ウクライナ選手がサバレンカとの握手拒否で会場からブーイング!「正直驚いたし、恥ずべきこと」<SMASH>

THE DIGEST

開戦以降、ロシアやベラルーシ選手との握手拒否を一貫してきたコスチュク(右下)は、今大会でもサバレンカ(中)との握手を拒んだ。(C)Getty Images

 

 

 

 

 

 豪快にウイナーを叩き込んだ勝者は、両手を掲げた後にネットへ歩みより、そして敗者は真っすぐに、主審の方へと進んでいった——。

 

 

 

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 勝者は、ベラルーシのアリーナ・サバレンカ

 

敗者は、ウクライナのマルタ・コスチュク。

  コスチュクはサバレンカとの握手を拒否して

ベンチに戻り、

その間、サバレンカは観客に挨拶すべくコートの中央へと進んだ。

  観客席の一部からは、ブーイングがコートへと向けられる。

 

そのブーイングをサバレンカは、

「自分に向けられた」と思った。

 

だが、コスチュクがコートを去る際にブーイングが一層大きくなったため、矛先は対戦相手に向けられていると知る。  

 

改めて四方の客席に向け深く頭を下げたサバレンカは、

「感情的に難しい試合だった。ブーイングは自分に向けられたと思ったので、混乱したし、そうではないと知り少し驚きもした」とコート上で語った。

 

 

  世界39位のコスチュクは、昨年2月末の開戦以降、反ロシア・ベラルーシの旗幟を最も鮮明にしてきた一人。

ロシアやベラルーシの選手との握手拒否も、これまで一貫してきたことだ。  

 

 

 

世界2位のサバレンカも、

コスチュクのこれまでの姿勢を知る。

試合後の会見でも改めて、

「彼女が私と握手しないことは、想定内だった」と穏やかに語った。

 

 

  そのサバレンカの声と表情に緊張が走ったのが、ウクライナ人記者から、次のような質問が向けられた時である。 

 

  「あなたは今大会後に、世界1位になる可能性があります。世界1位は人々のお手本であり、世界に正しいメッセージを送る責務があると思います。 

 あなたは戦争の話題になると、ウクライナ人選手たちがあなたを“憎んでいる”のだと言い、問題をすり替えてきました。

 

でもウクライナの選手たちが知りたいのは、

あなた自身の戦争に対する意見です。

はぐらかすことなく、あなたの意志を聞かせてください」  

高ぶる思いを自制しつつ向けられたこの問いに、

サバレンカは「私は、彼女たちが私を憎んでいるとは言っていない」と前置きして、こう続けた。 

「この世の中に…ロシアやベラルーシにも、戦争を望んでいる人なんていない。なぜ戦争に賛同できる?まともな人間なら、決してそんなことはしない。  こんな当然のことを、声を大にして毎回言う必要があるの?   

もし私が言うことで戦争が止まるなら、もちろん言う。

でも残念だけれど、事は私の手にあまる。

これは私たちだけではなく、ウクライナが関わることでもあるのだから」

 

 

 

コスチュクの会見が行なわれたのは、このサバレンカの会見のおおよそ30分後。

 

 

 

その席で、サバレンカのコメントを記者から伝え聞いたコスチュクは、

怪訝そうな表情を浮かべて言った。 

 

「彼女はこの大会の後、世界1位になるかもしれない。世界で、最も広く知られているスポーツの1位に。  

ロシアの国内では今でも、80%以上の人が戦争を支援している。

アメリカを敵視している人もいる。

でもそんな人たちの大半は、アメリカに行ったことがない。

その国に住んでいる人たちを知らない。  

 

アリーナ(・サバレンカ)は世界中を旅し、多くの人たちに情報を伝える術も持っている。

『NYタイムズ』でも『ワシントンポスト』でも、

CNNでもBBCでも…

何百万、何千万の人が目にするプラットフォームで発信することができる。

 

なのに彼女は、今現在起きている世界で最も重大な事態について、

自分の意見を述べようとしない。

 

だから私は、彼女を“尊敬できない”と言ってきた。

 

“憎んでいる”とは言ったことがない。ただ“尊敬できない”だけ」 

 

 

   ブーイングした観客に関しては、

「正直驚いたし、恥ずべきことだと思う」と明言。

ただ「それは私が批評すべきことではない」とし、「10年後や、戦争が終わった後にこの映像を見たら、彼らは自分がやったことを申し訳なく思うんじゃないかしら」と語るにとどめた。  

 

これまで、ソーシャルメディアなどでも「ひどいメッセージを山ほど受け取ってきた」とコスチュクは言う。自身の行為や発言が、賛否両論を巻き起こすのは百も承知。それでも、継続的な意思表明が世界を変えるという信念を、彼女が変えることはない。 

 

現地取材・文●内田暁

 

 

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