芝の根付きが十分でなかったことが一因
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千曲川堤防の覆土が6地区で崩落、「粘り強い河川堤防」の導入区間
青野 昌行
日経クロステック/日経コンストラクション
2022年9月以降に完成したばかりの千曲川の堤防6地区で、川裏側の覆土が大雨によって崩落した。
芝の根付きが十分でなかったことが一因とみられる。
崩落した箇所は、国土交通省が技術的な検討を進めている「粘り強い河川堤防」を試行導入した区間だ。堤防を管理する同省千曲川河川事務所は「『粘り強い堤防』と今回の崩落は関係ない」とみている。
2023年5月7~8日の大雨で被災した長野市赤沼地区の堤防の川裏側。5月8日撮影(写真:国土交通省千曲川河川事務所)
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同事務所が23年5月8日に、厚さ30cmの粘性土の覆土が崩落しているのを確認した。5月12日に崩落した土砂を取り除き、表面に保護のためのブルーシートを張った。気象庁のデータによると、崩落箇所のある長野市では5月7日から8日までの2日間で降水量79mmを記録した。
覆土が崩落した箇所はブルーシートで保護した。5月12日撮影(写真:国土交通省千曲川河川事務所)
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1地区で複数箇所が崩落しているケースもある。全体の崩落箇所数や面積などの被災状況について、同事務所が調査を進めている。堤防本体は正常なので、堤防としての機能に問題はないという。
19年10月の東日本豪雨で堤防決壊など多大な被害が出た千曲川では、緊急治水対策プロジェクトとして堤防の整備や強化などを進めている。そのうち崩落箇所を含む約8kmの区間では、粘り強い堤防の整備が進む。
被災箇所の位置図(出所:国土交通省千曲川河川事務所)
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粘り強い堤防とは、越水しても決壊しにくい堤防のことだ。
盛り土で造られた堤防は通常、越水が起こると川裏側の堤体が削られ、一気に決壊へとつながりやすい。粘り強い堤防では、コンクリートブロックで川裏側を被覆するなどして、越水による堤体浸食を防ぐ。
「表面被覆型」の他、鋼矢板を地盤に打ち込んで堤体を支える「自立型」などがある。まだ技術的な手法が確立されていないので、国交省が現在、有識者会議を開いて検討を進めている。
千曲川で整備している粘り強い堤防は、国交省が21年度から全国15河川で試行している「パイロット施工」の1つだ。15河川はいずれも、表面被覆型の堤防を採用している
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