ここから先は、「北欧諸国がそれぞれ違っている点」を挙げていきます。
面積
右記出典をもとによしてるが作成:外務省
地図で見るとそうでもないですが、グラフにしてみると違いがよくわかりますね。
デンマークってこんなに小さいんだ。
人口
右記出典をもとによしてるが作成:外務省
アイスランドが極端に少なく(日本の地方都市レベルですね)、スウェーデンが飛び抜けて多い(それでも日本の10分の1以下)。他の3国は似ているけど、日本の大きな県程度。
なので北欧諸国のうち、3国は似たような人口だけど、他の2国はかなり違っていますね。
面積のグラフとあわせると、デンマークの人口密度は他国に比べてかなり高いということもわかります
一人当たりGDP
右記出典をもとによしてるが作成:世界の一人当たりの名目GDP(USドル)ランキング - 世界経済のネタ帳、IMF World Economic Outlook Database List, information about Gross Domestic Product (GDP)(2017年10月)
一人当たりGDPは、北欧5か国すべてが世界ランキングの上位に位置しており、3国はベストテン入りまでしています。
(なお、日本は38,883USドルで22位、1位はルクセンブルグ、2位はスイスです。)
その中でノルウェーはなぜ特に一人当たりGDPが高いのでしょうか。
ノルウェーが特に豊かな理由
それは油田です。北海とバレンツ海の油田がノルウェーの経済を豊かにしているのです。
1965年、ノルウェー、デンマーク、イギリスの間で北海の大陸棚の分割について協議されましたが、その時にノルウェーが有利な条件を勝ち取ったのがきっかけです。
なぜノルウェーが有利になったのか?いろんな説がありますが、デンマークとイギリスは、当時北海で油田が見つかるとは、そして見つかったとしても採掘できるとは本気で思っていなかった、ともいわれています。
この富からくるノルウェーの現状は以下です。
- 世界最大の政府系投資ファンドがある
- 運用利回りのうち国内で使う額は年間4%のみ、残りはすべて海外の投資に回している
- 結果、世界の上場企業の株式の1%以上を保有している
- 石油ブーム後、ノルウェーの年間労働時間は23%減少
- 労働年齢にある国民の約1/3が国からの給付金で生活
- 障害手当、失業手当、疾病手当を受けている人数の人口比はヨーロッパ最多
出典:マイケル・ブース「限りなく完璧に近い人々」
ノルウェーは、石油で得た富をかなり賢明に運用してはいるけど、結果的に働く人が減っているようです。
スウェーデン
一方、北欧5か国の中で工業生産高トップなのはスウェーデンです。
IKEA、ボルボ、H&M、エリクソン(通信機器)、テトラパック(世界最大の食品パッケージ会社)など、日本でも知られているスウェーデン発祥の会社もいくつもあります。
スウェーデンがなぜ工業が盛んになったのか。いろんな理由があると思われますが、その一因は後述します。
歴史
右記出典をもとによしてるが作成:Microsoftエンカルタ2002
一時期は北欧5か国すべてをデンマークが直接的または間接的に支配していた時期があったのですね。そしてその後スウェーデンが力をつけた。残りの3国が独立したのは20世紀に入ってからなのですね。
EU関連
EU加盟国はデンマーク、スウェーデン、フィンランドでアイスランドとノルウェーは加盟していない。ユーロを導入したのはフィンランドだけ。
このEU関連の受け入れについては、北欧5カ国はそれぞれ独自の道を歩んでいますね。
フィンランドだけがEU参加に積極的な理由は後述します。
第二次世界大戦時
第二次世界大戦時も、各国で状況は違いました。
- アイスランド:イギリスに占領される(当時デンマークの支配下にあったが、そのデンマークがナチスドイツに占領されたことから)
- ノルウェー:ナチスドイツに占領される
- デンマーク:ナチスドイツに占領される
- スウェーデン:非同盟・中立政策
- フィンランド:ソ連と戦い休戦に持ち込む
スウェーデンだけがうまく立ち回ったという感じです。
よしてるが思ったのは、これは地理的特性にもよるのかもしれないなということです。
アイスランドはイギリスに近いし、フィンランドはソ連に、デンマークはドイツに接しています。このことが各国の状況をかなり左右したのでは、と考えています。
歴史が及ぼす影響
上記のような歴史の違いが、次のような各国の「違い」を生み出しているようです。
- スウェーデン:
- 第二次世界大戦中、中立国としてナチスドイツやイギリスに原材料を供給し経済的に潤った
- かつて自国の領土だったフィンランドがソ連と戦っている間も特にフィンランドを支援しなかった上、フィンランドを支援しようとした国際連盟や連合軍を阻んだ。
- フィンランド:
- 1918年の内戦で、国内でロシア派(共産主義)と反ロシア派が分かれ戦った(結果は反ロシア派の勝利)。今でも田舎ではどの家族がどちら側だったかがわかるくらいの影響が残っている。
- 1939年にもソ連軍120万人に対し20万人で戦った。
- 戦後も、ソ連に侵略されずにはすんだが、ソ連から「ホーム・ロシアン」という制度を押しつけられた。これは、フィンランドの政治家全員にソ連の外交官が担当としてつき、家族ぐるみのつきあいをさせられる制度。
出典:マイケル・ブース「限りなく完璧に近い人々」
スウェーデンの工業が発展し、石油で潤うノルウェー以外でトップの経済力を持つようになったきっかけの一つは、第二次世界大戦中に中立の立場で儲けたことがきっかけのようです。
また、フィンランドが北欧5か国中唯一EUに加盟しユーロも導入するなどEU参加に積極的なのは、ソ連という大国一国に翻弄された経験から、より大きな連合に加盟し自国を守るという考えが国民に浸透しているのからではないでしょうか。
その他
その他、引き続き「限りなく完璧に近い人々」から、北欧諸国の違いをリストアップしてみます。著者マイケル・ブース氏の主観も含まれていますが、ひとつの見方としてご紹介します。
ノルウェー
- ノルウェー人は特に自然が好きで「フェリーに載せたカメラが6日間風景だけを映すテレビ番組」を国民の半分が観た。
デンマーク
- デンマーク社会の原動力は「ヒュゲ」と「フォルケリ」
- ヒュゲ:デンマーク独特の親密性や仲の良さを表す。一見和気あいあいとしているが実は厳密な行動規範を持つ
- フォルケリ:ブース氏曰く「ビアガーデンで演奏されるディキシーランドジャズ的な押しつけがましいお祭り騒ぎ」
- デンマーク人はあらゆる社会的行事で国旗を掲揚する。結婚記念日や葬式でも。これも「フォルケリ」のひとつ。
- ルールや法を破った公人にも寛大。一例として、ドーピングを何年もしていたスポーツ選手も引き続き活躍している(ツール・ド・フランス優勝者ビャーネ・リース)
スウェーデン
- 失業率、特に若者のそれが他の北欧諸国より高い(約30%)
- 1972年から2013年まで、トランスジェンダーに対し不妊手術を義務づけていた(参考:不妊手術強制されたトランスセクシュアルに賠償の方針、スウェーデン 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News)
フィンランド
- フィンランド人と日本人は似ていると言われる。両者ともボディランゲージをほとんど使わず(よしてるはそうは思いませんが)、聞き上手であり、対立を好まない。しかしその日本人でさえフィンランド人の率直さやぶっきらぼうさには驚く。
- 国民の同質性が極めて高い(移民は人口の2.5%のみ)
- フィンランド人は危機的状況において頼りになる(ブース氏の取材時の録音機器トラブルがあったときなどもすぐに代替機を用意した等)
- 北欧諸国の中では最も自殺率が高い
- 飲酒が社会問題化しており、男性の死因トップがアルコール(よしてる注:本当かなと思ってデータを探しましたが、フィンランドの死因に関するデータは見つけられませんでした)
- OECD諸国の中で学力がトップレベルであるだけでなく、学校間の格差が極めて小さい。(よしてる注:東京大学大学院教育学研究科・教育学部の記事によると、学校間格差はOECD平均33.6に対してフィンランド3.9、日本は62.1)
その他
- フィンランドにはサンタクロースの住所があり、そこには世界中の子どもたちから実際に手紙が届くが、デンマークからは届かない。デンマークはサンタクロースが自国にいると考えているから。
- ノルウェー、デンマーク、スウェーデンの国民はお互いの言葉をおおよそ理解できるが、アイスランド語とフィンランド語は異なる。
以上、北欧諸国の異なる点を、各種統計データと「限りなく完璧に近い人々」をもとに整理してみました
北欧諸国の比較 - 違う点と似ている点 - 庭を歩いてメモをとる (yoshiteru.net)
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NATO加盟急ぐフィンランド ロシア隣国、「単独」模索か 北欧の結束にひび・ウクライナ侵攻1年
連帯の象徴としてウクライナ国旗が掲げられたヘルシンキ中央駅=8日
ウクライナ侵攻を続けるロシアと長い国境を接する北欧のフィンランド。 昨年2月の侵攻開始後に軍事中立政策を転換し、隣国スウェーデンと共に北大西洋条約機構(NATO)へ加盟を申請した。だが、スウェーデンとNATO加盟国トルコの関係悪化で手続きは進まず、「目の前の脅威」にさらされるフィンランドでは、スウェーデンを待たずに単独加盟を模索する動きも出ている。侵攻1年を前に「揺れるフィンランド」の状況を探った。
◇同時加盟に障壁 2月初旬、フィンランドの首都ヘルシンキ中心部にある中央駅に着くと、駅舎屋根に青と黄色のウクライナ国旗がはためいていた。戦火にさらされる人々への連帯の印だ。 第2次大戦中にソ連の侵攻を受け、多くの犠牲を出したフィンランドでは、ウクライナの戦争は自国の苦難の歴史と重なり合う。決して対岸の火事でないだけにその衝撃は大きく、政府は「新たな安全保障環境」に素早く対応。侵攻開始からわずか3カ月後、NATO加盟をスウェーデンと同時申請した。これまでのように隣の大国ロシアの顔色をうかがい続けるのではなく、西側の軍事同盟に属することで独立と領土を守る道を明確かつ迅速に選んだ。 ところが、順調に進むとみられた加盟手続きは思わぬ障壁にぶつかった。トルコがテロ組織とみなすクルド人勢力を北欧2国が支援しているとして、承認に難色を示したためだ。北欧2国は譲歩に努めたが、最近スウェーデンで反トルコ抗議デモが繰り返されたことからトルコは態度を硬化。トルコのエルドアン大統領はスウェーデン加盟に関し「われわれの支持を期待できない」とする一方、フィンランドのみ認める可能性に言及した。 ◇過半数が「先行」支持 フィンランドとスウェーデン両政府は、公には一貫して同時加盟の方針を示し、「単独説」の火消しに躍起だ。しかし1月下旬、フィンランドのハービスト外相は地元メディアのインタビューで「スウェーデンの申請が長期間行き詰まるようなら状況を判断しなければならない」と述べた。後に改めて同時加盟を強調したものの、「単独容認を示唆する発言」と一部で受け取られた。 国民の間でも、脅威に対抗するには先行して集団防衛の枠組みに入ることが最善と捉える向きが多い。最近公表されたフィンランドの世論調査で、「トルコの反対でスウェーデンの批准に時間がかかった場合スウェーデンを待つべきか」との問いに53%が「先行加盟」を支持。「待つべきだ」の28%を上回った。 ヘルシンキ市民に考えを聞くと、職業訓練生の男性トニーさん(31)は「2国一緒の方が良いが、難しいならロシアに近いわれわれがまず先に加盟すべきだ。スウェーデンは後から入ることができる」と話した。一方、60歳の女性は「同時加盟すべきだと思う。トルコに好きなようにはさせない」と語ったが、「状況が変われば分からない」と複雑な心境ものぞかせた。 フィンランド国際問題研究所のマティ・ぺス主任研究員(外交・安保)は「トルコの妨害(で手続きが滞っている状況)に人々の不満は増大している」と指摘。「フィンランド政府は(同時加盟へ)夏までに何らかの譲歩を見いだせるとみている」一方、「単独を含む代替策に備えているのは明らか」だとし、スウェーデンの加盟プロセスが無期限凍結といった事態になれば「(単独加盟は)起こり得る」との見方を示した
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