フィンランドがロシア国境に「壁」を建設

 

ニューズウィーク日本版

<NATOに加盟申請した日からロシアの「天敵ナンバーワン」になったフィンランド。マリン首相は「壁」建設計画案について議会の支持を得られると自信を見せた>

ロシアの報復を警戒するマリン首相 Lehtikuva/Antti Yrjonen/REUTERS

 

 

 

フィンランドのサンナ・マリン首相は10月18日、東部のロシアとの国境沿いにフェンス(柵)を建設する案について、議会内に「幅広い支持」があると確信していると述べた。国境警備隊が作成した建設計画は、約1335キロメートルに及ぶロシアとの国境(欧州連合の加盟国の中で最長)に沿って、一部区域にフェンスを建設する内容だ。

 

 

 

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フェンスの総延長は最大で約260キロメートルで、その大半は国境検問所があるフィンランド南東部に設置される。まずは約3キロメートルの試験区間に建設し、問題点の検証などを行う。フィンランドでは来年4月までに議会選挙が行われるため、工事の計画全体についての決定は、2023年に発足する次期政権が行うことになる見通しだ。建設工事の期間は3~4年。国境管理当局の推定では、建設費用は数億ユーロにのぼるとされている。 現在、フィンランドとロシアの国境は木製のフェンスで仕切られている。だがロシアによるウクライナ侵攻を受けて、フィンランドが長年の軍事的中立の立場を転換してNATO加盟を申請したことで、両国間の緊張は高まっている。フィンランドは、ロシアが移民を送り込む形で政治的圧力をかけてくる可能性を懸念している。 徴兵を逃れたいロシア人の入国が急増 ロシアのウラジーミル・プーチンが9月下旬に部分動員令を発令したことで、突如として移民流入の見通しが現実的なものになった。 そこでフィンランド政府は9月末、ロシア人旅行者の入国を「当面の間」禁止すると発表。直前の週末には、徴兵を逃れるために国外を目指すロシア人、推定1万7000人がフィンランドに入国していた。 マリンは18日、フェンス建設案について議員団との話し合いを行った後の記者会見で、「東部の国境を適切に監視することが重要だ」と述べ、さらにこう続けた。「効果的かつ適切な国境管理を行うために、国境警備隊に十分なサポートが提供されるようにしたい。それに加えて、万が一の事態への備えも必要だ」 フィンランド議会は7月に、ロシアとの国境管理を強化する法改正案を可決。これにより、新たなフェンスの建設が認められることになった。 野党・真正フィン人党のリーカ・プーラ党首は本誌に対して、「真正フィン人党が政治活動を展開し、圧力をかけたことを受けて、フィンランド議会は今夏、東部の国境を一時的に閉鎖し、難民申請プロセスの保留を認める内容の法案を可決した」と本誌に述べた

 

 

 

ロシアの「大量移民兵器」を警戒

彼女はさらに「これらの措置は主に、ロシア当局がフィンランドとの国境地帯に大量の不法移民を送り込む『ハイブリッド攻撃』の可能性に対処するものだ」と述べ、さらにこう続けた。「フィンランド東部の国境地帯を効果的に守るためには、特定の区域をフェンスや防壁、その他の技術的手段で守る必要がある。ロシアと国境を接する他の全ての国は、既に国境地帯にフェンスを設置している」 フィンランドは当初から、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を強く非難し、ウクライナの独立と主権を支持してきた。さらにフィンランドはスウェーデンと共に、NATOに加盟する意向を表明。ロシアはこれを受けて、両国に対して、NATOに加盟すれば「深刻な軍事的・政治的な結果を招く」ことになると脅しをかけてきた。 フィンランド国防軍の報道官は本誌に対して、「フィンランド国防軍はヨーロッパの安全保障状況を慎重に見守っており、演習を増やしたり、予備役の訓練レベルを引き上げるなどして備えを強化している」と説明。だがその詳細については、メディアに情報を提供することはできないと述べた。

ジュリア・カーボナロ

 

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