柔道や、

 

 

剣道、

 

 

”かっこいい!”

 

 

 

 

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なぜオランダの「剣道セミナー」は20年以上続いているのか?

Forbes JAPAN

オランダの剣道セミナーの様子

 

 

 

美しい運河と自転車の街・アムステルダム。その中心地で毎年夏、剣道セミナーが開催されている。コロナの影響で2020年は開催を見送り、2021年は日本からの講師を招くことはできなかったが、2022年8月開催時には、3年ぶりに筑波大学から鍋山隆弘 八段、福岡大学から神田智浩 六段らが招かれた。 参加したのは、ヨーロッパを中心に19国籍・50道場、190人もの剣士たち。ここ数年でアムステルダムの物価はますます上がっており、セミナー費用にホテル代・フライト代を合わせると、3日間で20万円以上の出費になる参加者もいる。また、コロナ禍明けの航空費の高騰、空港の混乱などもあり、移動には例年以上のハードルもある。 そんななか、大切な夏のバカンスの時期に、なぜわざわざ剣道のセミナーに参加したのだろうか。剣士らに取材した。

 

 

 

 

 ■一流の剣士たちが指導にあたる この剣道セミナーの歴史は20年以上前に遡る。

 

剣道を学びたいオランダ人剣士たちが立ち上げ、縁あって筑波大学剣道部監督の鍋山八段が毎年指導に来ることになった。筑波大学卒業生や在学生など、トップ剣士たちがオランダを訪れている。 最初の2日間は午前と午後それぞれ2~3時間の稽古を行い、最終日は午前中に稽古、午後は段審査が行われた。参加者は段位などから4グループに分けられ、講師たちがローテーションして指導にあたる。朝から夕方まで、剣道漬けの3日間だ。 本セミナーの最大の魅力の一つは、実力も指導力も一流の剣士たちが指導を行う点だ。日本を訪ねたとしても、人脈がなければ一流剣士たちの稽古場にはアクセスできない。ヨーロッパにいながら、本場日本の指導を体験できるのは貴重な機会だ。 今年は、日本から渡蘭した鍋山八段、神田六段のほか、ギリシャから新井良 六段(筑波大学卒)、オーストラリアから進藤暖佳 四段(筑波大学卒)、隣国ベルギーから黒木芳信 七段も指導に駆けつけた。オランダからもルイ・ヴィタリス七段が参加。 また、参加者の剣士たちから要望を募り、セミナーを組み立てている点も特徴だ。稽古中には質問が飛び交い、休憩時間中には講師の元に向かう若いイギリス人剣士たちが印象的だった。 長年セミナーで指導する鍋山八段は、稽古で「擬音語を使わないこと」を心がけているという。日本人だと感覚的にわかることが、外国人剣士相手だとなかなか伝わらない。そんな時に「グッと間合いを詰め、パッと打つ」など、擬音語を使ってしまうとさらに混乱を招くことがある。そうした理論に基づく指導により、「鍋山先生の指導はわかりやすい」という声をよく耳にする

 

 

 

 

国を超えた”交剣知愛”

開催国のオランダや隣国ドイツ、ベルギーの他、イギリスやノルウェー、アイルランドなど参加者の国籍は19カ国。剣道には「交剣知愛」という言葉があるが、稽古をするだけではなく、剣を通じた交流もその楽しみといえる。年齢や段位、国の制限もなく、興味があれば子供も参加できる。 ノルウェー剣道代表の女性選手は、「オランダはヨーロッパ人にとって比較的アクセスが良い場所。コロナ後初めて日本から先生方がくるので、楽しみにしていました。一流の先生方に直接指導していただける点は大きな魅力です」と言う。 「高段者の先生やヨーロッパ各地から集まった剣道家と時間を過ごすことは、上達への何よりの近道。また、新しい剣道仲間を作る素晴らしい機会でもあります」と話すのは、オーストリア剣道代表の男性選手だ。 ヨーロッパは陸続きのため、国際試合や稽古会なども盛んに行われる。参加者たちは仲が良く、セミナー終了後は自国から持ってきた「小さな贈り物」を交換しあっていた。筆者は、アイルランド剣士からミニウイスキーをいただいた。 

 

 

 

 

■なぜセミナーは20年も続いているのか

 

 このセミナーが20年以上、多くの参加者を集め続けているのはなぜなのか。 まず第一に、剣道や日本文化に対する並々ならない情熱や興味があげられる。参加者のなかには、自作した剣道具を持参した剣士もいた。本業は音楽家で、ウィーンの音楽大学で教授として働いている。剣道を深く学ぶため、本セミナーだけではなく、日本を訪れ大阪体育大学で稽古をした経験もあるという。 参加者たちに共通しているのは、最初は憧れや軽い気持ちで始めたとしても、だんだん「武道はほかのスポーツと何かが違う」と気づき、その深みにハマっていくところだ。 元オランダ剣道代表は、「友達に誘われて剣道を始めて、いまは自分の内面の成長のために続けています。稽古を重ねて成長すること。道場での教えを日常でも生かすこと。礼節を尊んで人間関係を築くこと。もちろん身体を鍛えることも大切です。でも一番は、自己成長のために剣道を続けています」と語る。別のオランダ人剣士は、剣道コミュニティについて「他のスポーツの人たちにはない、優しさや倫理観がある」とその魅力を話す。 こうした姿を見て、「日本人以上に真剣に武道を学んでいる」と驚く日本人も少なくない。海外剣士たちは競技(スポーツ)として剣道を楽しむ一方で、その精神性・文化性にも魅せられているのだ。 筆者が知り合ったヨーロッパの剣士たちは、とてもフランクで、わからないことは遠慮せずにどんどん質問する。大きな試合の後にはパーティが開かれ、楽しそうにダンスを踊る。こうした点は、日本ではなかなか見られない、日本とは違う楽しみ方だ。 一流の講師のもと、仲間たちと交流を楽しみ、自己成長と向き合う剣道漬けの3日間。「また来年も会おう」。そう言って参加者たちは各々の国へ帰っていった。

佐藤 まり子

 

 

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