地震の揺れを最大半減する制振システム、鹿島が大阪の39階建てタワマンに初導入

星野 拓美

 

日経クロステック/日経アーキテクチュア

 

 

鹿島は2023年6月6日、地震時に超高層ビルの揺れ(加速度)を最大で半分程度に抑えられる制振システム「KaCLASS(カクラス、Kajima Control Layer Advanced Structural System)」を開発したと発表した。阪急阪神不動産(大阪市)が大阪市で開発している、高さが約144mのタワーマンション「ジオタワー大阪十三(じゅうそう)」に初導入する。

 マンションは地上39階建てで、延べ面積は約8万4490m2。総戸数は712戸と、阪急阪神不動産の単独物件では過去最大の住戸数になる。26年1月の竣工を予定している。構造は鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造。施工は鹿島・高松建設JVが手掛ける。

阪急阪神不動産が大阪市淀川区で開発しているタワーマンション「ジオタワー大阪十三」。敷地は阪急電鉄十三駅から徒歩3分の場所だ。2022年8月に着工した(出所:阪急阪神不動産)

阪急阪神不動産が大阪市淀川区で開発しているタワーマンション「ジオタワー大阪十三」。敷地は阪急電鉄十三駅から徒歩3分の場所だ。2022年8月に着工した(出所:阪急阪神不動産)

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鹿島は開発した制振システム「KaCLASS(カクラス)」をジオタワー大阪十三に初導入する。免震支承や減衰装置などで構成する制御層は、29階と30階の間に設ける。制御層の設置位置は外から見える(出所:阪急阪神不動産)

鹿島は開発した制振システム「KaCLASS(カクラス)」をジオタワー大阪十三に初導入する。免震支承や減衰装置などで構成する制御層は、29階と30階の間に設ける。制御層の設置位置は外から見える(出所:阪急阪神不動産)

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 超高層ビルを上部躯体(くたい)と下部躯体に分割し、免震支承や減衰装置などで構成する制御層で躯体を連結する。地震時には上下躯体の間に設ける制御層が変形することで、上部躯体には免震効果が、下部躯体にはTMD(チューンド・マス・ダンパー)による制振効果が得られる。TMDは重りの揺れによって、ビル全体の振動を相殺する仕組みだ。カクラスでは、上部躯体が重りの役割を果たす。

 制御層は、上部躯体の重さが全体重量の30%程度になるような位置に設ける。鹿島建築設計本部の栗野治彦プリンシパルエンジニアは、「制御層の位置が高過ぎても低過ぎても制振効果が得られない。上部躯体と下部躯体の周期が同調する位置に設ける必要がある」と説明する。ジオタワー大阪十三の場合は、高さが約100mの位置にある29階と30階の間に制御層を設ける。エレベーターは制御層の変形に追従するものを採用し、躯体を直通する。

カクラスの構造原理。地震が発生すると制御層より上部の躯体には免震効果が、下部の躯体には制振効果が得られる(出所:鹿島)

カクラスの構造原理。地震が発生すると制御層より上部の躯体には免震効果が、下部の躯体には制振効果が得られる(出所:鹿島

 

 

 

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