強盗に遭い、命の危機も経験したけれど

世界を歩き続けることは「瞑想」だった──7年間の冒険で得た学びとは

 

ガーディアン(英国)

Text by Simon Hattenstone

 

 

トム・ターシッチは行き詰まっていた。だがある日、高校でクラスメイトたちと観た、映画『いまを生きる』(1989)が運命を変えた。

ロビン・ウィリアムズ扮する英語教師ジョン・キーティングが、文学への愛を通じて生徒らに大切な気づきを授ける作品だ。キーティングの「今日を生きろ(カルペ・ディエム)。毎日を楽しみ、君らの人生をかけがえのないものにしろ」というメッセージが、劇中の生徒らに多大な影響を与える。そしてターシッチもまた、非常に刺激を受けた。

彼は、この映画を繰り返し観た。今日を生きて、人生をかけがえのないものにするにはどうすることがベストなのかと自問した。そうして、「自分の未来はなるようにしかならないのではない。自分で切り拓くことができるもの」という思いに行き着いたのだ

 

 

それからは、ひたすら行動に移した。高校の水泳チーム代表として優勝し、舞台に出演し、中断していたテニスを始めて校内チャンピオンとなった。その間ずっと、亡くなった友人のアン・マリー・リンチのイニシャル「AML」と掘られた青いブレスレットを身につけていた。

ターシッチが本当に受け身な自分の殻を破った瞬間は、ガールフレンドのブリトニーと(ぎこちない)デートを3回したあと、初めてキスしたときに訪れた。そのキスは、一種の啓示だった。

「自分の心のなかに、まるで宇宙が誕生したかのような感覚。突然、ありとあらゆる可能性が広がっていくのが見えた。自分の人生を決めるのは、僕自身の行動だってことが、やっとわかったんだ」

こうしてターシッチは、人口約1万5000人の小さな町ハドン・タウンシップを出て、外の世界を自分の目で見て「今日を生きる」のだと心に決めた

 

 

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