SIMOSE(広島県大竹市)
緑、水、島の坂茂ワールド
「可動展示室」を目玉に美術館からオーベルジュへ
発注:丸井産業
設計:坂茂建築設計
施工:鹿島、大和建設
宮沢 洋
ライター
緑、水、島の坂茂ワールド | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)
「SIMOSE(シモセ)」は単なる美術館ではない。海を望む広大な敷地にレストランと10棟のヴィラが点在する。中央の水盤には8つの“島”。全てを坂茂氏が設計した。
色とりどりの「可動展示室」越しに、企画展示室や管理棟の方向を見る。西側に立つショッピングセンターの目隠しとして、ミラーガラスのスクリーンを南北方向に立てた。
写真左側の丘に登ると、可動展示室を上から見下ろすこともできる。
施設名の「SIMOSE」は地名ではなく、
発注者である丸井産業の
下瀬ゆみ子
代表の名字からとった
(写真:平井 広行)
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まさに坂茂ワールド──。現地を見ている間中、そんなフレーズが頭から離れなかった。坂茂氏本人も、「提案したことをかなりやり切ることができた」と話す。20年以上、坂氏を取材してきたが、そんな言葉を聞くのは初めてだ。
2023年春、広島県大竹市の瀬戸内海沿いに「SIMOSE(シモセ)」がオープンした。
4.6ヘクタールの敷地に、
美術館と
レストラン、
計10棟のヴィラが分散配置されている〔写真1〕。
敷地全体に庭園がつくり込まれ、
建物は緑の中のオブジェのようだ〔写真2〕。
〔写真1〕海に面した敷地に建物を分散配置
南側上空から見る。
約350mにわたって海と向き合う4.6ヘクタールの細長い敷地。
美術館とレストラン、
計10棟のヴィラが分散配置されている。
手前は「森のヴィラ」。
写真右に見える波のような植栽エリアは、
広島県の管理地だが、
坂氏の助言を参考にデザインされた(写真:平井 広行)
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〔写真2〕緑と空を映すミラーガラスの壁
敷地全体に庭園がつくりこまれた。
ランドスケープデザインは、
団塚栄喜
氏が率いるアースケイプが担当した。
写真の庭は、コレクションであるエミール・ガレの作品をヒントにした「エミール・ガレの庭」。企画展示室や管理棟は、ミラーガラスの壁によって地上レベルからは見えない(写真:平井 広行