樹脂製の水道管からガソリン浸入、管種の選定ミスか
佐藤 斗夢日経クロステック/日経コンストラクション
ガソリンが浸入したのは、給油所前の歩道の地下約1mに敷設された口径50mmのPE製配水管だ。
左は給油所前の歩道を掘削する様子、右は現場に敷設された口径50mmのポリエチレン管(写真:室蘭市)
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給油所地下の貯蔵タンクに接続する地下配管が、何らかの理由で破損してガソリンが地中に漏出。
地下水を伝ってPE管の内部に浸入したと考えられる。
給油所を所有するENEOSの推測によると、地中へのガソリンの漏出量は2100リットルに達する。
22年6月中旬に水道水から油臭がすると通報を受けた市が調査し、漏出が明らかになった。ガソリンの漏出が始まった時期は分かっていない。
市は事故を受け、給油所の周囲のPE管を延長180mにわたり口径75mmのダクタイル鋳鉄管に取り換える。
PE管はガソリンなど有機溶剤の浸透に弱いからだ。
工期は23年3~5月、
工費は約2000万円。
事故原因の解明後、ガソリンが漏出した給油所前のPE管を撤去する。
対策工事の概要。緑色の線の箇所を、PE管からダクタイル鋳鉄管に取り換える(出所:室蘭市)
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「ガソリン漏出の恐れがある給油所近くでは配水管の敷設を避けた方がいい。配水管の種類を変えても、地震による破損などで浸入を起こす恐れがある」。
水道工事に詳しいある建設コンサルタントは、こう指摘する。
事故があった配水管は、給油所が建設された後の1992年に整備した。
ダクタイル鋳鉄管の採用や、
給油所を避けたルートでの敷設といった対策
は取っていなかった。
給油所周辺を含む口径50mm以下の配水管はPE管、それを超える口径はダクタイル鋳鉄管を採用した。
当時の詳細な状況は、関係した市職員が退職するなどして不明だ。
市水道部料金課の担当者は、
「配水管は給油所の敷地内を通らないので、ガソリンの浸透はあり得ないと思い込んだのではないか」と推測する。
地中の有害物質対策の判断は、自治体に委ねられている。
例えば、水道施設の技術基準を定める省令では、自治体は管を敷設する場所によって適切な管の種類を選ぶと規定しているだけだ。
日本水道協会の設計指針でも、
土壌汚染などの危険性がある場所でPE管の使用を控えるよう求める一方で、
どこが危険な場所に当たるのか具体的に示していない
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