習近平体制は「支離滅裂」…全世界が首を傾げる「大ブーメラン経済政策」で中国は破滅の一途へ

 

現代ビジネス

処理水で大ブーメラン

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 習近平体制の中国が、いよいよ支離滅裂になってきた。原発処理水の海洋放出批判が、逆に「中国へのブーメラン」になったと思えば、肝心の経済政策は、民間企業を弾圧しながら「民間経済の発展が重要」などと呼びかけるトンデモぶりだ。いったい、何が起きているのか。

 

 

 

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 習政権は原発処理水を「核汚染水」と呼び、大々的な反日キャンペーンを展開している。ところが、汚染を心配した国民が放射線を測るガイガーカウンターで自宅を調べたところ、なんと東京の976倍も汚染されていることが判明した。  建材が汚染の原因である可能性が高く、バブル崩壊で冷え込んだ不動産市場に追い打ちをかける結果になっている。それだけではない。上海ガニを食べた家族が娘のお腹を測ってみたら、アラームが鳴り響いたという。上海ガニは淡水性なので「河川や湖が汚染されている」という懸念が出てきた。  消費者は、日本産だけでなく、中国産も含めた水産物全体を敬遠し、中国の漁業関係者を苦境に追い込んでいる。当局は慌てて「普通の消費者がガイガーカウンターを買う必要はない」と火消しに追われているが、爆売れ状態という。  汚染水キャンペーンが建材や河川、湖の汚染疑惑、風評被害の「大ブーメラン」となって、中国自身に跳ね返ってしまったのだ。トンチンカンな政策が国民の正しい反応を招いた。まさに、起こるべくして起きた悲喜劇である。  経済政策も同じだ。掲げたお題目と実際の行動が逆で、問題を改善するどころか、悪化させている。以下、具体的に指摘しよう。  中国共産党委員会と国務院は7月14日、民営経済発展の促進に関する意見を発表した。国営の新華社通信が19日に伝えた。以下のとおりだ。  〈民営経済は中国式近代化を推進する重要な基礎だ。市場化、法治化、国際化の一流のビジネス環境の構築し、環境を最適化し、法律に基づいて民営企業の財産権と企業家の権益を保護する。法律に基づいて生産要素を平等に使用し、市場競争に公平に参加し、同等に法律の保護を受け、民営企業は自身の改革発展、コンプライアンス経営を通じて、発展の質を絶えず向上させる

 

 

 

 

さすがに懲りたかと思いきや

 〈安定、公平、透明、予測可能な発展環境を持続的に最適化し、民営経済の活力を十分に刺激する。各部門は記録、登録、年次検査、認定、認証、指定、支社設立要求などの形式でアクセス障害を設定したり、偽装して設定したりしてはならない。行政審査、許可、記録などの条件と審査基準を整理し、法律の根拠がなければ、企業に自ら検査、検査、認証、鑑定、公証、証明書の提供などを要求してはならない〉  〈行政権力の濫用を阻止し、競争を制限する反独占法の執行を強化する。公正な競争なしには経営者に特許経営権を付与し、特定の経営者が提供する商品やサービスを限定的に経営、購入、使用してはならない〉  〈法律に基づいて民営企業の財産権と企業家の権益を保護する。行政または刑事手段を利用して経済紛争に介入し、司法における地方保護主義を執行することを防止し、是正する。財産権に関する強制措置をさらに標準化し、権限超過、範囲超過、金額超過、時間制限の差し押さえ、財産の凍結を避ける〉  民間経済を発展、強化する施策を31項目にわたって、列挙している。ここで示されたのは、市場経済を法に基づいて規律付け、透明性を高め、全体として民間経済を強化しようという方策であり、まことに結構な内容と言っていい。  これだけ読むと「バブル崩壊に懲りて、習政権もようやくマトモになったか」と思われるかもしれない。ところが、そうとは言えない。習政権は発足間もない2013年11月12日に開かれた中国共産党中央委員会で、ほとんど同じ内容を採択していたからだ。  〈中国共産党第18期中央委員会第3回総会は、次のように指摘した。資源配分における市場の決定的な役割を中心に経済システム改革を深め、基本的な経済システムを遵守し、改善し、現代の市場システム、マクロ制御システム、オープン経済システムの改善を加速する必要がある〉

言ってることとやってることが違う

 〈総会は、経済システム改革が改革を包括的に深める焦点と指摘した。根本的な問題は、政府の役割と市場の役割のバランスを取り、市場が資源の配分において決定的な役割を果たし、政府がその機能をよりよく果たすようにすることだ〉  〈オープンで競争力のある秩序ある市場システムの確立は、市場が資源の配分において決定的な役割を果たすための基礎だ。私たちは、企業が独立した管理と公正な競争を享受し、消費者が自由に選択し、自律的な消費決定、生産フローの製品と要因を自由に行い、平等に交換され、市場障壁を取り除くために努力し、資源配分の効率と公平性を高める近代的な市場システムを導入しなければならない〉  〈公正でオープンで透明な市場ルールを制定し、価格が主に市場によって決定されるメカニズムを改善し、都市部と農村部の両方で統一された建設土地市場を形成し、金融市場を改善し、科学技術の管理システムの改革を深める必要がある〉  これで明らかなように、習政権は発足当時から「資源配分で市場が決定的な役割を果たす」重要性を認識していた。とくに「市場の決定的役割」というフレーズは、同じ声明の中で3度も出てくる。  だが、実際にやってきたことは、まったく正反対だった。  2021年9月17日公開の本コラムで指摘したように、習近平政権は2年前の夏から、政治、経済、文化活動の全面的な統制強化に乗り出した。それは、まさに習氏が崇拝する故・毛沢東の文化大革命を彷彿とさせるような大弾圧の始まりだった。  有名女優らを脱税などで摘発し、アイドル・タレントをテレビから一掃する一方、学習塾や英語教育を廃止、共同富裕というスローガンの名の下に、情報技術(IT)などの有力企業に多額の寄付を強制した。アリババの系列企業、アント・グループの上海と香港株式市場への上場を中止させた。  それ以来、中国経済は民間重視どころか、国営企業優先の逆コースを辿り、現在に至っている。バブル崩壊は、そうした政策の結果である。市場が決定的な役割を果たすどころか、文字通り、党と国家が経済運営を差配してきた

 

 

 

 

中国でビジネスは不可能

 6月2日公開の本コラムで指摘したように、習政権は反スパイ法を改正し、外資企業を弾圧した。米系のデュー・デリジェンス会社、ミンツ・グループの現地社員5人の身柄を拘束し、米コンサルタント会社、ベインや多国籍調査企業のキャプビジョンを摘発した。  英エコノミスト誌は6月11日付で「中国で外国人がビジネスをするのは不可能なのか」という、そのものズバリの見出しの記事を掲載したほどだ。答えは「不可能」である。  中国専門家として名高いオックスフォード大学中国センターの経済学者、ジョージ・マグナス氏もコラムで「中国は民間企業を支援する新たな方策を明らかにしたが、過去の歴史を見れば、疑わしい」と突き放している。  民間企業と言っても、中国は「共産党の下請け」としか見ていない。それは、国家発展改革委員会が7月24日に発信した「民間投資を促進するための通知」でも明らかになった。文書は17項目にわたって具体的な政策を列挙している。たとえば、次のようだ。  〈(3)民間資本の参加を奨励する重点細分化産業を明確にする。我が委員会は交通、水利、クリーンエネルギー、新型インフラ、先進製造業、現代施設農業などの分野で、市場空間が大きく、発展潜在力が強く、国家の重大戦略と産業政策の要求に合致し、高品質発展を促す細分化産業を選び、民間資本の積極的な参加を奨励する〉  〈(15)民間投資業務のスケジューリング評価メカニズムを確立する。我が委員会は民間投資業務のスケジューリング評価メカニズムを設立し、業務目標を明確にし、プロジェクトリストを整理し、公開プロモーションプロジェクト、業務メカニズムを確立し、金融機関とのドッキングを強化し、要素保障をしっかりし、反映問題を処理するなどの業務進展、民間投資の成長率、民間投資の割合、プロモーションプロジェクトの数、金融機関の融資支援規模、プロジェクト要素保障力、民間投資問題の解決効率などの業務成果を誘致し、毎月のスケジュール、四半期ごとの通報、毎年の評価を行い、業務責任を固める。関連状況は適時に国務院に報告する〉  国が具体的な投資分野を指定して支援する産業政策は西側にもあるが、中国の場合は比較にならない。まさに、党と国家が完全に支配、監督している。「資源配分で市場が決定的な役割を果たす」と掲げた2013年当時と比べても、国の統制は強まり、民間部門の自主性は実質的に後退した。  こうしてみると、習氏の独裁体制は経済を立て直すどころか、独裁強化で習氏個人の思いつきや裁量によって政策が左右される結果、むしろ、経済の動揺は一段と大きくなる可能性が高い。原発処理水問題が壮大なブーメランを招いたのは、ほんの一例なのだ。  習近平体制の支離滅裂は激しくなりこそすれ、和らぐ見通しはない。このままなら、自滅は必至だ。

長谷川 幸洋(ジャーナリスト

 

 

 

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