吊り橋の補修工事中に橋脚倒れ2人けが、仮設計画に問題か

橋本 剛志

 

日経クロステック/日経コンストラクション

 

 

 

 2023年2月3日午後2時半ごろ、和歌山県白浜町を流れる日置(ひき)川に架かる吊り橋が補修工事中に崩落した。橋脚が吊り足場のワイヤに引っ張られるようにして転倒。作業員ら2人が巻き込まれ、骨を折るなどの重傷を負った。

日置川の上流側から見た小房橋の崩壊状況。未撤去の木製床版と仮設の吊り足場が落下した(写真:白浜町)

日置川の上流側から見た小房橋の崩壊状況。未撤去の木製床版と仮設の吊り足場が落下した(写真:白浜町)

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南側のコンクリート製橋脚と鋼製塔柱が川に向かって倒れた(写真:白浜町)

南側のコンクリート製橋脚と鋼製塔柱が川に向かって倒れた(写真:白浜町)

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 崩落したのは1960年に完成した全長119.7m、幅1.5mの人道橋「小房(おぶさ)橋」。管理する町が2017年度に5年に1回の定期点検を実施したところ、木製の床版や桁の老朽化が判明した。全体の健全度は早期に修繕する必要のある「III」だった。町はその後、主ケーブルの詳細調査を実施し、22年に主ケーブルや床版を取り換える補修工事を発注した。

小房橋は日置川を南北方向に横断する(出所:白浜町)

小房橋は日置川を南北方向に横断する(出所:白浜町)

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小房橋を南岸から補修工事の着工前に撮影した様子(写真:白浜町)

小房橋を南岸から補修工事の着工前に撮影した様子(写真:白浜町)

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小房橋を北岸から崩落前に撮影した様子。奥の橋脚と塔柱が倒れた。床版の下に仮設の吊り足場を設置していた(写真:白浜町)

小房橋を北岸から崩落前に撮影した様子。奥の橋脚と塔柱が倒れた。床版の下に仮設の吊り足場を設置していた(写真:白浜町)

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 事故当日は、補修工事を受注した日置川開発(白浜町)が北から南へ順に床版を撤去していた。残り約9mまで進んだところ、南側のコンクリート製橋脚が、その上の鋼製塔柱とともに川に向かって倒れた。撤去作業に従事していた2次下請け会社の49歳男性と、床版の下に設けた仮設の吊り足場を通行していた65歳男性が橋から5~6m下にある河原に落下した。65歳男性は工事とは別の測量業務に従事していた。

小房橋の側面図。仮設の吊り足場などはイメージを図示したもの(出所:白浜町)

小房橋の側面図。仮設の吊り足場などはイメージを図示したもの(出所:白浜町)

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小房橋の崩落箇所と作業員など2人が巻き込まれた状況(出所:白浜町)

小房橋の崩落箇所と作業員など2人が巻き込まれた状況(出所:白浜町)

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 橋脚は直接基礎で、根元から倒れていた。これまでの定期点検で橋脚に対する部材単位の健全度はII。予防保全が推奨されるが機能に支障のないレベルだった。

 吊り足場は、両岸の橋脚頂部付近にワイヤを張った構造だ。転倒の状況から、橋脚頂部がワイヤによって河川側に引っ張られる状態だったとみられる。仮設計画で橋脚の転倒に対する安全性などを照査していたかどうか、町は「現在、調査中」として明らかにしていない。

 井澗誠町長は23年2月7日に開いた記者会見で「事故原因の究明と再発防止の徹底に努めたい」と述べた。

 国土交通省がまとめた「道路メンテナンス年報」によると、21年度末時点でIII判定の橋は全国で6万748カ所ある。そのうち自治体が管理する橋は5万4045カ所。緊急に対処が必要なIVと判定された自治体管理の橋は627カ所ある

 

 

 

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