基礎ごと7.5m流された木造住宅、約1500万円かけて曳き家で改修

荒川 尚美

 

日経クロステック/日経アーキテクチュア

 

 

基礎ごと7.5m流された木造住宅、約1500万円かけて曳き家で改修 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)

 

 

2022年8月3日から新潟県内で降り続いた大雨では、新潟県関川村にある築5年の2階建て木造住宅が基礎ごと浮き上がり、元の位置から約7.5m離れた位置に流される被害が発生していた。これほど大きな被害でも、建物を壊さず、曳き家(ひきや)の技術で修復した。

 「サッカーボールが転がったので、家が傾いたことは分かった。隣の家がだんだん近づいてくるので、最初は隣の家が流れてきたのかと思ったが、動いているのは自分の家だと気付いた」。家を流された住民は、当時の状況をこう振り返る。

水が引いた後の住宅の様子を南側から見る。時計回りに回転して、西側の車庫にぶつかる寸前だった。外壁に取り付けていたエアコンの室外機が基礎の下に挟まれた状態で、建物が着地していた。住宅は延べ面積が約143m<sup>2</sup>、建築面積が約93m<sup>2</sup>の2階建てだ(写真:住民提供)

水が引いた後の住宅の様子を南側から見る。時計回りに回転して、西側の車庫にぶつかる寸前だった。外壁に取り付けていたエアコンの室外機が基礎の下に挟まれた状態で、建物が着地していた。住宅は延べ面積が約143m2、建築面積が約93m2の2階建てだ(写真:住民提供)

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 被害に遭ったのは、新潟県関川村にある築5年の2階建て木造住宅だ。8月4日の午前0時すぎに越水し、明け方の午前3時から4時の間に基礎ごと建物が浮き上がったとみられる。その後、元の位置からゆっくり流れ、約7.5m離れたところで時計回りに回転して着地した。住民が外に出て家の状態を確認したのは、水が引いた午前8時ごろだという。

 冠水の深さは住宅外壁に残った痕から地盤上約1m80cm前後だったとみられる。一方、室内側の浸水範囲は地盤上72~77cm(床上10~15cm)にとどまっていた。地中に埋設されている給排水管は地盤付近で外れていた。

浮いて流れた後の状態を北側から見る。もともとは敷地の北側に寄せて住宅が立っていた(写真:日経クロステック)

浮いて流れた後の状態を北側から見る。もともとは敷地の北側に寄せて住宅が立っていた(写真:日経クロステック)

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外壁に残されていた冠水の痕を測ると、地盤から約1m80cmだった(写真:長谷川順一)

外壁に残されていた冠水の痕を測ると、地盤から約1m80cmだった(写真:長谷川順一

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寺院を建屋に取り込んだ「カンデオホテルズ大阪心斎橋」、本堂はレールで2回移動

川又 英紀
 

日経クロステック

大阪市にある宗教法人三津寺(みつてら)と東京建物、カンデオホテルズを展開するカンデオ・ホスピタリティ・マネジメント(東京・港)は2022年12月14日、大阪市中央区心斎橋筋2丁目にある三津寺本堂を、新築ビルの低層部に取り込んだホテルを23年11月26日に開業すると発表した。ホテル名は「カンデオホテルズ大阪心斎橋」だ。

建物の低層部に寺院を丸ごと取り込んだビルの上層部にできるホテル「カンデオホテルズ大阪心斎橋」の完成イメージ(出所:三津寺、東京建物、カンデオ・ホスピタリティ・マネジメント)

建物の低層部に寺院を丸ごと取り込んだビルの上層部にできるホテル「カンデオホテルズ大阪心斎橋」の完成イメージ(出所:三津寺、東京建物、カンデオ・ホスピタリティ・マネジメント)

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 同日、ホテルの完成予想図を三津寺の本尊に奉納。ホテルが無事に完成することを祈願する奉納式を、三津寺の住職である加賀哲郎氏により、三津寺仮事務所松林庵で開催した。

新築するホテルの完成予想図を三津寺の本尊に奉納した。写真は三津寺の住職である加賀哲郎氏(写真:三津寺、東京建物、カンデオ・ホスピタリティ・マネジメント)

新築するホテルの完成予想図を三津寺の本尊に奉納した。写真は三津寺の住職である加賀哲郎氏(写真:三津寺、東京建物、カンデオ・ホスピタリティ・マネジメント)

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 「七宝山大福院 三津寺」は1200年以上の歴史があり、大阪ミナミに根付く信仰の場だ。現在の本堂は1808年に再建されたものである。三津寺は市内では珍しく、第2次世界大戦の戦火を免れた江戸時代の木造建築だ。本堂の天井に描かれた100を超える花卉(かき)図や、漆や金箔、色絵で彩られた柱や彫刻など、江戸時代の華やかな美術が残る。

 「三津寺ホテルプロジェクト新築工事(仮称)」で設計・施工を手掛ける大成建設は、曳き家(ひきや)工事で敷地内の本堂の位置を変えた。その上にホテルを建設している。レールを敷いて本堂を動かす曳き家を2020年9月と21年7月に2回実施し、既に完了している。

2020年9月に実施した1回目の曳き家工事。本堂を左から右へ横に移動(写真:大成建設)

2020年9月に実施した1回目の曳き家工事。本堂を左から右へ横に移動(写真:大成建設)

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20年9月に実施した1回目の曳き家工事。本堂を移動した後、元の場所には新築するビルの基礎をつくる(写真:大成建設)

20年9月に実施した1回目の曳き家工事。本堂を移動した後、元の場所には新築するビルの基礎をつくる(写真:大成建設)

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21年7月に実施した2回目の曳き家工事。基礎工事が終わった後、今度は右から左へ横に移動(写真:大成建設)

21年7月に実施した2回目の曳き家工事。基礎工事が終わった後、今度は右から左へ横に移動(写真:大成建設)

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21年7月に実施した2回目の曳き家工事。さらに前方(御堂筋沿い)に移動(写真:大成建設)

21年7月に実施した2回目の曳き家工事。さらに前方(御堂筋沿い)に移動(写真:大成建設)

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 御堂筋沿いに建設中である地下1階・地上15階建てのビルの1~3階を貫く吹き抜け空間に、本堂は納まっている。約60mの高さになる新築ビルの3層にわたるピロティに、本堂をそのままの形で残した格好だ。寺院には御堂筋から直接アクセスできるようにする。

移動した本堂(写真左)を覆うように鉄骨の躯体(くたい)を建設。22年12月時点(写真:日経クロステック)

移動した本堂(写真左)を覆うように鉄骨の躯体(くたい)を建設。22年12月時点(写真:日経クロステック)

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本堂の天井には100を超える花卉(かき)図が残る(写真:日経クロステック)

本堂の天井には100を超える花卉(かき)図が残る(写真:日経クロステック)

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建物の低層部の完成イメージ。本堂が建物の中にある(出所:三津寺、東京建物、カンデオ・ホスピタリティ・マネジメント)

建物の低層部の完成イメージ。本堂が建物の中にある(出所:三津寺、東京建物、カンデオ・ホスピタリティ・マネジメント)

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本堂の前には新たに境内を設ける(出所:三津寺、東京建物、カンデオ・ホスピタリティ・マネジメント)

本堂の前には新たに境内を設ける(出所:三津寺、東京建物、カンデオ・ホスピタリティ・マネジメント)

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 敷地面積は約890m2、建築面積は約830m2、延べ面積は約9500m2。構造は鉄骨造、一部鉄骨鉄筋コンクリート造だ

 

 

 

寺院を建屋に取り込んだ「カンデオホテルズ大阪心斎橋」、本堂はレールで2回移動 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)