経営破綻したJALの株を再上場時に買っていたら、いまいくらになっている?
JAL(株式会社日本航空)と言えば誰もが知る日本を代表する航空会社です。そんなJALが2010年に経営破綻し、公的資金の注入と債権放棄などを経て経営再建し、再上場を果たしました。
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再上場に至るまでに紆余曲折あったJALですが、再上場した日にJALに投資していたら今どうなっているか、そして再上場と再建に至る背景について解説していきます。
JALの経営破綻、再生に至るまで
JALの経営破綻は2008年のリーマンショックがきっかけとなりました。 それまでにJALでは2005年に起きた安全面の管理体制において国土交通省から業務改善命令を受けるような問題もあり、それらの影響により損益赤字に転落することもありました。 しかし、その後に黒字転換していたところにリーマンショックが起き、航空需要が大幅に落ち込み深刻な損益赤字となりました。 その結果、2008年3月末の決算においては約4711億円あった純資産が、翌年には約1968億円にまで落ち込み、国土交通省航空局の公表によると債務超過額は9592億円にもなるとされていました。 そして2010年1月19日JALは東京地方裁判所に会社更生法の適用を申請し倒産、2月に上場廃止することとなりました。 JALの経営破綻の直接的なきっかけはリーマンショックによるものですが、国内路線において赤字路線が多くあったこと、またコスト面においても手厚い企業年金や福利厚生など社員への処遇が手厚すぎた点が指摘されています。 2009年に自民党から民主党に政権交代し、経営再建は政権交代前より緊急課題とされてきましたが、政権交代後に元国土交通大臣であった前原誠司氏は自民党政権で創設された「日本航空の経営改善のための有識者会議」を廃止し、「JAL再生タスクフォース」を設置し再生を目指してきました。 しかし、債権放棄をめぐり取引先金融機関の反発を招き難航し、JALの経営再建は企業再生支援機構へと引き継がれることとなりました。 そして、そこで政府の強い要請により新たにCEOとして就任が決まったのが京セラ名誉会長、「経営の神様」と名高い稲盛和夫氏でした。 前原氏と親交のあった稲盛氏はがJALの経営再建の指揮を取り、政府による公的資金の投入や金融機関の巨額の債権放棄を行いつつ、赤字路線の見直し、人員の削減、給与の削減や手厚い福利厚生費の見直しなどが行われJALは黒字に転換、2012年3月期の決算においては約2049億円の営業利益となり、2012年9月19日には東京証券取引所に再上場されたのでした
JAL再上場時に投資していたらいくらになっている?
JALの株式は、始値は3,810円から開始されました。その後同程度の水準にて推移していましたが、2013年2月4日に第3四半期決算において前回の発表時よりも増益が見込まれることが発表された後に上昇を開始、同年9月頃には株価は6,000円に近くなっていきました。 2014年9月26日に株式分割が行われているため、始値は現在の価値で1,905円、2013年9月頃の水準は3,000円近くとなっています。 また、2014年10月31日の第2四半期の決算発表における増益の見込みを受けてか、再び株価は上昇、3,000円を下回っていた株価は2015年1月30日の終わり値は4,000円に、同年8月頃には5,000円に迫るほどに上昇していきました。 その後、2016年に中国の経済指標の悪化を受けて株式市場全体において大きく値下がりし、JAL株も同時期に大きく値下がりすることとなりましたが2018年には再び2015年と同水準にまで回復、コロナ禍で株価が大暴落、国内外の移動の制限、自粛により再び赤字に転落してしまい、2022年11月16日の終値においては2,592円となっています。 始値が現在の株価に修正し1,905円ですから、上場時より1.4倍程度になっているということになります。 また、2015年頃、2018年頃と4,000円を超えていた時期もあり、再上場時に投資していたら2倍以上になっていたことになります。 このように、JALは経営再建後に大きく株価が上昇してきたのでした。その背景には稲盛和夫氏の経営手腕があり、稲盛氏が創業した京セラと同様に「JALフィロソフィー」を掲げ、トップの考え方を社員に浸透させて会社組織を小集団に細分化、それぞれで独立採算を取れるアメーバ経営により、これまでJALにあった企業体質を改革し、成功してきたのでした。
今後JALの株価はどうなる?
11/1に公表した第2四半期決算短信によると、コロナ禍による影響も緩和され航空需要が戻りつつあり、前年の同時期に対し2倍以上の売上となりました。そして、今期の業績予想においても損益黒字に転換する見込みであることが発表されています。 このような状況を受けてか、コロナ禍以後低迷していた株価が徐々に上昇を始めています。財務内容はコロナ禍前と比較すると厳しい状況であるものの、第2四半期決算短信によると流動比率130%以上、自己資本比率30%以上を維持し、危険と言えるような状況でもありません。 このような状況でコロナ禍以前のように航空需要が伸び、業績の回復が伴えばコロナ禍前の収益と強い財務基盤を取り戻すこともでき、株価が以前のような水準にまで戻る可能性も考えられるでしょう。 また、10月より実施された全国旅行支援割において、旅行プランにより航空券においても割引きの対象になるため、国内旅行の需要が喚起されることにより今期の増収、増益へと繋がることになることも期待できます。 しかし、その反面、コロナ禍においてリモートでの会議などが一般的になったことも受け、ビジネスでの航空需要が低減することも考えられ、コロナ禍以前に需要が戻らないという予測もあります
まとめ
今回は経営破綻から経営再建を行い、再上場を果たしたJALの株価の動きを解説してきました。JALの経営再建についてはTVドラマ「半沢直樹」と、その原作となった「銀翼のイカロス」のモデルとなった出来事です。 稲盛和夫氏の指揮の下で業績を回復してきたJALですが、コロナ禍の収束と共に航空需要も回復していき、今期においては黒字に戻る予想ではありますが、解説した通りコロナ禍前のように需要は戻らないのではないかという懸念材料もあり、今後更にJALが業績を伸ばし、株価が上昇するには経営陣がどのように先々を見通して戦略を立てていくかにかかっていると言えるでしょう。 コロナ禍の影響が無くなれば以前のように回復する見込みも期待できますが、今後の需要においての懸念材料もあり、今後の決算発表に注目する必要がありますね。
小川 洋平(日本FP協会認定 CFP🄬/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
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