高配当株が多い「海運」&「通信」業界を徹底分析!海運株は船賃バブルの終焉で来期以降の見通しが不安定だが、通信株は安定成長&安定配当が続く可能性大

 

ダイヤモンド・ザイ

写真:ザイ・オンライン

 

 

 

 

 高配当株が多い2大業種「海運」業界と「通信」業界の現状を徹底分析! 

 

 

●【海運株】驚異的な高配当を出す海運株だが、その勢いが来期は鈍る!?

  今は“バブル”なので、今後はもらった配当以上に株価が下がる恐れも  高配当株が多い業種といえば、今は何と言っても「海運」業界だ。通常、配当利回りは3%を超えていれば”高い”とみなされるが、海運株の中には、配当利回り10%超の銘柄も複数ある。当然、最新の「配当利回りが高い株ランキング」でも、上位を独占中だ。

 

 

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海運業界でトップの日本郵船の純利益は、1兆円超。PERは1倍台と、異様な割安さだ。そのほかの海運株も、指標で見ると極端に割安な銘柄が多い。  ただ、だからといって今から配当目的で海運株に投資するのはおすすめできない。配当金をもらっても、それ以上に株価が下落するリスクがある。しかも、来期以降は減配が濃厚だからだ。 

 

 理由を説明しよう。目下、空前の利益を記録している海運大手3社(日本郵船、商船三井川崎汽船)の稼ぎ頭は、コンテナ船事業だ。コンテナ船事業は、長年続いた海運不況への対策として、大手3社が共同で2018年に設立した子会社が、サービスを一手に引き受けている。  

 

このように再編・合理化したところでコロナ禍が発生。物流のひっ迫で海上運賃が急騰したことから、統合コンテナ会社の親会社である3社には、巨額の利益がもたらされた。

 

 

投資家も「これはバブルだ」と承知しているため、株価は配当金額に比べて割安のまま放置されている。その結果、驚異的な配当利回りが実現したわけだ。  気がかりなのは「その船賃バブルがいつ崩壊するか」。2022年の年始には崩壊するとの予想もあったのだが、思いのほか船賃は高水準で推移していたため、各社の今期の業績予想は強気である。  

 

 

しかし、どうやら来期以降の業績悪化は確定的。日本郵船の長澤仁志社長は、9月7日の日本経済新聞で「年末に向けて景気後退が避けられない。コンテナ船の狂乱も今年いっぱいで平時に戻る」と発言している。 

 

 代表的なコンテナ船の運賃市況も、昨秋から年始まで1万~1万2000ドル台だったものが、足元では4000ドル前後まで下落している。こうした状況を踏まえ、

 

東海東京調査センターのアナリスト・金井健司さんは

「今期の配当金額が、来期以降も継続されると期待するのは危険です。2023~2024年は新造船も運用開始されるので、供給過多によって、運賃はコロナ以前まで下がるリスクも浮上しています」と、厳しい見通しを語る。  

 

日本郵船も商船三井も配当性向は25%しかなく、この海運バブルで莫大な利益を蓄積している。資本を貯めこんだ状態なので、配当額の維持も見込めそうなものだが、金井さんは「この先は環境対応や船舶更新等で大型投資が必要となることから、株主に積極還元するかは現時点では不明です」と話す。  

 

 

バブルが崩壊するときはあっという間なので、いま海運株を保有しているなら、出口戦略を早めに練っておいたほうがよさそうだ。 

 

 

 

 

 

●【通信株】今後も大手の安定成長は継続する見通し!

  成長性ではNTT、配当の面ではソフトバンクの魅力が大きい!   続いて紹介するのは「通信株」の見通しだ。災害でもパンデミックでも業績・配当を維持してきた通信株は、今や安定高配当株の筆頭格と言える。  

 

通信株の大手3社(NTT、KDDI、ソフトバンク)の業績を見る限り、懸念された前政権の料金値下げ圧力も、影響は軽微で終わったといえる。楽天モバイルの大赤字の惨状を見れば、寡占を崩そうと新規参入してくる勢力も当面は出てこなさそうだ。  

 

 

逆に、今後は5G通信、IoT(あらゆるものがインターネットにつながる)時代で、通信量は増えるばかり。長期にわたる安定成長は継続しそうだ。  大手3社を個別に見ていくと、まず、ドコモを吸収して総合力で他を圧倒するNTTの配当利回りは3%台前半で、3社の中では最低。

だが、株価上昇がもっとも期待できるのは、業績面からいってNTTだ。  

 

KDDIも配当利回りではNTTと大差ない一方で、「第1四半期決算では非通信分野の成長に停滞が見られ、物足りない。7月の大規模障害で、個人ユーザーが若干だが流出する動きもあり、気がかり」(株式アナリストの吉川陽子さん)と警戒する声も。ただ、安定性は高い。  

 

ソフトバンクについて吉川さんは「ペイペイの子会社化などグループ力を駆使した成長戦略は堅実」と評価。2018年の新規上場(IPO)時の公開価格にあたる1500円付近になると上値が重たいが、配当利回りは5%台後半もあり、配当狙いならNTTを上回る魅力があるだろう。

ザイ編集

 

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