚起
星野 拓美日経クロステック/日経アーキテクチュア
東京・八重洲で進む再開発事業の建設現場で鉄骨5本が崩落し、巻き込まれた作業員2人が死亡した事故について、梁(はり)の継ぎ手部分を支えていた支保工の強度が不足していた疑いが浮上している。事故があった「東京駅前八重洲一丁目東B地区第一種市街地再開発事業」の現場をJR東京駅側から見る。写真中央に見えるタワークレーンの周りで鉄骨が崩落した。写真左に見えるのは施工中の高層棟(写真:日経クロステック)
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この事故は2023年9月19日、劇場棟7階の鉄骨建て方中に発生した。警視庁中央署と施工JV(共同企業体)の代表企業である大林組によると、タワークレーンで吊(つ)っていた長さ18m、重さ約7トンの小梁1本が、ボルトで仮設置した直後に何らかの原因で落下。その際、先行して設置が完了していた7階の小梁2本と、2本の鉄骨を継いだ大梁1本も崩落した。大梁の継ぎ手部分を支えていた支保工も鉄骨と共に崩れた。この事故で作業員5人が落下。2人が死亡、3人が負傷した。
事故の原因について産経新聞などは23年10月4日、支保工の強度が不足していた可能性があるとする関係者の証言を報じた。大林組広報課は日経クロステックの取材に、「捜査・調査中のため回答を差し控える」としており、事実関係を明らかにしていないものの、支保工の強度不足を疑う声は業界内からも上がっている。「現場の空撮などを見ると、梁サイズに対して支保工が華奢(きゃしゃ)に見える」(ある大手ゼネコンの幹部)
現場を上から見たイメージ。調査中のため、梁の位置関係などは実際の状況と異なっている可能性がある。この事故では小梁3本と、2本の鉄骨を継いだ大梁1本が落下した。落下した5本の鉄骨は長さ13~18mで、重量は計約48トンに上る。落下した作業員5人は、八重洲仲通り側に設置する予定だった梁の架設作業をしていた(出所:取材を基に日経クロステックが作成)
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厚生労働省も、仮設機材に問題があった可能性があると認識しているようだ。事故から9日後の23年9月28日、厚労省は日本建設業連合会や全国建設業協会など建設関連の5団体の会長に対し、建築工事における鉄骨建て方について、労働災害防止対策を徹底するよう通知した。構造物の他、ベントなどの建て方養生を含む仮設機材についても、崩壊・倒壊しないよう必要な措置を講じることなどを求めた。
厚労省労働基準局安全衛生部建設安全対策室は、「今回の注意喚起は、落下した梁を支えていた仮設機材に崩落の要因があったのではないかという見立ての下で実施している」とする
支保工に強度不足の疑い浮上、大林組JVの鉄骨崩落事故で厚労省も注意喚起 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)