ワークマン、さらにおしゃれに 新業態「カラーズ」で徹底研究した有名ブランドとは
ワークマンは9月1日、新業態「Workman Colors(ワークマンカラーズ)」を銀座に出店した。ワークマンといえば、機能性の高さを評価されて売れているイメージがある。一方、今回のワークマンカラーズではファッション性を重視し、デザイン性だけでも売れる店舗を目指す。
「#ワークマン女子」をリニューアル
ワークマンカラーズ1号店は銀座5丁目、
銀座中央通り沿いのファッションビル
「イグジットメルサ(旧ニューメルサ)」5階にあり、
前身は2022年4月28日にオープンした「#ワークマン女子(以下、ワークマン女子)」の旗艦店だ。
店舗面積は約90坪(300平方メートル)で、
店舗コンセプトは「シン、ジブン色」。
個性を主張できるデザインが選べる店舗にするという。
イグジットメルサ店の年間売上目標は5億円で、
リニューアル前のワークマン女子では4億円弱を売り上げていたところから、
25%以上のアップを目指すことになる。
ワークマンカラーズは今後、
東京の新宿・渋谷、大阪の梅田など日本を代表する大都市の繁華街に
10店程度の出店を計画している。
近年、急成長しているワークマンは、
直近5年間で売り上げも純利益も2倍強となった。
18年3月期に約797億円だったチェーン全店の売り上げは、
23年3月期には約1698億円にまで拡大している。
当期純利益も約78億円から約166億円まで伸びた。
同社はこれまで、
作業服チェーンとしてFC(フランチャイズ)システムで伸びてきた。
近年は確かな機能性に加えてデザイン性の向上が目覚ましく、
街中でも着用できるアウトドアウエアとしても注目されてきたことが成長の背景にある。
18年9月には、
ワークマンの商品群をアウトドアウエアとして再構築した
「WORKMAN Plus(ワークマンプラス)」として、
1号店のららぽーと立川立飛店をオープン。
同社にとって、
商業施設への初出店でもあった。
このワークマンプラスがヒットし
「ポストユニクロ」として注目されるきっかけになった。
20年10月には、
従来弱かった女性客を開拓するため、
ワークマンプラスをさらに女性向けに特化した店舗を展開。
ワークマン女子の1号店を、
桜木町駅(横浜市)前にある商業施設「コレットマーレ」に出店した。
現状、ワークマン全体の店舗数は995店(23年6月末)。
内訳は
ワークマンが433店、
ワークマンプラスが516店、
ワークマン女子が37店
となっている
店に来てもらえるのに、買ってもらえなかった
順調に成長しているワークマンであるが、課題もある。
同社の新業態事業部・鈴木俊輔部長代理は次のように話す。
「確かに#ワークマン女子で女性客を増やせたが、
機能性で選ばれるアウトドアウエアの域を出ていない。男女ともに、若い10~20代の売り上げが、まだ伸び切っていない」
ファッション性を強調してきた
ワークマンプラスと
ワークマン女子でも、
拾いきれていない大きなニーズがあるとの課題を持っているようだ。
鈴木氏によれば、作業着目当てではない人がワークマンの店舗へ足を運ぶきっかけは
「雨が降ったからレインウエアが欲しい」
「寒くなってきたから防寒服が欲しい」
といった、あくまで機能性を求めてのもの。
ワークマンも、春・夏物と秋・冬物に分けて、
年に2回ほどしか商品を発表していないケースが多かった。
同社がデータを分析すると、ワークマンプラスやワークマン女子で商品を買った人は、月に一度ほどのペースで店を繰り返し訪れる傾向が高いことが分かってきたという。
新しい商品を求めて来店したにもかかわらず、
半年間も同じ商品が置いてあるので、
2カ月目以降の購買意欲をかき立てられず、
売り逃しが多く発生していた。
そこで打った手がワークマンカラーズだ。
季節性やトレンドの変化を細かく拾い、
デザインだけで売れる商品を集積。
ワークマンの強みである機能性の高さも維持しつつ、
売場の鮮度を重視した店舗とした。
そもそも、ワークマン女子でファッション性の高い商品を展開しても、顧客が女性に偏ってしまう。
そのため、男性も巻き込んだ新たなブランドとして立ち上げる必要があったのが、
ワークマンカラーズのきっかけでもある。
ワークマンカラーズで提案するスタイリングは
大きく4つに分類できる。
トレンドを意識した「life is」と、
ワークマンらしい原色を生かした黒色との組み合わせである「WORKMAN-ship」。
さらに、“タフかわ”として都会的なポジティブなタフさとレディースアイテムを取り入れた「tough」。
1着の服を夫婦でシェア、あるいは仕事着と遊び着の用途をシェア、さらにはSNS投稿でシェアすることを念頭に置いた「Shere,Shere,Shere」の4テーマだ
人気の中国ブランド
「SHEIN」
を徹底分析
ワークマンの商品は、主に中国の上海にある提携工場で生産している。
ワークマンカラーズを新たに展開するに当たって徹底的に現地調査したのが中国の「SHEIN」だ。
同社は低価格のファストファッションとして、
トレンドをいち早く取り入れて商品化することに長けている。
SHEINのリサーチを通し、
ワークマンが9月1日から取り入れたのが「QR(クイックレスポンス)」と呼ぶ、
トレンド商品の販売だ。
従来、ワークマンは価格訴求のため発売の1年前に発注をかけ、
工場の閑散期に安価で大量生産をしてきた。
しかし、
ファッション性も重視されるワークマンカラーズやワークマン女子では、
トレンド商品を基にした「新たな発見」がないと、
顧客の来店・購買頻度が下がってしまう。
そこで、
短納期
かつ
小ロット生産を実践するSHEINに学び、
同レベルの条件で
QR生産できる体制を構築した。
QR生産の導入により、
500着単位での発注、
さらに
4週間の納期で店頭に並べることが可能になった。
小ロット生産の商品でありながら、そのうち約8割が大量生産している商品と同レベルの価格帯に抑えたというから驚きだ。
10年以上にわたって取り引きを継続している海外の主力工場が協力したことも大きい。
工場としては、小ロット・短納期のQR商品が、
10万着単位の量産品に化ける可能性に期待して、条件を受け入れたという。
QR商品は主にワークマンカラーズとワークマン女子で扱う。
しかし、いきなり商品構成がガラっと変わるわけではなく、
全体の10~15%ほどを目安に既存商品と併売する。
肌着・アウトドアでさらなる攻勢
ワークマンカラーズでも
相応の女性客を見込むことから、
両店舗で女性の肌着売り場も充実させる。
ファンケルから「セラミドヴェール」という化粧品に配合されている保湿成分素材の提供を受けた「保湿下着」を新提案。
冬は肌が乾燥して痒みに悩む女性が多いことから、
痒みをケアするメッセージで販売する。
キャミソールが980円、
8分袖ラウンドネックは1500円など、
こちらも低価格に抑えた。
男女合わせて1兆円あるとされる肌着市場で、
5年後に5%のシェア・500億円の売り上げを目指しており、
高機能の商品で攻勢をかける。
アウトドア商品のさらなる拡大として、
ワークマンではゴルフウェアを新展開。
ワークマンカラーズでも売場が設けられた。
ストレッチ性を強調して
長時間の歩行を疲れにくくするだけでなく、
さまざまな機能性の工夫を凝らした。
クラブのスイングができやすいように腰回りをぴったりさせ、
逆に肩と背中の回りはゆとりと
伸縮性を持たせるなど、
随所にワークマンらしさが垣間見える。
ワークマンカラーズは、これまで弱かった若者向けに、
タウンユースを広げるミッションを持って開発された業態だ。
SHEINをベンチマークしたQR方式による生産販売体制とともに、
肌着と
ゴルフウエアという
新たな売り場がどこまで威力を発揮するのか。
今後の展開が楽しみだ。 (長浜惇之介)
ITmedia ビジネスオンライン
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