第3の量子コンピューター、日本勢が快挙 世界最速の2量子ビットゲートを実現
「冷却原子」方式、2030年にも事業化へ
佐藤 雅哉
日経クロステック/NIKKEI Tech Foresight
量子コンピューターの性能向上につながる技術開発が進んでいる。分子科学研究所(愛知県岡崎市)教授の大森賢治氏らの研究グループは、
「第3の量子コンピューター」として注目される冷却原子型で、
ノイズの影響を抑える技術を確立した。
日本勢は冷却原子型でレーザー技術を強みに先行
しており、
大森氏らは2030年にも事業化を目指す。
大森氏らは、
冷却原子型で世界最速の2量子ビットゲート(基本演算要素)操作を実現した
(図1)。
長年の課題だったノイズに影響されにくい量子コンピューターの開発につながる技術だという。
同氏らが開発した冷却原子型量子コンピューターは、
極低温に冷却した2つの原子をµm(マイクロメートル)レベルに近づけ、
特殊なレーザーを当てて操作するもの。
10ピコ秒(1000億分の1秒)だけ光る超高速のパルスレーザーを使うことで、
6.5ナノ秒
で動作する世界最速の2量子ビットゲート(制御ゲート)を実現できる。
これは、ノイズの時間スケールより2桁以上速いため、ノイズの影響をほぼ無視できる。
図1 2量子ビットゲートの概念図
光ピンセット(赤い光)で捕捉した原子2個に、特殊なレーザー光(青い光)を当てて操作する(出所:分子科学研究所 富田隆文特任助教)
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「これまでは米Google(グーグル)が
2020年に超電導方式で実現した
15ナノ秒のゲート時間が最速だった」(分子科学研究所)
ため大幅な短縮化になる。
現在、世界ではさまざまな量子コンピューターの研究開発が進められているが、
ノイズなどに起因する「量子誤り」が生じやすく、
正確な計算ができないという共通の課題がある。
今回の成果は将来、
計算精度の高い量子コンピューターの実現に役立ちそうだ。
開発が先行している超電導方式や
イオントラップ方式の限界を突破できると、
多くの投資家も注目する
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