さらなるブラッシュアップを経て登場
比類無き完成度。Bowers & Wilkinsの完全ワイヤレスイヤホン「Pi5 S2」「Pi7 S2」に迫る
2023/02/03高橋 敦
名門Bowers & Wilkins(B&W)から同社完全ワイヤレスイヤホンの第2世代となる「Pi5 S2」「Pi7 S2」が登場する。初代「PI5」「PI7」で好評を得たサウンドやデザインを継承しつつ、使い心地や使い勝手に関わる部分を特に強化したブラッシュアップ・モデルだ。
前モデルが同ブランド初の完全ワイヤレスイヤホンでありながら、その完成度・サウンドクオリティの高さから厚い支持を受けたこともあり、装いも新たに登場する第2世代機にも期待が高まる。そんなPi5 S2/ Pi7 S2の魅力を本稿で詳細にお伝えしたい。
完全ワイヤレスとしての使用感を更に高めたハイエンド機「Pi5 S2」
早速Pi5 S2から見ていこう。こちらの時点で一般的な「超ハイエンド」に相当するモデルとなる。
「Pi5 S2」(スプリング・ライラック)¥OPEN(市場想定売価:税込比類無き完成度。Bowers & Wilkinsの完全ワイヤレスイヤホン「Pi5 S2」「Pi7 S2」に迫る (3/3) - PHILE WEB前後)
前述のように大枠はPI5から継承。ノイズキャンセリング&アンビエントパススルー搭載、機能美とフォーマルな落ち着きを兼ね備えるデザイン、ドライバーは9.2mmダイナミック型1基、同社アコースティック・エンジニアによるサウンド・チューニング。何の不足もない充実ぶりだ。
その充実を土台に、主には下記の3点の強化が「S2」としてのポイントとなる。
●接続安定性の強化
●駆動時間の改善
●アプリの機能向上
接続安定性の強化はアンテナ設計の刷新で実現。駅改札口など特に劣悪な電波環境を想定しての音切れ対策とのことだ。
本体のみでの駆動時間はPI5でノイキャンオフ時で4時間だったところS2は5時間に。ケースと合わせては5時間+19時間で24時間。バッテリー容量をアップしつつ本体サイズは変わらず、良好な装着感も維持されている。
アプリは従来のものに代えて「Bowers & Wilkins Music」アプリを使用する形に。こちらでノイキャンとパススルーのレベル調整、バッテリー残量詳細の確認などを行える。なおノイキャン性能も従来通り、現代ハイエンド機として普通に十分なレベルを確保。「音質重視モデルなのでノイキャン強度は控えめです」的な言い訳を必要としない性能だ。
「Pi5 S2」「Pi7 S2」ともにコントロールアプリは前モデルから刷新。「Bowers & Wilkins Music」にてノイズキャンセリングや、パススルーのレベル調整などを行える
ほか、カラーバリエーションは変更。旧モデルは明快なブラック/ホワイトだったが、今回はニュアンス豊かなクラウド・グレー/ストーム・グレー/スプリング・ライラックだ。サンプル機のクラウド・グレーはグレーとしては明るめで、ホワイト系が好みな人にもフィットしそうな色合いだった。
「Pi5 S2」カラーバリエーション一覧。写真左からクラウド・グレー/ストーム・グレー/スプリング・ライラック
といった機能や美観の強化もありつつ、最大の魅力はやはり、ハイエンド・スピーカー「800 Series Diamond」も担当した同社チーフ・アコースティック・エンジニア、スティーブ・ピアース氏によるというサウンド・チューニング。
ダイナミック型らしい豊かな響きの低音を支えに、各楽器をバランスよく配置。ひとつひとつの音の描き込みもありつつ、楽曲やアンサンブルの一体感、なじみの良さこそが大きな魅力と感じられる。強調された解像感によるハイエンドっぽさの演出に走ることなく、音楽の全体像の見せ方が意識されている印象だ。
音楽とオーディオを見つめ続けてきたB&Wらしいチューニングと言える。例えばジャズのしっとりとしたボーカルものなどを聴くと特にハマるが、それに限らず、大人っぽさやジェントリーな雰囲気を感じさせる曲、音楽との相性は抜群だ
ハイブリッド構成/バイアンプ搭載。ハイエンド機を超える「Pi7 S2」
Pi5 S2の時点でその見事さだというのに、そのさらに上に位置付けられる「超超ハイエンド」機。それが「Pi7 S2」だ。大枠はPi5系との共通項が多いのでそれを前提に、Pi5系との違いから確認していこう。
「Pi7 S2」(サテン・ブラック)¥OPEN(市場想定売価:税込63,800円前後)
まず音響面では、Pi5 S2と共通のダイナミック型ドライバー1基にBAドライバー1基を加えた2ウェイ構成の採用が大きい。しかも各ドライバーをそれぞれ個別のアンプ回路で駆動するバイアンプ仕様も採用。各ドライバーに最適化したアンプでその性能を引き出し、ドライバー間の干渉も抑える狙いだ。
無線周りでは、Pi5も含めた近年の完全ワイヤレスで主流の左右独立伝送ではなく、NMFI=近距離磁気誘導による左右間伝送をあえて採用。接続安定性の面での優位があるという。実は筆者の体感としても、接続性に優れるはずの左右独立伝送のイヤホンでもこのところは、音切れの発生が以前より増えている印象はあった。ワイヤレス機器の増加で都心の電波状況はさらに悪化しているのかもしれない。
だがこのPi7 S2を「中央線→山手線→渋谷駅周辺を徒歩」という移動で試したところ、その音切れがほぼ発生しなかった。驚きの安定性だ。
「Pi7 S2」装着イメージ。ハウジングが耳のくぼみに収まる形状となっているため、優れた装着安定感を実現する
「NMFI」による左右感接続や、環境の騒音レベルに応じたキャンセリングを行う「アダプティブノイズキャンセリング」機能で、雑踏の中でも音の途切れも無く、快適なリスニングを楽しめる
機能面ではノイキャンが「アダプティブ」ノイズキャンセリングになっているのが大きい。周囲の騒音に合わせてノイキャンのレベルを自動調整し、快適なリスニング環境を常にキープ。こちらも前述の移動ルートで試したが、住宅地、駅ホーム、電車内、繁華街の喧騒のどの場面でも、うるささが気になることも、レベル切り替えの変わり目が気になることもなかった。的確かつスムースに自動調整してくれているようだ。
なおマイクの搭載数もPi5系の4基を超える6基に。それらを活用してパススルーと通話の性能も高められている。
Bluetooth周りではaptX Adaptive対応が注目点。NMFI方式による左右間伝送も48kHz/24bitスペックを確保してあり、Bluetooth伝送→左右間伝送→DSP処理の最初から最後までが「True 24bit オーディオ コネクション」となっている。
そして何とも個性的なのが、充電ケースにBluetoothトランスミッター機能が搭載されていること。付属のケーブル(USB-Cまたはアナログ)でソース機器と接続し、入力された音声をPi7 S2に送信できる。飛行機の機内エンターテイメントシステムのイヤホン出力との組み合わせなどが想定されているようだ。なお同社ワイヤレスヘッドホン「Px」シリーズとのペアリングも可能とのこと。
「Pi7 S2」の充電ケース(写真左)はトランスミッター機能が搭載。ケースのUSB-Cまたはアナログ入力端子に入力された音声をPi7 S2に送信できる
「Pi7 S2」の付属品一覧。イヤーピース3サイズ(S/M/L)と充電用USB-Cケーブルは「Pi5 S2」と共通するが、ケースがBluetoothトランスミッター機能を備えることから、追加でUSB-C - 3.5mmステレオミニプラグケーブルを同梱する
最後に「S2」での強化ポイントは、Pi5 S2と同様に、「接続安定性の強化」「バッテリー駆動時間の改善」「アプリの機能向上」の3点。完全ワイヤレスイヤホンとしての使い勝手を強化したといった次第だ。駆動時間については、本体5時間+16時間の計21時間。
バイアンプやアダプティブノイキャンを搭載するグレードの高いモデルでありながら、Pi5 S2と同等の本体駆動時間を確保してあるのは特筆したい要素の一つだ。
「Pi7 S2」(写真左)と「Pi5 S2」(写真右)の比較。前モデル同様、イヤホン本体のデザインに差異は無い
ほか、こちらもカラーバリエーションは旧モデルのチャコール/ホワイトからサテン・ブラック/キャンバス・ホワイト/ミッドナイト・ブルーに変更。サンプル機のサテン・ブラックはフェイスプレートやケースの蓋など金属色の部分が旧チャコールより暗めの色合になり、精悍な印象が強まっている。
「Pi7 S2」カラーバリエーション一覧。写真左からサテン・ブラック/キャンバス・ホワイト/ミッドナイト・ブルー
総じて高い再生力を誇るPi5 S2、クラスを超えた完成度のPi7 S2
構成する要素を並べて見ても、両モデルともに十二分の完成度であるが、こちらもやはり、何より素晴らしいのはサウンド。Pi5 S2は、豊かな低音表現やバランスとなじみの良さを発揮。そして、Pi7 S2はPi5 S2の強みはそのままに、解像感、表現の緻密さなどがさらに強化される。自然な感触を維持したままでの豊かな情報量は特に圧巻だ。
aptX Adaptive対応機器との接続で、48kHz/24bit音源を精細に鳴らし切る
Pi5 S2での楽曲再生も非常に高いクオリティであるのだが、その上位に位置づけるPi7 S2は、あらゆる楽曲の再生においてはPi5 S2の上位互換。いや、シリーズ機ということで比較表現を用いたが、完全ワイヤレスイヤホンというカテゴリで比肩するモデルは無いという気さえしてくる。中でも現代ポップスへの対応力は目覚ましい。
例えばビリー・アイリッシュさん「bad guy」のように、音数は少なめにして、代わりにひとつひとつの音の質感や配置、空間の余白の使い方などを徹底的に作り込むサウンド。Pi7 S2はその全てを余すところなく再現できる数少ないイヤホンのひとつだ。それでいてクールなタッチに寄りすぎることはなく、Pi5 S2で絶品の表現を見せるボーカルの湿りや憂いの表現も兼ね揃えるといった隙の無さだ。
それに加え、音場全体を支配するほどのボリューム感で響く、ベースの迫力も余裕で再現。この低音を、無難にまとめるのではなく、盛大に鳴り響かせつつ適切にコントロールしてまとめてくれるのはPi7 S2の大きなアドバンテージ。バイアンプ駆動の効果が特に発揮されている部分かもしれない。
イヤーピースは本体色に応じたカラーが3サイズ同梱。音質を追求し、スポンジ状のフィルターを装備する
音数の多い楽曲も精細に鳴らし切るPi7 S2の強みと凄み
一方で同じ現代ポップスでもJ-POPに目を向けると、星街すいせいさん「Stellar Stellar」のように、音数を抑えた「bad guy」とは対照的に圧倒的な音数で構成された楽曲も多い。しかしPi7 S2はそちらとの相性も良好。複数の音色とパターンを重ねて緻密に構築されたドラムスのその複雑なリズムも、Pi7 S2はごちゃつかせずクリアに届けてくれる。
「Pi7 S2」は充電ケースにBluetoothトランスミッター機能を搭載。こちらも上位モデルならではのアドバンテージの一つといえる
それでいて、そのドラムスに耳を向けない限りは、その複雑なリズムが妙に主張して目立ちすぎることもないというのがまた好ましい。
特に、この「意識を向ければそれに応えてくれ、意識しなければ変に気になることはなく、しかし意識を向けていないときもリスナーの無意識には働きかけている解像感」こそ、Pi7 S2の強みであり凄み。他の何でもなくこのイヤホンを選ぶ理由となり得る、大きな大きな価値だ。
Pi5 S2で超ハイエンド、Pi7 S2はそれをさらに超える超超ハイエンドの価格帯。両機ともそれも納得の高みに到達しているが、それにしても強気な価格設定ではある。
しかしいまや、普通の価格で普通に優秀なイヤホンは世に溢れているのだ。ならばそれに満足できないミュージックラバーやファッショニスタに刺さる、他に比類するもののない突出したアイテムの提案こそ、トップ・ブランドたるB&Wに期待されるところだろう。
Pi5 S2はまさにその期待に応えた製品。
そしてPi7 S2はその期待を超えた逸品と言える。
どちらを選ぶにしても、他のイヤホンからは得られない満足を得られることだろう。
(提供:ディーアンドエムホールディングス
比類無き完成度。Bowers & Wilkinsの完全ワイヤレスイヤホン「Pi5 S2」「Pi7 S2」に迫る (3/3) - PHILE WEB