TOB成立で東芝新体制の検討本格化へ、元副社長の復帰も-関係者
(ブルームバーグ):
東芝が投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)連合による株式公開買い付け(TOB)の成立を発表したことで、今後の焦点は新生東芝の体制づくりに移る。複数の関係者によると、主要取引銀行からの役員派遣や、交際費不適切処理問題で辞任した柳瀬悟郎元副社長の復帰も検討されている。
経営の自由を縛ってきた物言う株主(アクティビスト)は非上場化により退場することになるが、収益力の向上などの課題は残ったままだ。島田太郎社長を支える新体制の構築が急務となる。
複数の関係者らによると、島田社長をサポートするキーパーソンとして復帰を検討されているのが、柳瀬氏だ。特に買収資金を融資した銀行団からは、TOBに向けて尽力し、東芝復活のかぎを握る原子力発電事業に長年関わってきた柳瀬氏の復帰を求める声が強い。
ただ、今年2月に突然発表された柳瀬氏の退任はガバナンス上問題があり、東芝も柳瀬氏がトップマネジメントとして関わり続けるのは望ましくないと結論づけた経緯がある。東芝社内では柳瀬氏の復帰に異論もあり、実現しない可能性もある。融資の条件となる「キーマン条項」には、島田氏と柳瀬氏が経営陣に残ることが組み込まれていたが、その後、柳瀬氏は同条項から除かれている。
同社の広報担当はブルームバーグの取材に対して、非公開化後の経営体制についてはJIPと同社で今後協議する予定で、現時点で決まったものはないとした。
もう1つの焦点は、銀行団からの役員派遣だ。同関係者らによると、銀行団の融資条件のひとつに役員派遣が含まれており、主力取引行の三井住友銀行やみずほ銀行からの役員派遣が検討されている。
三井住友銀とみずほ銀ほか、三井住友信託銀行、三菱UFJ銀行、あおぞら銀行など5行は総額1兆2000億円を融資をしており、銀行団としては役員派遣により、資金回収を確実にしたい考えだ。少数株主に対するスクイーズアウト終了後、新体制の立ち上がりに合わせて派遣を見込んでいる
TOBへの応募は78.65%と、成立条件としていた3分の2以上は超えたものの、9割未満だった。そのため、東芝は11月下旬にも臨時株主総会を開き、株式併合の定款変更手続きを経て早ければ年内にも上場廃止となる見通しだ。
1949年に東京証券取引所に上場した東芝は、原発から半導体、家電まで網羅した総合電機メーカーだったが、2015年に発覚した不正会計以降、米原発事業での巨額損失など経営の混乱が続いた。
2017年には2年連続の債務超過による上場廃止を回避するため、6000億円の第三者割当増資を実施したが、東芝の執行体制が変わった18年4月以降、アクティビストとの対立が深まった。21年4月には英投資会社CVCキャピタル・パートナーズから買収の初期提案を受けたが進展せず、その後上場維持にこだわって会社分割案を提案したが、臨時株主総会で否決される事態を招いた。
昨年、島田社長体制になった東芝は非公開化を含む戦略的選択肢の提案を募集。今年3月、資金的な裏付けがあるなどの理由でJIP陣営の買収提案を受け入れた。
東芝は経営混乱の中でメディカル、半導体メモリー、白物家電、テレビなど多くの事業を売却。島田氏はデータを活用して既存の製品やサービスに新たな価値を作っていく戦略を描くが、エネルギーやインフラなど短期的な利益を出すのは難しい事業もあり、新体制とともにJIP陣営傘下となった後の成長戦略が注目される。
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Taro Fuse, Yuki Furukawa
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