森」がコンセプトの公立図書館、室内に採用した幾何学模様は何?
三上 美絵
Q.「森」がコンセプトの公立図書館、室内に採用した幾何学模様は何? | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)
東京都中央区は2022年12月、東京駅から東に1kmの場所に斬新な形の図書館をオープンしました。
郷土資料館を併設した公共施設
「本の森ちゅうおう」
です。
区の八丁堀駅周辺施設再編計画の一環で、それまでは別々だった図書館と郷土資料館を移転・併設しました。
建物は地上6階建て。全面ガラス張りの外壁の位置は各階で異なり、壁面から突き出たスラブは各階で形状が異なります。
閲覧室からは、建物の北側に設けた人工地盤の「つどいの森」を見渡せ、緑を身近に感じられる空間になっています。
設計を手掛けたのは、公募型プロポーザルで選定された
類設計室。
同社の佐藤賢志計画設計部長は、
「区が定めた愛称『本の森』にヒントを得て、森林生態系というコンセプトを掲げた」と説明します。
森の階層構造に倣い、地上6階のフロアを下から、林床、草本層、低木層、亜高木層、高木層、林冠と銘打ち、照明の色温度や床の仕上げを変えて、居場所が直感的に分かるデザインとしました。
室内についても、自然をモチーフにした幾何学模様を取り入れています。
それは次の3つのうちどれでしょうか
正解はこちら
3.葉脈に似た「ボロノイ図」
(写真:吉田 誠)
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室内に関しては、葉脈などに見られる幾何学模様の「ボロノイ図」を参考にしたそうです。上の写真は、児童書を中心とした2階のこどもコーナーです。天井の照明をボロノイ図のように配置しました。
ボロノイ図とは、平面上の複数の点に対して、ある点がどの点に最も近いかに着目し、両点の距離を二等分する線を用いて構成する形です。蜂の巣やトンボの翅脈(しみゃく)などにもボロノイ構造は見られます。
不整形なボロノイ図を室内デザインに取り入れたことで、テラスや窓際に複雑な空間が生まれました。床のフローリング割りなどにもボロノイ図を用いています。
(写真:吉田 誠)
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多層に分かれているフロアについては、回遊性を重視しました。つどいの森に面して設けた階段を、フロアごとに別の位置に配置。利用者が各フロアの書架の間を通って、上下階を移動するようにしました。
「多様な場所を回遊しながら本や地域の人と出会うことで、探求意欲を高めてほしい」と、類設計室の佐藤部長は語ります。
多層のフロアは目的や年齢の異なる利用者に応じて、緩やかにゾーニング。1階は広いエントランスホールと多目的ホール、郷土資料展示室で構成し、多くの利用者に開放しています。
2階の東側は、親子連れの利用を想定したこどもコーナー。上階の閲覧室に音が漏れないよう、階段室をガラス建具で区画するなどの配慮をしています。
3階のTeensコーナーには、会話ができるグループ学習室を配置。4階と5階には、専門性の高い書架を置き、パソコンを使える閲覧席を設けました。6階は、都心の風景を眺めながら憩える屋上庭園としています。
下の写真は、屋上庭園と展望台から成る6階です。誰でも自由に立ち寄れます。月に1回、星の観望会を開催しています。
(写真:吉田 誠)
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この施設では、プロポーザルの時点から「共創」という理念を掲げ、多様化する市民の声をワークショップで取り入れました。
例えば、「寝転んで本が読める場所」という希望に対しては、じゅうたんを用意。「おしゃべりしながら学習したい」という要望には、グループ学習室などを防音区画とすることで対応しました。
こうした取り組みが奏功し、庭を望む閲覧席は連日ほぼ満席です。中央区によると、1日の来場者は平均2000人で、移転前から約3倍に増えたそうです。
写真で見る「本の森ちゅうおう」
(写真:吉田 誠)
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(写真:吉田 誠)
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(写真:吉田 誠)
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(写真:吉田 誠)
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(写真:吉田 誠)
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(写真:吉田 誠)
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(写真:吉田 誠