ニコン「Z 8」は“今の最高峰”といっていいかもしれない

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50mm f/1.8のレンズを装着したニコン「Z 8」。Nikon Zの第一期集大成みたいなカメラかも。5月26日発売

 

 

 ニコンから超高性能な上位機が登場した。5月26日に発売した「Z 8」だ。  いざ使ってみると、想像以上に良いのである。 

 

【画像】最近の他社の35mmフルサイズセンサー機と「ローリングシャッター歪み」比較。Z 8だけがほぼ歪んでない  

 

 

 

スペック的には2年前に登場したフラッグシップ機「Z 9」をほぼ踏襲している。

それを小型化したモデル、と捉えられがちで、

確かに性能的にはその通りなのだがいざ使ってみるとZ 9とは違うカメラだと感じるのだ。  

 

 

 

型番的にはデジタル一眼レフでいう「D800」や「D850」のミラーレス版という位置づけになる。  一眼レフ時代、フラッグシップ機のD6は縦位置グリップがついていて重くてゴツくて画素数は少ないのだけど高速連写が可能でスポーツや過酷な現場が主戦場だった。対するD850は縦位置グリップはなく連写性能もそこまで高くなかったが、高画素で画質重視モデルといった立ち位置だった。  

 

 

Z 9とZ 8の関係はちょっと違う。同じセンサーを用いており、連写性能も変わらない。違うのは縦位置グリップがないことだ。  

 

 

 

でもいざ使って見ると確かにD850的ポジションに感じる。  その辺が面白い。  さらにいえば、Zシリーズの第一期完成形ではないかという気すらするのだ。メカシャッターレスで超高速AFと連写が可能というミラーレス一眼でしかあり得ない性能をコンパクトなボディに凝縮しつつ、ニコンが培ってきた伝統的なカメラとしての使い勝手やテイストは継承されているのだ。

メカシャッターレスの威力を見よ

 基本スペックはZ 9に準拠、で済ませてはいけないので(Z 9のスペックを頭に入れてる人なんて多くないだろうし)簡単に説明する。  イメージセンサーは積層型の裏面照射センサーで4571万画素。もちろん像面位相差AF搭載。  一番の特徴は「メカシャッターを持たない」こと。電子シャッターのみだ。だから最高シャッタースピードも1/32000秒と速い。  電子シャッターで気になるのが「ローリングシャッター歪み」。これは現行のCMOSセンサーの宿命でもあり、高速に動く被写体を撮るとフレームの一番上のラインと一番下のラインのタイムラグによって斜めに歪んで写るという現象だ。メカシャッターがあればそれでかなり防げるのだが、電子シャッターのみとなるとこの歪みをどうするのか気になる。Z 9とZ 8はセンサーからの信号の読み出し速度を上げることで軽減してるのだけど、実際にどのくらい軽減できてるのか気になるよね。  というわけで、最近の他社の35mmフルサイズセンサー機と比べてみた。被写体はポータブルな扇風機だ。  本当は各社の積層型センサーを搭載したフラッグシップ機同士で比べるべきなのだけど(ソニーならα1やα9II、キヤノンならEOS R3)、同等条件で比較できる作例を用意できなかったのでご勘弁。  まあ、センサーからの読み出し速度が速くない機種、そこそこ速い機種、すごく速い機種の3つで比べてみたと思ってください。  Z 8、すごいでしょ。高速に回転する扇風機を撮っても、ゼロではないにしろほとんど歪みを感じないのだ。  ちなみに走る列車からすれ違う反対方向の列車を撮っみた。互いに反対方向に走ってるから相対速度はそれなりになってるわけで、それでこの歪みの少なさは特筆すべきだ。  読み出しの構造に工夫したイメージセンサー+メカシャッターレスのおかげで、物理的な振動がない、音がしない、撮影の瞬間に画面がブラックアウトしない、レスポンスが速いなどなどミラーレス一眼ならではの快適な撮影ができる。これは素晴らしい。  さすがに無音では撮影のリズムがつきづらい、撮れたかどうか分かりにくいってことで電子音(これもシャッタースピードが遅くなると音も連動して変わる)が鳴る。  その音には好みもあるだろうけど、嫌いじゃない。  ただ、Z 9と違ってシャッター音がなるスピーカーの位置が右肩になったのは残念。ファインダーをのぞいて撮影するとシャッター音が「右耳にだけ聞こえる」のが不自然に感じるのだ。  電子シャッターのみとなると期待したいのは連写。  Z 9と同じくZ 8には2つの連写モードがある。1つは「普通の連写」で秒20コマまで。普通の連写なのでAF/AE追従でRAWでも撮れる。  もう1つは「超高速連写」(ハイスピードキャプチャー)でこちらは連写速度が上がる代わりに条件が付く。  C30は秒30コマだが画質はJPEGのNORMALのみ。  C60は秒60コマだが画像サイズがDXにクロップされる(つまりAPS-Cサイズになる)。  C120は秒120コマと超高速だが1100万画素相当のサイズとなる。  ハイスピードキャプチャー時は「プリ連写」を使えるというメリットもある。シャッターを押しきる寸前の画像(最長で1秒分)を遡ってキャプチャしてくれるものだ。  ISO感度はISO64からISO25600で、拡張ISO感度でISO102400まで上げられる。  画素数が多いこともあって極端に高感度に強いわけではないが、実用的には十分だ

 

 

 

 

ハイエンド機ならではの快適な操作感がいい

 続いてボディの話。  正面から見ると、マウントの向かって左下にFn1とFn2キーがあるのが特徴。また、メカシャッターレスのカメラだが、別途「センサーシールド」が用意されており、電源オフ時はセンサーを保護するようになっている。この機能、デフォルトではオフなので忘れずにオンにしたい。屋外でレンズ交換するときの安心感が違う。  ボディの向かって右下隅にあるボタンはフォーカスモードボタン。これを押しながら後ダイヤルでフォーカスモード、前ダイヤルでフォーカスエリアを指定する。  左側面には一番上に10ピンターミナル(リモートコントローラーなどをつなぐ)、HDMI、さらにUSB-C端子が2つある。  USB端子は1つはデータ転送用、もう1つは充電/給電用(USB PDに対応)だ。  右側面はメディアスロット。Z 9はType BのCFexpressカードスロット×2(XQDカードでも可)だったが、Z 8はCFexpressカード(Type B)とSDカード(UHS-II規格のSDXCカードに対応)のデュアルになった。  CFexpressカードは非常に高速だが高価でもあり、8KやRAW動画を撮らないのならSDXCカードの方がリーズナブルで入手しやすいのでありがたい。  続いて上面。電源スイッチの位置やシャッターの感触はニコンの伝統。右肩には液晶パネルがあるだけで、撮影モードダイヤルはない。左肩のMODEボタン+ダイヤルで行う。ニコンのハイエンド機の伝統だ。  今、多くのハイエンド機は細かいセッティングを登録しておける複数のカスタムポジションを持っているが、モードダイヤルがないZ 8はどうしてるか、というと、別途SHOOT AからDまで4種類の撮影設定を登録でき、その時の撮影モードがなんだろうとさっと切り替えられるのだ。  上面液晶パネルに「B」と書いてあるのは「SHOOT B」のことだ。  Z 8は極めて機能が多く、撮りたいシーンに応じて必要なセッティングが変わってくるので、自分で細かくセットしておくとすごく使いやすくなるし、瞬時に必要な設定に持って行ける。  次は背面。円形のアイピースはニコンのハイエンド機の伝統だ。  背面モニターは縦横両方に動くチルト式。バリアングルほどの自由度はないが(自撮りポジションにはできないし)、縦横どちらとも光軸を保ったまま動かせるし、何よりワンアクションで好きなアングルに設定できるのがいい

 

 

 

 

飛行機モードでプロペラ機を撮ってみた

 では撮ってみよう。  電源を入れて立ち上がるまでの一瞬が速くて気持ちいい。  AFはZ 9と同じく被写体検出で、9種類の被写体を自動的に検出して追尾してくれる他、被写体が決まってるときは人物・動物・乗り物・飛行機から固定することもできる。  人物は人がかなり小さく写る状況でも検出するという。  そこで24-120mmの広角端でちょっと遠くから狙ってみた。  これだけではあんまりなのでもうちょっとポートレートっぽい構図ということで、50mm f/1.8を装着して手前に花を入れてポートレートっぽくしてみた。  今回、Z 8で新たに搭載された機能が「美肌」。強さを3段階で変えられる。  その高価をチェックすべく、オフと強の2つを並べてみた。「強」にしても不自然にならない程度に肌が滑らかになっているのが分かる。  次は動物AF。猫の瞳もしっかり捉えてくれた。  被写体が少し遠かったので、DXモードにしてAPS-Cサイズにクロップしての撮影。モニターを開き、猫目線にしての撮影だ。4500万画素あるのでAPS-Cサイズにクロップしても十分実用的な画像サイズを維持してくれる。  さてZ 8でちょっと強化された点としては飛行機モードがある。Z 9では「乗り物」に含まれていたが、「飛行機」が独立した感じだ。飛行機が遠いと全体を、近いとコックピットを捕まえてくれる。そこで100-400mmを手に調布飛行場前の公園へ行ってみた。  そして連写であれこれ撮影したのだが、離陸する瞬間を秒20コマの連写で追ってみたものを飛行機作例としよう。ローリングシャッター歪みが出やすいプロペラ機を正面から撮影するというちょっと意地悪な撮影ではあるのだが、見事な結果に。  これはすごいわ。  ではそれら以外の作例もちょろっと。  いつものガスタンクといつもの団地夜景。  続いて、24-120mmで撮影した街のスナップ。こちらは1点AFにし、コントローラでAFポイントを指定して撮影している。  最後に色のある作例もってことで、祖師谷大蔵駅前のウルトラマン像を。  今回、撮影はほぼAF-Cで被写体検出使いまくりで撮影したのだけど、ストレスなく快適でありました。  動画は最高で8K/30pで4Kでは120pの高速フレームレートにまで対応。RAW動画フォーマットの場合は8.3Kで60pの内部記録にも対応している。

 

 

 

 

バッテリーの持ちは予想以上だった

 最後にバッテリーの話。  Z 9は縦位置グリップ内に大きなバッテリーを積んでるので撮影可能枚数も多いが、Z 8はそれがない。使用するバッテリーはZ 6やZ 7シリーズ、D850などと同じものだ。  公称では撮影可能コマ数が約340コマ(EVFでパワーセーブONで撮影した時)とハイエンド機としては心許ない。  でもいざ使ってみると、予想以上に持つのだ。  カタログ値はCIPAによって定められた測定法によるものなので、実際には撮り方によって大きく変わる。連写での撮影が多いなら撮影可能枚数はぐっと増えるし、1枚ずつ設定を変えながらじっくり撮ったりマメに再生してチェックしてたりすると減る。  だから人それぞれなのだけど、単写と連写を半々で移動しながらあれこれ撮りまくるって感じだと、700枚は余裕で行けそうな感じで、連写メインで使うなら1000枚以上いくと思う。  カタログスペックで「バッテリーが持たなそうだ」と判断しちゃうのは早計というものだ。  カタログにも連続撮影(つまり連写)時は約2280コマと書いてあるし。  さらにUSB PD対応の電源(モバイルバッテリーを含む)をつなげば充電のみならず給電しながらの撮影もできる。  カタログスペックを見てバッテリーに不安を感じる人もいるだろうが、いざ使ってみるとそんなことなさそうだよ、という話だ。  Z 9はちょっとゴツくて望んでいたカメラじゃない、でもその高性能には心ひかれる、という人はZ 8一択といっていいかもしれない。大きさや重さのバランス、レスポンスの良さ、ブラックアウトフリーのファインダー、AFの賢さや速さ、その他の性能、画質といいったカメラとしての総合力、そしてメカシャッターレスという先進性も加味すると、現状、最高峰といっていいんじゃなかろうか。  メカシャッターじゃないと撮ってる気がしないとか、人によってはいろいろとあるだろうが、わたしはそういうこだわりがゼロなので、素直にZ 8がものすごく快適だったのである。

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