京都競馬場スタンド ゴールサイド(京都市)

公園のような巨大競馬場

メインスタンドを建て替え、約3年ぶりにレース開催 発注:日本中央競馬会(JRA) 設計:安井建築設計事務所 施工:大林組

池谷 和浩
 

 

京都市に新名所が誕生した。約3年ぶりにレースを開催した京都競馬場だ。馬のスピード感を表すように水平を強調した多段的なテラスを備え、開放的な施設に生まれ変わった。

京都競馬場は桂川と宇治川に挟まれた位置に立地し、京阪本線淀駅に直結している。写真手前の建物が完成した新スタンド。右奥は改修中の既存スタンドと事務所棟だ。丸い芝生ゾーンには、建て替え前にパドックがあった(写真:生田 将人)

京都競馬場は桂川と宇治川に挟まれた位置に立地し、京阪本線淀駅に直結している。写真手前の建物が完成した新スタンド。右奥は改修中の既存スタンドと事務所棟だ。丸い芝生ゾーンには、建て替え前にパドックがあった(写真:生田 将人)

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 2023年4月にリニューアルオープンし、約3年ぶりにレースを開催した日本中央競馬会(JRA)の京都競馬場(京都市)。最高格付けとなるGI競走の1つ、「天皇賞・春」が行われた4月30日、レース前の競走馬が見られるパドックの周囲は競馬ファンの熱気にあふれていた〔写真1〕。

〔写真1〕パドックにファンが詰めかけた

〔写真1〕パドックにファンが詰めかけた

天皇賞・春が行われた4月30日のパドックの様子。地上だけでなく、周囲を取り巻く2階通路「パドックリング」にもファンが詰めかけた。パドック右側に馬場へ直結する競走馬用通路があり、レース前の競走馬の移動距離は改修前に比べて半分程度になった(写真:三井 貴裕)

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 「本当にタイミングが良かった」

 リニューアルの設計・監理を統括する安井建築設計事務所(大阪市)の橋本和典・京都競馬場整備工事(スタンド工区)設計監理室室長は、ほっとした表情を見せた。

 マスク着用が「個人の判断」とされるなど、新型コロナウイルス感染症対策の位置付けが変わったのは3月のこと。天皇賞・春が行われた日、JRAは入場券を事前予約のみとし、コロナ禍前は全体で10万人以上を収容していた施設を約4万6000人に入場制限した。それでも詰めかけたファンの盛り上がりは「コロナ明け」を実感させる出来事だった。

開設100周年記念事業の一環

 約60万m2という広大な敷地面積を有する京都競馬場は、25年に開設100周年となる。これに合わせ、JRAは大幅リニューアルを行う記念事業に17年から着手している。メインスタンド(ゴールサイドスタンド)の建て替え、サブスタンド(ステーションサイド)の改修、馬場の改良、厩舎の建て替えなど、幅広い内容だ。

 4月のレース開催は、ランドスケープを含むメインスタンドの工区の工事完了、馬場の改良完了などを受けたものだ。メインスタンドは23年3月に竣工した。JRAは今後、開催を続けながらサブスタンドの改修を進め、24年4月に完了させる。

 スタンド工区の基本設計、実施設計、監理を担当したのが、公募型プロポーザル方式で選定された前出の安井建築設計事務所だ。京都競馬場のスタンド見直しは、今回の2棟を合わせると開設以来5棟目。以前の3棟を含め、すべて同社が設計を担ってきた。施工を担当しているのは大林組だ。この決定は一般競争入札によるもので、入札価格は約658億円となっている

 

 

公園のような巨大競馬場 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)