超高層の避難用バルコニーから転落死
「高さ72㎝の柵は建基法違反」と東京地裁
富田 裕弁護士
超高層ホテルから宿泊客が転落死した事故を巡り、施設側に約1800万円の損害賠償を命じる判決が下った。バルコニーの柵について建築基準法を厳しく解釈したもので、他の施設にも影響する可能性がある。(日経アーキテクチュア)
大阪市に立つ地上30階建てのホテルで、22階から宿泊客が地面に転落した。被害者は早朝、避難に使うバルコニーに出て、そこから落ちたらしい。バルコニーには柵があったが、高さ72cmしかなく、建築基準法違反の有無が争点となった(関連記事:日経アーキテクチュア2023年3月23日号ニュースクローズアップ「転落死を巡りアパホテル敗訴」)
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今回取り上げるのは、超高層のホテルから宿泊客が転落死した事故を巡り、裁判所がホテル側の工作物責任を認定した裁判だ。概要から見ていこう。
問題のホテルは大阪市西区に立つ地上30階建てで、2007年に建築確認を得て建設された。被害者となった事故当時46歳の男性は、仕事で大阪に出張中の19年7月31日、このホテルにチェックインした。泊まった部屋は22階の1室だった。
事故があったのは一夜明けた8月1日午前6時22分ごろ。被害者はホテルの前の歩道に転落、出血性ショックなどにより即死した。
この転落死事故を巡り、遺族は21年、ホテル運営会社を相手取って東京地方裁判所へ提訴した。事故は被告の「設置または保存の瑕疵(かし)」によって起こったもので、民法717条が規定する工作物責任があると主張、総額約1億3200万円の損害賠償を請求する内容だ。
請求の内訳は被害者の年収から算出した逸失利益約9000万円、慰謝料3000万円、弁護士費用1200万円だ〔図1〕。
〔図1〕1億円超の賠償を請求された
事件の概要。被害者は年収約1000万円で、東京地裁は逸失利益を約8700万円と推計。その上で、被害者の過失分を相殺して賠償額を決めた(資料:判決文を基に日経アーキテクチュア
超高層の避難用バルコニーから転落死 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)